不眠に効くのは睡眠薬?それとも認知行動療法?
前回に引き続いて睡眠の話題です。
年齢が上がるにつれて睡眠の質が悪くなる(いわゆる深い眠りの時間が少なくなる)ことは生理学的によく知られている事実です。
したがって、年齢が上がるにしたがって、不眠症の割合は多くなってきます。
睡眠薬を飲んでも眠れなーい!と訴える人も多いと思いますが、実際にどの程度睡眠薬は効くのでしょうか?
米国医師会雑誌JAMAの6月28日号では、一般的な不眠症に対して、睡眠薬と認知行動療法のどちらが有効であるかという無作為試験の結果が報告されました。
この研究では、睡眠薬、および認知行動療法が高齢者の慢性の不眠に対して短期的、長期的にどの程度の効果があるかを検討しました。
対象はノルウェーに住む平均年齢61歳の男女48人で、対象者は認知行動療法を受ける群18人、睡眠薬(Zopiclone;商品名アモバン)を服用する群18人、そして対照群12人(プラセボ薬のみ服用)に無作為に分けられました。
それぞれ、6週間の介入を受けた後、6ヵ月後まで睡眠の状態を経過観察しました。
睡眠は携帯型のポリソムノグラフィ(脳波、筋電図等により睡眠の状態を検査する装置)および睡眠日誌により日中の起きている時間、睡眠時間、睡眠の質などが評価されました。
認知行動療法は、毎週50分間のセッションによって、睡眠環境(光、音、温度のマネジメント)、睡眠習慣(就寝、起床時刻を一定にする)、睡眠促進(ベッドルームは睡眠のためだけに使うことなど)、認知療法、リラクゼーション等に関するトレーニングを受けました。
6週間の介入後、認知行動療法を受けた群は睡眠薬による治療を受けた群に比べて、睡眠に関する4つの指標のうち、3つがより改善していました。そして、睡眠薬群はプラセボ薬服用群とほとんど差がみられませんでした。
認知行動療法群では睡眠効率が81.4%から治療後に90.1%に改善していたのに対し、睡眠薬群では、82.3%から81.9%へ悪化していました。
また、認知行動療法群では睡眠薬群や対照群に比べて深い睡眠の時間がより多く得られ、夜間に目が覚める時間がより少なくなりました。
一方、睡眠時間については、3群間に差はみられませんでした。
さらに、認知行動療法群では、睡眠薬群に比べて治療終了6ヵ月後の睡眠効率もよいという結果でした。
したがって、認知行動療法は睡眠薬による治療に比べて、短期的、そして長期的にみても高齢者の不眠に対する治療としてより有効であったと言えるでしょう。
興味深いことに、認知行動療法では、脳波上にみられた睡眠の深さを示す指標(slow-wave sleep)が治療前後に63.1分から84.4分と改善していたのに対し、睡眠薬治療では76.8分から59.2分に悪化していました。尤も、睡眠薬の場合、その効能はあくまでも睡眠導入ですから、睡眠の深さにに関してはもともと期待はできないかもしれません。
それにしても、前回の睡眠に関する論文と同様に、睡眠の改善には、睡眠環境を整えたり、就寝時刻や起床時刻を一定にするといったことが重要であるという結果は、一般的には意外に思われる人も多いと思います。
実際に、睡眠薬に頼りきっている人も多いと思いますが、睡眠薬を飲む前に自分の睡眠環境、睡眠習慣等を整えることを考えるようにしてみては如何でしょうか?(医療費の節約にもなるし一石二鳥ですね)
もちろん、睡眠薬が睡眠を改善するという報告もありますし、本研究の結果は対象数も少なく限られた人を対象としていますので、すべての人に本研究の結果があてはまるわけではありません。
自分も、アモバンを医師国家試験前に、一度服用したことがあります。というのも、この頃、国家試験前は眠れなくなるから、睡眠薬を処方してもらった方がよいと先輩からアドバイスを受けたため、何種類か自分に合う睡眠薬を試してみたものです(結局、眠れないということはなく、睡眠薬は試しただけで済んでしまいましたが)。
で、感想はというと、とっても気持ちよく眠れましたし、起床後の感じもすっきりしていていい薬だなぁなんて思ったりしました。
ところが、朝食時に牛乳を飲んだら、牛乳の味がにがーい。
その時は、牛乳が変だと思っていたのですが、友人の中でも同じような経験をした人がいたので、
これは薬の副作用なのでは?ということになりました。(実際に、アモバンの使用上の注意事項に苦味が出ることは記載されています)。
まあ、副作用が出なければ使える薬だとは思いますが…
ところで、本研究が行われたノルウェーでは本研究で使われた睡眠薬(アモバン)が最もポピュラーな睡眠薬のようです。ここ10年間でノルウェーで使われた睡眠薬の内の45%を占めているということですから、相当使用されているようです。(日本でもよく処方される睡眠薬ではありますが、日本ではこれほどまでには使用されていないでしょう)
ということで、この研究の意外?な結果を受けて、処方量が減ってしまうかも…とやきもきする製薬会社の重役さん達の様子が目に浮かぶようです。







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