女性はそれほどおしゃべりではない?

女性は男性よりもおしゃべり?
というのは経験的にもよく知られていることですが、
実はそれほど違いはないのでは?
という研究がサイエンス誌に掲載されました。

Are women really more talkative than men?
Mehl MR, Vazire S, Ramirez-Esparza N, Slatcher RB, Pennebaker JW.
Science. 2007 Jul 6;317(5834):82.

この研究では、米国とメキシコの17~29歳の大学生の男女計396人を対象に、新しく開発した12.5分ごとに30秒間だけ会話を録音するレコーダーを2~10日間着用させ、起きている間中作動させました。

レコーダーを回収して会話を文字に起こして単語数を数えた結果、1日平均17時間の起床時間中に、男性は1万5669語、女性は1万6215語となり、女性がやや多かったものの統計学的に有意な差は得られませんでした。

これまでにも、言葉数に関する男女差の検討は報告されていますが、言葉の測定方法、対象者数等に問題があり、確立した見解は得られていませんでした。本研究は、1998年から2004年という長期間にわたって、根気よく多人数の症例を検討できたことが評価されるでしょう。

しかしながら、本研究の問題点として、対象者が大学生に限っているということがあります。
我々が笑いの頻度と性・年齢との関係を質問紙法で調査したところ、
女性は男性よりも笑う頻度が多いですが、20歳代ではそれほど大きな差はなく、
むしろ年代が上がるにつれてその差が明確になっていました。
したがって、おしゃべりに関しても、年代が上がるにつれて差が出てくる可能性が考えられます。
また、同じ研究を日本人でやったらどうなるかという点も疑問がわきます。

例えば、ドラマとか見ていても、若い年代では男女ともにほぼ同じようにおしゃべりしていますが、
いわるゆお父さんは無口ですよね。
日本人では男女差がきれいに出るかもしれません。

ということで、自分にとってこの研究で一番興味があるのは、
研究で使われたレコーダーが市販されているのかどうかという点なのでした。
このレコーダーを使って日本人の笑いの頻度を調べてみたいです。

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唾液中コルチゾール値が将来のうつを予測する?

副腎皮質ホルモンの1種であるコルチゾールはストレスやうつで上昇することがわかっています。
しかしながら、元々コルチゾール値が高い人がうつになりやすいかどうかはわかっていませんでした。
そんな疑問のヒントになる論文が米国精神医学誌の4月号に公表されました。

Increased waking salivary cortisol levels in young people at familial risk of
depression.
Mannie ZN, Harmer CJ, Cowen PJ.
Am J Psychiatry. 2007 ;164(4):617-21.

この研究では、両親にうつ病の既往があるが、自分にはこれまでうつ症状を経験したことのない若者49名と、両親のうつ病既往も自分のうつの既往もない55名を対象として、勤務日および休日の起床30分以内に採取した唾液中のコルチゾール値を比較しました。

その結果、勤務日、休日両方ともに、両親にうつ病の既往がある参加者の方が、既往のない参加者に比べて起床直後の唾液中コルチゾール値が高値でした。また、

両親にうつ病の既往があるということは、うつの危険因子の一つです。それと唾液中コルチゾールが関連したということは、唾液中コルチゾールが将来のうつ病を予測する可能性もあるわけです。

年間の自殺者数が3万人を超えるわが国において、自殺の最も重要な危険因子であるうつをスクリーニングすることが重要視されています。もし、うつを予測する身体的な指標があって、それが簡便に測定できるものであれば、とても有用な指標になり得ると考えます。

唾液中コルチゾール値はそうした指標の候補であり、今後、唾液中コルチゾール値が高いことが本当に将来のうつと関連するかどうかの研究が期待されます。

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男女の産み分けは本当に可能か?

もうすぐ秋篠宮殿下にお子さんが生まれることは皆さんよくご存知のことです。
そして、世間の注目は何と言っても生まれる子が男の子か女の子かということでしょう。

男女の産み分けができればよいのかもしれませんが、そんなことは実際にできるのでしょうか?
この研究に熱心なのは中国と言われています。
なんと言っても、一人っ子政策が始まってから、中国ではなんとしても男の子を産ませたい、と願う家族が多いとか。それなら、現実に、中国では男の子の出産数が増えているのでしょうか?

英国医学雑誌British Medical Journal の8月19日号では、中国の最近の出生数とその男女比が報告されました。

Ding QJ, Hesketh T.
Family size, fertility preferences, and sex ratio in China in the era of the one child family policy: results from national family planning and reproductive health survey.
BMJ. 2006 Aug 19;333(7564):371-3.

この研究では、Chinese cross sectional national family planning and reproductive health survey, 2001で得られた15-49歳の女性39,585人のデータを解析し、1979年から始まった一人っ子政策が出産、女性が考える好ましい家族の大きさ、性比に与える影響を調査した結果を報告しています。

この調査の結果、73202の妊娠により、56830人のお子さんが生まれました。
一人っ子政策が始まってから女性の平均出生数は2.9から35歳以上の女性では1.94に、35歳未満の女性では1.73に低下しました。また、35歳以上では田舎よりも都会の方が出生数が少ない傾向がみられました。(田舎で2.1、都会で1.4)

女性に比べた男性の比率は1980年代には1.11だったのが1996-2001年にはなんと1.23に上昇していました

また、出産数に関する意識の変化として、現在の大部分の女性は小さな家族を好むことがわかりました。
35%の女性は子供1人を、57%は2人の子供を望んでいました。

通常、男女の出生比は1.03から1.07とのことですから、この10年間において、いかに男性の出生率が上昇したかがわかると思います。

それでは、これは産み分けによるものなのでしょうか?

本研究の考察では、一人っ子政策の結果、もし一人目が男性であったなら、それ以上生むのをやめ、女性であったならもう一人目を生むことを考える人が多いのではないかということ。確かにこれなら、男性が増えるかもしれません。となると、男女の産み分けが可能かどうかは第一子のみで男女比を比較する必要がありそうです。

幸い、本研究では第一子の男女比も検討していました。
本研究の調査期間中全体の第一子の男女比は1.06であり、通常とほぼ同じという結果でした。しかしながら、田舎では男女比が1.05であったのに対し、都会では1.13であり、都会では予測値よりも男性の方が多いという結果でした。

とすると、都会では産み分け方法が発達しているため、男性の方が多く生まれるのでは?という考えもできそうです。

が、考察ではもう一点重要なことが指摘されています。それは、都会では、出生前診断により性を把握し、もし女性だった場合人工中絶する例もあるのではないか?ということです。

もちろん、これは法律に違反することであり、その実数を本論文では確認できていません。また、人工中絶の割合を都会と田舎で比べた結果は本論文には記載されていませんでした。

したがって、中国の都会では一人っ子政策実施以来、明らかに男性の出生数が増加していると言えますが、それが、いわゆる中国秘伝の産み分け方法によるものかどうかは未だ明らかではないということでしょう。

いずれにせよ、こうした政策により人口増加が抑制されたとしても、男性の数がどんどん多くなるという自然の理に反した結果が、今後の社会環境に影響をもたらさないのかどうかということが気になります。

今後、中国の男女比はどれだけ差がつくのでしょうか?そして、おそらく近い将来おこるであろう都会の嫁不足にどう対応していくのでしょうか?


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本当はこわい?起立性低血圧 将来の死亡と関連する?

一般に起立性低血圧というと、立った時に血圧が低下し、めまいや失神を引き起こす病態を言いますが、華奢な女性のイメージを思い浮かべる人が多いと思います。

実際、起立性低血圧は10歳代に多く、これといった原因がないのに、めまい、倦怠感等が続き、学校に行けないといった問題の原因になっていることもあります。(→詳細は「低血圧Suppot Group」のHP参照)

しかしながら、起立性低血圧が生命予後にも関係するかどうか(ようするに起立性低血圧がある人は早死にするかどうか)という点については明らかではありませんでした。

近年、高齢者の起立性低血圧には動脈硬化が関連することが報告されるようになり、少なくとも高齢者における起立性低血圧は、脳卒中や心筋梗塞の発症、および生命予後を悪くすることがわかってきましたが、より若い年代でどうなのかということについてはわかっていませんでした。

米国循環器専門誌Circulationの8月15日号では、Atherosclerosis Risk In Communities (ARIC) Studyにおいて、中年の起立性低血圧と死亡との関連を検討した結果が報告されました。

Rose KM, Eigenbrodt ML, Biga RL, Couper DJ, Light KC, Sharrett AR, Heiss G.
Orthostatic hypotension predicts mortality in middle-aged adults: the Atherosclerosis Risk In Communities (ARIC) Study.
Circulation. 2006 Aug 15;114(7):630-6.

この研究では、ARIC研究に参加した45~64歳の男女約14000人を対象としました。対象者にはベースライン時に起立性低血圧の有無を調査するとともに、その後13年間経過観察し、経過期間中の死亡と起立性低血圧との関連を前向きに検討しました。

ベースライン調査において、674人(5%)の人が起立負荷試験において、最大血圧値が20mmHgもしくは最低血圧値が10mmHg低下するという起立性低血圧の基準にあてはまりました。

起立性低血圧を有する人はそうでない人に比べて、男性、黒人、糖尿病、喫煙者の割合が高く、また平均年齢、血糖値などが高く、循環器疾患のリスクがより高い集団と考えられました。

13年間の追跡期間中、1693人の参加者が死亡しましたが、起立性低血圧がない人では全体の死亡率が12%だったのに対し、起立性低血圧がある人では32%の人が亡くなっていました。

年齢、性、人種を調整した後の起立性低血圧者の死亡に対する危険度はそうでない人の2.4倍でした。また、他の循環器疾患危険因子を調整した後に、危険度はやや低下しましたが、それでも1.7倍であり有意に死亡率を高くしていました。

死亡原因としては、特に循環器疾患による死亡の危険度が高く、2.0倍でしたが、癌による死亡のリスクの上昇とは明らかな関連はみられませんでした。

したがって、今回の結果から、中年における起立性低血圧は癌以外の疾患による死亡率の上昇と関連すると言えるでしょう。

起立性低血圧と死亡との関連については、喫煙、糖尿病等のその他の循環器疾患リスクファクターが関連している可能性もありますが、これらの因子を調整しても尚死亡との関連がみられたことから、今回測定できていない他の因子が関連している可能性が考えられます。

例えば、起立時の血圧調整には自律神経系の働きが重要ですが、こうした自律神経系機能の低下が死亡率と関係している可能性もあります。

いずれにせよ、中年以前においては、これまであまり生命予後には影響すると考えられていなかった起立性低血圧ですが、実は生命予後にも影響する病態である可能性が示唆されたわけです。

この結果が若年者にもあてはまるかどうかは明らかではありません。
しかしながら、実際には10歳代においても起立性低血圧者は多いわけですから、将来的にはこうした若い世代での生命予後との関連についても検討していく必要があるでしょう。

家庭血圧が普及し、血圧を測ることも多いと思いますが、
立位での血圧測定を行っている人は少ないと思います。
この機会に是非起立時の血圧測定を行ってみてはいかがでしょうか?
(起立負荷試験については大阪府立健康科学センターHPの自律神経機能検査という部分を参照して下さい)

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うつな気分は結婚で治る?

通常、結婚はストレスフルなライフイベントでも上位に位置するほどのストレスのはず?
なのですが、米国の研究によると、結婚は憂うつな気分を解消してくれる可能性が高いことが報告されました。
(ただし、まだ学会発表レベルの研究で、論文にはなっていないようです)

もっとも、この結果は研究を実施した研究者にとっても意外な結果だったようです。

American Sociological Association の年次集会で発表されたこの研究は、

3066人の男女を対象に、不眠、悲しみなどのうつ症状を、結婚前後に測定しました(ただし初婚のみ)。

その結果、特に結婚前にうつ症状を持っていた人では、結婚後のうつ症状が著明に減少していました。

研究者のWilliams博士によると、うつ傾向にある人では、心理的な親密さとか社会的な支援が必要であり、それが結婚によってもたらされるのでは、というように考えられるようです。

一方、結婚前にうつ症状がなった人では、むしろ逆にうつ症状が増加するという結果でした。

したがって、「もしあなたがうつ症状を持っていなくて、うつ症状を持っている人と結婚するということになったら、それはあまりよいことではないかもしれません。」と共同研究者は述べています(と記事になっていますが、本当にこんなこと言っていいのか?)

うーん。
最近目を引く研究があまりなくて、この研究は面白いと思ったのですが…
実際に論文になっていないので詳細はわかりませんが、これらの結果が単に「平均への回帰」でないことをきちんと調べてあるかどうかを確かめる必要はありそうです。

すなわち、もともとうつ症状の得点が高い人は、2回目の検査では得点が低くなる傾向があり、逆にもともと得点の低い人は、2回目の検査では得点が高くなる傾向になるのは疫学では周知の事実です。

したがって、結婚前後で検査を行う人と、同じ年代の人で結婚前後ではない人で同じ検査を行って、その差を見る必要があるのですが、この検討をしているかどうかは明らかではありません。

したがって、うつ症状のある人が結婚したからと言ってうつ症状がよくなるかどうかは、論文が出てから判断しても遅くはないと思います。

ところで最近、好きな音楽を歌ったり聴いたりすると、高齢者の性ホルモンの量が安定する効果があり、痴呆予防に応用できるのでは?との研究結果が出たという記事も目にしました。

この研究では、唾液中の性ホルモン量が定期的な音楽教室の参加後に多い人は減少、少ない人は逆に増加し、一定量に収束する傾向がありとのことでした。

これも、同じように単に平均への回帰を見ている可能性もあるわけです。

それにしても、この研究は月に1回2時間の音楽のみの効果をみているようですが、これのみで痴呆予防ができたらそれこそ音楽の効果は薬以上ということになりそうですね。
(つい、他の交絡要因を調べてみたら?と言いたくなってしまいます)

もちろん、個人的には音楽の心身への効果は十分にあると思っていますので、この報告についても論文で詳細が公表されるのを期待しましょう。


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新しい危険因子は本当に役に立つのか?

医学の世界は日進月歩、常に新しい研究成果が多数論文にて報告されています。

心筋梗塞についても、従来は高血圧、喫煙、低HDLコレステロール等が心筋梗塞等の冠動脈疾患の危険度を増やす因子として報告され、最近はCRP(C反応性タンパク)等をはじめとする炎症性マーカー、および血液凝固線溶系マーカーが冠動脈疾患の予測因子であることが報告されてきました。

しかしながら、こうしたCRP等の新しいマーカーがどの程度冠動脈疾患の予測に有用であるかどうかについては、未だ明らかではありません。7月10日号の内科専門誌Archeives of Internal Medicineでは、私のボスでもあるProf. FolsomがARIC studyの結果を用いてこの問いに応える論文を発表しました。

Folsom AR, Chambless LE, Ballantyne CM, Coresh J, Heiss G, Wu KK, Boerwinkle E, Mosley TH Jr, Sorlie P, Diao G, Sharrett AR.
An assessment of incremental coronary risk prediction using C-reactive protein and other novel risk markers: the atherosclerosis risk in communities study.
Arch Intern Med. 2006 Jul 10;166(13):1368-73.

この研究は、米国の循環器疫学研究で有名なARIC (Atherosclerosis risk in community) studyの結果を用いて行われました。

ARIC study は地域住民男女15,792人を対象に1987年~1989年にベースライン調査を行い、現在までその後の冠動脈疾患、脳卒中等の追跡調査を実施しています。現在まで確認された19種類の危険因子(リスクファクター)が従来の危険因子を用いた予測に加えて、どの程度冠動脈疾患の予測に貢献できるかを調べました。

主な新しい危険因子としては、上述のCRPに加えて、リポタンパク関連フォスフォリパーゼA2、ホモシスティン、葉酸、クラミジア抗体、PAI-1、D-ダイマー、E-セレクチン等が報告されています。

しかしながら、本研究の結果、従来の危険因子(年齢、人種、性別、総・HDLコレステロールレベル、収縮期血圧、降圧薬使用、喫煙状況、糖尿病)を含む基本的なリスクファクターモデルで冠動脈疾患を良好に予測できると分かりました。

新しい危険因子が冠動脈疾患の予測に寄与する率は従来の危険因子を考慮すると、ごくわずかであり、したがって、本研究の結果からは、新しい危険因子をスクリーニングで測定する必要性はないと考えられました。

ARIC studyは白人と黒人の両方を含む地域住民における疫学研究であり、この結果は米国においてはよくあてはまる可能性があります。

一方、この結果をわが国にあてはめられるかどうかについては、危険因子の頻度が大きく違うため明らかではありません。わが国でも同様の研究が必要とされるでしょう。

それでは、新しい危険因子はまったく不要かというとそういうことではないと考えます。すなわち、全体のリスクを考えると、従来の危険因子で7~8割は説明できるのは確かですが、中には従来の危険因子を持たない発症者もいるからです。また、従来の危険因子をどの程度持っているかで新しい危険因子の重要性は変わる可能性もあります。

例えば、7月4日にAnnals of Internal Medicineに発表された下記の論文では、Women's Health Study の結果を用いてCRPの予測効果を検討した結果、中等度のリスクを持った女性では、CRPが従来の危険因子に加えて心血管疾患の予測に有用であることが報告されています。

Cook NR, Buring JE, Ridker PM.
The effect of including C-reactive protein in cardiovascular risk prediction models for women.
Ann Intern Med. 2006 Jul 4;145(1):21-9.

したがって、新しい危険因子は従来の危険因子をコントロールした後にこそ有用になる可能性があると考えられます。

すなわち、元々高血圧、喫煙、低HDLコレステロール、糖尿病などのリスクを持っている人は、まずこうしたリスクを減らすことが第一であり、その他のことを(例えば葉酸やビタミン類のサプリメント)を一生懸命行っても、その効果はごくわずかに過ぎないと言えるでしょう。

医学研究に代表されるように、常に新しいリスクの解明に力が注がれることが多い今日ではありますが、その前に、従来の危険因子をどのように減らすかが大事だと思います。

日本人の血圧はまだまだ欧米に比べて高く、肥満、高コレステロール血症、糖尿病の頻度は欧米の頻度に近づきつつあります。こうしたリスクをどのようにしたら減らせるのか、これには個人の教育はもちろんのこと、国家的な予防政策が必要です。

現在、厚生労働省はメタボリック・シンドロームの予防に力をいれていますが、こうした政策が本当に従来の危険因子を減らすことに寄与するかどうか、そしてさらに冠動脈疾患や脳卒中を減らすことに寄与するかどうか、その結果が注目されるでしょう。

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今時の中高生は不眠が多いらしい

先日、切れる子供は睡眠不足かも?なる話をしたばかりですが、
先週大津で開催された日本睡眠学会の発表によると、
中高校生の4人に1人が不眠に悩んでいるとのことらしいです。

以下Yahooからの引用です。

 研究は、厚生労働省の研究班(主任研究者、林謙治・国立保健医療科学院次長)の調査の一環。04年12月~05年1月に、全国の中学131校、高校109校を無作為に抽出し、在校生に最近1カ月の睡眠状況や生活習慣、精神的健康度を質問した。回収数は約10万人(回収率64.8%)。

 不眠としたのは(1)なかなか寝付けない「入眠障害」(2)夜中に目が覚める「夜間覚醒(かくせい)」(3)朝早く目覚めて再び眠るのが難しい「早朝覚醒」――の3項目のうち一つ以上が当てはまった場合。その結果、不眠の割合は23.5%で、成人3030人を対象にした調査(1997年)の21.4%を上回った。

 入眠障害は14.8%で、成人の8.3%より6.5ポイントも高い。逆に、夜間覚醒は11.3%(成人15%)、早朝覚醒は5.5%(同8%)で、成人より低かった。

 不眠が多いのは▽男子▽精神的健康度が低い▽朝食を食べない▽飲酒習慣あり▽喫煙習慣あり▽部活動に不参加▽大学進学希望なし――などと答えた生徒だった。

以上引用終わり。

今回の発表は学会発表ですので、この結果を早く論文でみたいと思います。
データの信頼性は論文が出てから検証することにしても
今の子供達に入眠困難が多いのは驚きです。
我々が中高生の頃には、布団に入って数秒で眠ってしまっていたような気がしますが…

それと、不眠の要因の結果がなかなか面白いです。
ようするに夜遊びしている人?に不眠が多い?
先日の論文と同様に、生活習慣を規則正しくすることがやはり大事と言えるでしょう。

こうした研究では、是非今後も継続的に調査を行ってほしいです。

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葉酸は認知症予防に有用か?

今年の4月のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌において、葉酸とビタミンB6、B12の投与は血中ホモシスティン値を下げるが、心筋梗塞は予防しないという結果が出ました

したがって、ホモシスティンは原因ではなく、単に循環器系疾患発症の予測因子であるに過ぎない可能性が示唆されました。

一方、ホモシスティンが高い人ほど認知機能が低いという報告もあります。
例えば下記の論文では、血中ホモシスティン値が高いほどアルツハイマー病になる危険度が高いことを報告しています。

Seshadri S, Beiser A, Selhub J, Jacques PF, Rosenberg IH, D'Agostino RB, Wilson PW, Wolf PA.
Plasma homocysteine as a risk factor for dementia and Alzheimer's disease.
N Engl J Med. 2002 Feb 14;346(7):476-83.

それでは、葉酸やビタミンB6、B12を投与して血中ホモシスティン値を下げれば、認知症になるリスクを減らすことができるのでしょうか?

この疑問に応えた論文がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌の6月29日号に発表されました。

McMahon JA, Green TJ, Skeaff CM, Knight RG, Mann JI, Williams SM.
A controlled trial of homocysteine lowering and cognitive performance.
N Engl J Med. 2006 Jun 29;354(26):2764-72.

この研究は、65歳以上の健常高齢者465人のうち、少なくとも血中のホモシスティン濃度が13ul/l以上であった276人を対象として行われました。

対象者を無作為にホモシスティンを低下させるためのサプリメント(葉酸:1000ug、ビタミンB12:500ug、ビタミンB6:10mg)を服用する群と、プラセボ(偽)薬を服用する群の2群に分け、2年間の介入を行いました。

その結果、サプリメント服用群では、投与6ヵ月後には葉酸、ビタミンB6、B12の血中濃度がプラセボ群よりも上昇し、血中ホモシスティン値が低下し、その状態が2年間持続しました。

介入1年後と2年後に認知機能検査を実施し、介入前の認知機能からの変化をみたところ、サプリメント服用群とプラセボ群との間には有意な認知機能の差はみられませんでした(むしろ、サプリメント服用群で一部の認知機能がより悪化した可能性あり)。

したがって、葉酸、ビタミンB6、B12を投与しても認知機能の低下は予防できない!可能性が高いと言えるでしょう。

今回の介入試験でも4月の論文と同様にサプリメントの服用によって血中ホモシスティン値の低下はみられています。それでも認知機能に変化がないということは、やはりホモシスティンは単なる認知機能低下のマーカーでしかない可能性が考えられます。

もっとも、本研究の対象者は健常高齢者であり、もともと認知機能の低下が少なかったことが結果に影響している可能性もあります。また、介入期間も2年間だけであり、認知機能をみるには短すぎる点も問題となるでしょう。

したがって、同じような結果が認知機能がやや低下している人達を対象としたり、もっと長期間の介入を行っても同様にみられるかどうかを確かめる必要はあると思われます。

つい先日、共同研究者の一人とホモシスティンの有用性について、「介入試験で心筋梗塞の予防効果は出なかったけど、認知機能は出るかも」などと話をしていたばかりだったのですが…

ちょっと…、いや、かなり残念な結果でした。

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不眠に効くのは睡眠薬?それとも認知行動療法?

前回に引き続いて睡眠の話題です。
年齢が上がるにつれて睡眠の質が悪くなる(いわゆる深い眠りの時間が少なくなる)ことは生理学的によく知られている事実です。
したがって、年齢が上がるにしたがって、不眠症の割合は多くなってきます。
睡眠薬を飲んでも眠れなーい!と訴える人も多いと思いますが、実際にどの程度睡眠薬は効くのでしょうか?

米国医師会雑誌JAMAの6月28日号では、一般的な不眠症に対して、睡眠薬と認知行動療法のどちらが有効であるかという無作為試験の結果が報告されました。

Cognitive Behavioral Therapy vs Zopiclone for Treatment of Chronic Primary Insomnia in Older Adults
A Randomized Controlled Trial
Børge Sivertsen, PsyD; Siri Omvik, et al.
JAMA. 2006;295:2851-2858

この研究では、睡眠薬、および認知行動療法が高齢者の慢性の不眠に対して短期的、長期的にどの程度の効果があるかを検討しました。

対象はノルウェーに住む平均年齢61歳の男女48人で、対象者は認知行動療法を受ける群18人、睡眠薬(Zopiclone;商品名アモバン)を服用する群18人、そして対照群12人(プラセボ薬のみ服用)に無作為に分けられました。

それぞれ、6週間の介入を受けた後、6ヵ月後まで睡眠の状態を経過観察しました。

睡眠は携帯型のポリソムノグラフィ(脳波、筋電図等により睡眠の状態を検査する装置)および睡眠日誌により日中の起きている時間、睡眠時間、睡眠の質などが評価されました。

認知行動療法は、毎週50分間のセッションによって、睡眠環境(光、音、温度のマネジメント)、睡眠習慣(就寝、起床時刻を一定にする)、睡眠促進(ベッドルームは睡眠のためだけに使うことなど)、認知療法、リラクゼーション等に関するトレーニングを受けました。

6週間の介入後、認知行動療法を受けた群は睡眠薬による治療を受けた群に比べて、睡眠に関する4つの指標のうち、3つがより改善していました。そして、睡眠薬群はプラセボ薬服用群とほとんど差がみられませんでした。

認知行動療法群では睡眠効率が81.4%から治療後に90.1%に改善していたのに対し、睡眠薬群では、82.3%から81.9%へ悪化していました。

また、認知行動療法群では睡眠薬群や対照群に比べて深い睡眠の時間がより多く得られ、夜間に目が覚める時間がより少なくなりました。

一方、睡眠時間については、3群間に差はみられませんでした。
さらに、認知行動療法群では、睡眠薬群に比べて治療終了6ヵ月後の睡眠効率もよいという結果でした。

したがって、認知行動療法は睡眠薬による治療に比べて、短期的、そして長期的にみても高齢者の不眠に対する治療としてより有効であったと言えるでしょう。

興味深いことに、認知行動療法では、脳波上にみられた睡眠の深さを示す指標(slow-wave sleep)が治療前後に63.1分から84.4分と改善していたのに対し、睡眠薬治療では76.8分から59.2分に悪化していました。尤も、睡眠薬の場合、その効能はあくまでも睡眠導入ですから、睡眠の深さにに関してはもともと期待はできないかもしれません。

それにしても、前回の睡眠に関する論文と同様に、睡眠の改善には、睡眠環境を整えたり、就寝時刻や起床時刻を一定にするといったことが重要であるという結果は、一般的には意外に思われる人も多いと思います。

実際に、睡眠薬に頼りきっている人も多いと思いますが、睡眠薬を飲む前に自分の睡眠環境、睡眠習慣等を整えることを考えるようにしてみては如何でしょうか?(医療費の節約にもなるし一石二鳥ですね)

もちろん、睡眠薬が睡眠を改善するという報告もありますし、本研究の結果は対象数も少なく限られた人を対象としていますので、すべての人に本研究の結果があてはまるわけではありません。

自分も、アモバンを医師国家試験前に、一度服用したことがあります。というのも、この頃、国家試験前は眠れなくなるから、睡眠薬を処方してもらった方がよいと先輩からアドバイスを受けたため、何種類か自分に合う睡眠薬を試してみたものです(結局、眠れないということはなく、睡眠薬は試しただけで済んでしまいましたが)。

で、感想はというと、とっても気持ちよく眠れましたし、起床後の感じもすっきりしていていい薬だなぁなんて思ったりしました。

ところが、朝食時に牛乳を飲んだら、牛乳の味がにがーい。
その時は、牛乳が変だと思っていたのですが、友人の中でも同じような経験をした人がいたので、
これは薬の副作用なのでは?ということになりました。(実際に、アモバンの使用上の注意事項に苦味が出ることは記載されています)。

まあ、副作用が出なければ使える薬だとは思いますが…

ところで、本研究が行われたノルウェーでは本研究で使われた睡眠薬(アモバン)が最もポピュラーな睡眠薬のようです。ここ10年間でノルウェーで使われた睡眠薬の内の45%を占めているということですから、相当使用されているようです。(日本でもよく処方される睡眠薬ではありますが、日本ではこれほどまでには使用されていないでしょう)

ということで、この研究の意外?な結果を受けて、処方量が減ってしまうかも…とやきもきする製薬会社の重役さん達の様子が目に浮かぶようです。

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切れる子供は睡眠不足?

近年、未成年者の凶悪犯罪数が増加しているというようなことが言われています。
また、切れる子供達の原因について、教育、食生活の面などから報告がされています。

そんな中、Journal of Adolescent Healthの6月号においては、睡眠不足と切れる子供との関連が報告されました。

The relationship between sleeping problems and aggression, anger, and impulsivity in a population of juvenile and young offenders
Ireland JL, Culpin V.
J Adolesc Health. 2006 Jun;38(6):649-55.

この研究では、暴力や交通違反などの犯罪により収監された少年184人を対象として行われました(平均年齢19歳の青年群104人、平均年齢16歳の少年群80人)。

対象者には収監前後の睡眠の量、質を聴取するとともに、攻撃性、衝動性、怒り等の心理的因子の評価が行われました。

その結果、睡眠の質、量と強く関連がみられたのは攻撃性で、衝動性や怒りとの関連はそれ程強くはみられませんでした。

攻撃性の下位尺度の中では、特に敵意性が睡眠と関係がみられました。敵意性の増加は睡眠不足、および睡眠の質の低下(中途覚醒、入眠困難等)と有意に関連していました。

ところで、本研究は横断研究であるため、因果関係については明らかではありません。
すなわち、本研究では敵意性の増加が睡眠不足や質の低下を予測すると解析されていますが、実際は、睡眠不足や質の低下が敵意性を予測するとも解釈できるわけです。

現実的には両方ありうると思います。イライラや敵意の持続は交感神経系を亢進させて、身体を興奮させ睡眠不足を引き起こす可能性があります。また、睡眠不足そのものも交感神経系の亢進を引き起こし、イライラの原因になる可能性もあります。したがって、これらは相互に影響しているのではないかと思われます。

一方、本研究では就寝時刻が一定でないこと、就寝前の喫煙、就寝前の運動はそれぞれ睡眠不足や睡眠の質の低下と関連することも報告されました。

敵意性そのものを減らすということは難しいですが、就寝時刻を一定にするとか、就寝前の行動を改善することによって、少しでも睡眠の質、量を改善させることは、敵意性、攻撃性といった切れる子供の誘引になる因子を減らす可能性は十分あると思います。

インターネットの普及や受験勉強などによって日本の子供達の睡眠時間が以前と比べて減ってきていることは、容易に推測できます。

したがって、食事や睡眠等の生活習慣を改善させることが、切れる子供達を減らすことができるかどうかの研究は日本においてこそ今後必要とされることでしょう。

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世界一の公衆トイレに行ってきました

先週から約1週間ほど日本に一時帰国していました。
そして、今回関西空港を利用したので、先日の公衆トイレランキング世界1位になった関空のトイレを早速利用してみました。

で、感想なのですが、

まったくもって普通のトイレでした。

最初に利用したのが、到着した後、機内預け入れ荷物を取りに行く場所にあった公衆トイレですが、
日本の空港でいえばどこにでもある公衆トイレという感じでした。
もちろん、ゴミなどは落ちてはいませんでしたが…

帰りに利用したのは、搭乗口に入った後で、飛行機に入る直前のトイレ。
こっちの方がちょっとおしゃれな感じがしましたが、それは単に照明が少し暗かっただけかもしれません。

まあ、いずれにせよ今回の公衆トイレ世界一は「清潔さ」がということでしたので、
期待しすぎは禁物ということでしょう。

こっちに戻ってきてデトロイトとミネアポリスの空港でも公衆トイレを利用しましたが、確かに関空の方が清潔のように思いましたが、これも単に新しいからということだけかもしれません。

実際、それ程清潔でなくても米国の公衆トイレはほとんどどこでも手拭用のペーパータオルがついているので、エアータオルだけの日本よりも便利だなぁ、なんて思ったりするのは自分だけでしょうか?

普段意識しないで使っている公衆トイレですが、こうして意識して使ってみるのもなかなか面白いものです。

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心筋梗塞やがんになりやすい性格とは?

ストレスが心筋梗塞や脳卒中の誘引になることはよく知られていますが、心筋梗塞や脳卒中になりやすい性格というのはよくわかっていません。また、がんになりやすい性格については、あまり関係ないという報告がこれまでいくつか出ています。

英国医学雑誌BMJの5月10日号(オンライン版)では、性格と心筋梗塞、脳卒中、およびがんとの関連についての疫学研究結果が報告されました。

Sturmer T, Hasselbach P, Amelang M.
Personality, lifestyle, and risk of cardiovascular disease and cancer: follow-up of population based cohort.
BMJ. 2006 May 10

この研究では、ドイツに住む40-65歳の男女5114人を対象として、性格(パーソナリティ)と、心筋梗塞、脳卒中、がん発症との関連を前向きに検討しました。

性格は、ベースライン調査時にうつ症状、怒り、時間的切迫感等5つの因子について調査され、その後平均8.5年間経過観察が行われました。

8.5年間の経過観察期間中、257人の参加者が死亡し、72人が心臓発作を、62人が脳卒中を、そして240人が癌を発症しました。

性格との関係をみた結果、internal locus of control over disease (病気の発症や進行はその人自身の行動の結果であるということを信じること)の得点が低い人(すなわち信じない人)は高い人に比べて心筋梗塞になりやすく、この得点が1標準偏差少なくなるにしたがって25%心筋梗塞になる危険度が上昇していました。

一方、時間的切迫感(すなわちいつも時間に追われているような人)の得点が高い人は低い人に比べて、がんになりにくく、この得点が1標準偏差高くなるにしたがって、17%がんの危険度が低下していました。

その他の性格指標と疾患との関連はいずれもみられませんでした。

したがって、本研究の結果から、性格と心筋梗塞、がん発症との関連が有意にみられてはいるものの、その影響はあまり強くないと言えるでしょう。

不思議なのはこれまで心筋梗塞や脳卒中との関連が比較的強くみられている、うつ症状や怒りが今回の調査では何の関連もみられなかったことです。

本研究では、がんや循環器系疾患に関連することが知られているコレステロールや炎症等の情報が欠けている点が問題とはなりますが、もしかしたら性格と疾病との関連には人種差があるのかもしれません。

また、時間的切迫感は心筋梗塞と関係が深いとされいましたが、今回の結果からはむしろがんに予防的に働くことが示されました。

時間的切迫感は忙しい日本人によくみられる性格でもあり、これが本当にがんに予防的に働くのかどうか、日本人でも検討していく必要があるでしょう。

がんと心筋梗塞等の循環器疾患には共通する危険因子と相反する危険因子があることが知られています。

例えば、喫煙、肥満は両者に共通する危険因子ですが、高コレステロール血症は心筋梗塞の強い危険因子であることが知られているものの、それとは逆に低コレステロールががんの危険因子であるという報告もあります。

したがって、ある種の性格ががんと心筋梗塞に共通した危険因子であるのか、それとも相反するものなのか今後の結果が注目されるところです。

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カロリー制限で寿命が延びる?

マウスなどの実験では、食事(カロリー)を制限すると通常よりも長生きすることがわかっています。
それでは、我々人間でも同じことが言えるのでしょうか?

実際に摂取カロリーを制限した場合、長寿に関するいくつかの指標がどう変化するのか、
その結果が米国医師会雑誌(JAMA)に公表されました。

Effect of 6-month calorie restriction on biomarkers of longevity, metabolic adaptation, and oxidative stress in overweight individuals: a randomized controlled trial.
Heilbronn LK, de Jonge L, Frisard MI, DeLany JP, Larson-Meyer DE, et al.
JAMA. 2006;295(13):1539-48.

この研究では、これまで長寿と関連すると考えられている身体指標や酸化ストレスの指標がカロリー制限によってどのように変化するかを検討しました。

対象は肥満度(BMI)が25~30(過体重)である50歳未満の男女48人で、対象者を無作為に対照群(体重維持群)、カロリー制限群、カロリー制限+運動群、超低カロリー群の4群に分け、6ヶ月間の介入を行いました。

カロリー制限群は通常よりも25%摂取カロリーを制限し、カロリー制限+運動群は12.5%のカロリー制限と12.5%の運動による消費エネルギーの増加を行いました。また、超低カロリー群は体重が15%減少するまで1日890Kcalという極端なカロリー制限を行い、その後体重維持食によるコントロールを行いました。

ベースライン、介入3ヵ月後、介入6ヶ月後に長寿の身体指標であるデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DEHAS)、血糖、インスリン値、深部体温、および酸化ストレスの指標であるDNA障害等の測定しました。

介入の結果、対照群、カロリー制限群、カロリー制限+運動群、超低カロリー群それぞれの6ヶ月後の体重は、-1.0%、-10.4%、-10.0%、-13.9%でした。

また、空腹時インスリン値や深部体温は有意に低下しましたが、DHEASや血糖値には有意な変化はみられませんでした。

酸化ストレスの指標であるDNA障害は全ての群で改善していました。

以上より、6ヶ月間のカロリー制限において、少なくとも2つの長寿に関する身体指標(インスリン値、深部体温)が改善することがわかりました。

とはいいましても、この結果はあくまでも6ヶ月間という短期間の結果であり、カロリー制限が本当に長寿と関連するのかという問いの答えが出たわけではありません。今後もっと長期的なフォローが必要となるでしょう。

また、今回の介入を行った人数も少なく、どのようなカロリー制限が最も有効かということも明らかにはなりませんでした。

ところで、今回介入を行ったのは合計48人と少ない人数ではありましたが、対象者を選ぶ段階では599人に対してスクリーニングを行い、体重、年齢等様々な因子を考慮して対象者を選んでいるわけです。したがって、かなり選ばれた人が対象者になっているということもあります。本研究では中途脱落者が48人中わずか2人のみであり、完全実施率が高いのはこれによるところが大きいと思われます。

さらに、今回の介入では、ベースラインの2週間+最初の12週間、および最後の2週間の食事は全て準備されました。したがって、相当にお金のかかっている研究であるということも言えるでしょう(日本ではまずこれだけの食事を準備するのは困難ではないでしょうか?)。1日の食事代を1人1000円としても、1000円×7日×16週間×48人分=537万6千円ですので、日本だったらこれだけで研究費がなくなってしまいますね!

これだけの食事を用意するのですから、体重が減るのも当然とは思えるわけですが、面白いことに(信じられないことに)、超低カロリー群の中の2名はなんとインスリン値とかの指標が悪化しているのです!この人達は用意された食事に耐えられなくなってしまったのかな?とつい疑ってしまいます。

食事を用意してもこれですから、カロリー制限を指導するだけではなかなか体重が減らないのもわかるような気がしますね!(もちろん自分のことも含めて!)

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太っている人ほど自殺しない?

ストレス解消に甘いものを食べる!なんてことはよくあることです。
一方、ストレスで食欲がなくなった!なんてこともよく聞きます。
いったいストレスは肥満とどう関係しているのでしょうかねぇ…
ということが最近ちょっと気になっています。

もちろん、ストレスと食べ物については個人差もあるのでしょうが、
その結果として得られる(?)肥満度と自殺との間には結構強い関連がありそうです。

Association of body mass index with suicide mortality: a prospective cohort study of more than one million men.
Magnusson PK, Rasmussen F, Lawlor DA, Tynelius P, Gunnell D
Am J Epidemiol. 2006 Jan 1;163(1):1-8.

米国疫学雑誌に載ったこの研究は、100万人以上のスウェーデン人男性(1,299,177 人)を対象として行われました。

Swedish Military Service Conscription Registerに登録された18~19歳のBody mass index;BMI(体重を身長の二乗で割った値)をもとに、その後31年間の自殺との関係をみました。

経過観察中、3,075人(0.24%)が自殺しました。BMIと自殺との関連をみたところ、BMIが5増加する毎に自殺のリスクは15%減少しました。具体的にはBMIが18.5~24.9の通常体重の人に比べて、25以上の過体重者では15%、30以上の肥満者では19%自殺のリスクが低く、逆にやせ(BMI18.5未満)の人は17%自殺のリスクが高いという結果でした。

この関連は、ベースライン調査時に精神的な疾患を既に持っていた人を除外しても同様にみられました。

また、最初の5年間の自殺とBMIとの関連と10年以上たってからの自殺とBMIとの関連は同じようにみられ、どちらも肥満度が高いほど自殺する率は少なくなっていました。

したがって、既に何らかのストレスを持っているために体重が減少し、それが自殺に影響したということではなく、そもそも体重が少ない人は太っている人に比べて何らかの原因により自殺しやすいという結果であったと言えるでしょう。

それでは、なぜ肥満しているほうが自殺する率が少ないのでしょうか?

本研究では、100万人以上という多数の対象者を解析した結果ではあり、ベースライン時の精神疾患は除外してはいるものの、慢性のストレス等の影響は除外できていません。

したがって、そもそも慢性のストレス等により体重が少なめだった人が将来自殺に至るという可能性は否定できません。また、気分に影響を与える可能性がある食品群(魚やビタミン等)の摂取が肥満者にくらべてやせている人では少なく、それが長期的な心理的健康の維持に影響している可能性も考えられます。

とはいえ、もちろん肥満だけが自殺の原因ではないのも事実です。実際、日本の自殺者数はこのところ継続して3万人以上という状況ですが、日本の肥満者は確実に増えています。最近の調査では、成人男性の約3割、女性の約2割が過体重以上である可能性が報告されており、肥満者数は増加の一途。したがって、肥満だけが原因なら自殺者数は減っていなければなりません。

また、肥満は糖尿病、高血圧、がん等の原因になることも明らかにされていますので、自殺予防に体重を増やそう!ということにはならないのは確実でしょう。

結局、肥満が自殺を予防するというよりは、肥満度は自殺を予測するマーカーの一つということになると思いますが、その因子の一つとして食生活というのは大きいかもしれません。このテーマについては、今後、もう少し文献を調べてみたいと思います。


 

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アメリカ人とイギリス人のどちらがより健康か?

米国におけるメディカル・ケアにかける費用は英国の2倍以上と報告されています。これだけ費用をかければ米国の方が健康な人が多い?というわけには残念ながらいかないようです。

米国医師会雑誌(JAMA)の5月3日号において、米国と英国における疾患の有病率や生活習慣等を比較した結果が報告されました。

Disease and Disadvantage in the United States and in England
James Banks, PhD; Michael Marmot, MD; Zoe Oldfield, MSc; James P. Smith, PhD
JAMA. 2006;295:2037-2045.

この研究では、米国と英国に住む55歳から64歳の非ヒスパニック系白人(米国4386人、英国3681人)を対象として行われました。また、米国、英国の国民調査の結果も解析しました。

生活習慣や疾患の有病率は社会経済指標(教育歴、収入)によって大きく影響されるため、両国間の比較はおなじ社会経済クラスの間で比較されました。

その結果、55歳から64歳の生活習慣については、喫煙率には差がないものの、米国人の方が肥満傾向が強く、英国人の方がお酒をたくさん飲む人が多いという結果でした。

また、米国人は英国人に比べて、糖尿病、高血圧、心臓病、脳卒中、呼吸器疾患、そしてがんの有病率がいずれも高くみられました。

さらに、40歳から70歳の国民調査における血液検査の結果を比較したところ、どの社会経済状況のレベルであっても、米国人は英国人にくらべてフィブリノーゲンやC反応蛋白(炎症の指標で、循環器疾患の危険因子)が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低いという結果でした。
(ただしこちらの調査では高血圧に有意差はなくなり、糖尿病だけが米国人に多いという結果でしたが)

したがって、アメリカに住む非ヒスパニック系白人は、イギリスに住む非ヒスパニック系白人よりも、病気がちで不健康であると言えるでしょう。

本研究における55歳から64歳の疾患の把握は自己申告に基づくものである点が問題ですが、糖尿病の有病率に関しては自己申告、クリニカルレポートの双方で有意に米国人で多くなっていましたし、血液検査の結果でも差が大きいことから結果の信頼性は比較的高いものと考えられます。

では、なぜ米国人の方が不健康なのでしょうか?

生活習慣では、英国人は以前から米国人に比べて喫煙率が高かったのですが、これが下がり両国間に差がみられなくなりました。

一方、肥満については両国ともに近年増えていますが、英国では1980年から2003年の間に肥満者の率が7%から23%に増加したのに対し、米国では15%から31%になっています。

肥満者の数については、まだまだ米国の方が多いわけです。

C反応蛋白やHDLコレステロールも肥満の影響を大きく受けますので、やっぱり肥満が悪いのか?と考えてしまいます。

さらに、米国では、肥満対策にかける費用もどんどん増やしているはずですが、その効果が肥満の増加数に追いついていけないというのが問題と思われます。

肥満大国の米国において、メディカル・ケアにかける費用と肥満者の数がどのように推移していくのか、これは同じように肥満者が増えつつある日本にとっても、注目すべき問題でしょう。

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緑茶は糖尿病も予防する?

コーヒーが糖尿病を予防する可能性があることは欧米の研究で既に報告されています。しかしながら、コーヒーと同様に抗酸化物質やカフェインを含む緑茶が糖尿病を予防するかどうかについては明らかでありませんでした。

米国内科専門誌Annals Internal Medicineの4月18日号では、緑茶やウーロン茶の摂取と糖尿病発症との関連を日本人において検討した報告が公表されました。

The relationship between green tea and total caffeine intake and risk for self-reported type 2 diabetes among Japanese adults.
Ann Intern Med. 2006 Apr 18;144(8):554-62.
Iso H, Date C, Wakai K, Fukui M, Tamakoshi A; JACC Study Group.

この研究では、日本人における多施設共同研究JACC Studyに参加した40~65歳の男女17,413人を対象として行われました。ベースライン調査において緑茶、コーヒー等の摂取量を調査し、その後5年間の糖尿病発症との関連を検討しました。

5年間に444人に新たな糖尿病が発症しました。緑茶およびコーヒーの摂取量と糖尿病発症との間には負の関連がみられました。具体的には、緑茶を毎日6杯以上飲む人は週に1杯未満の人に比べて、33%糖尿病発症のリスクが低下し、コーヒーを毎日3杯以上飲む人は週に1杯未満の人に比べて42%リスクが低下していました。

一方、紅茶およびウーロン茶等の摂取と糖尿病発症との関連はみられませんでした。また、飲み物からのカフェイン摂取量と糖尿病発症との間にも負の関連がみられました。

本研究は、糖尿病の発症が自己申告によるものということと、コーラなど炭酸飲料からのカフェイン摂取量を把握しきれていないというような問題はあるものの、日本人独特の生活習慣であり、しかも欧米から健康によいものとして注目されている緑茶の摂取が、糖尿病発症を予防するかどうかという点に着目したところがとてもユニークであると言えるでしょう。

今回の結果からはカフェインが糖尿病のリスクを減少させるという可能性が示唆されましたが、最近、血中の抗酸化物質(カロテノイド値)と糖尿病発症との負の関連も報告されており、糖尿病を予防するに至る機序がどういったものなのか興味がもたれるところです。

Associations of Serum Carotenoid Concentrations with the Development of Diabetes and with Insulin Concentration: Interaction with Smoking.
Hozawa A, Jacobs DR Jr, Steffes MW, Gross MD, Steffen LM, Lee DH.
Am J Epidemiol. 2006 Apr 5

それにしても、胃がんや乳がん発症との関連が否定されるなど、一時期旗色が悪かった緑茶ですが、最近は認知機能との関連も報告されており、再び注目されて来るかもしれませんね。

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禁煙できても、再喫煙を防ぐのは難しい

ニコチンガム、ニコチンパッチの普及や禁煙外来などの効果により、以前に比べて少し楽に(とは言っても禁煙する人にとっては相当つらいことでしょうが)禁煙できるようになってきました。

その一方で、禁煙した人の半分以上は1年以内に喫煙を再開してしまうことも知られています。禁煙するために要した人件費、労力等を考えると、いかに再喫煙を防ぐかが費用効果を高めるために大事になってくることでしょう。

米国内科専門誌Archive of Internal Medicineの4月24日号では、禁煙後の再喫煙を防ぐためのニコチン療法、カウンセリング等の効果について系統的レビューを行った結果が公表されました。

Prevention of Relapse After Quitting Smoking A Systematic Review of Trials
Tim Lancaster, MSc, MB, BS; Peter Hajek, PhD; Lindsay F. Stead, MSc; Robert West, PhD; Martin J. Jarvis, DSc
Arch Intern Med. 2006;166:828-835.

この研究では、禁煙の効果を検討した無作為試験等の研究のうち、少なくとも6ヶ月以上の経過観察を行った研究42本を系統的にレビューし、再喫煙を防ぐ最もよい方法についての検討が行われました。

その結果、禁煙の実施対象者が妊婦であっても、入院患者であっても、そして、禁煙後の再喫煙を防ぐために、行動療法を実施しても、薬物療法を実施しても、結局は再喫煙を予防するための効果的な方法は確認することができませんでした。

したがって、禁煙の対象者がどんな人であっても、また禁煙の方法がどんな方法であっても、禁煙成功者の中からある一定の割合で再喫煙者が出てくる可能性があり、それを予防するための効果的な方法はまだ残念ながら確認されていない。ということになると思います。

一方、禁煙外来等によるフォローアップを継続しているかぎり、再喫煙率は低いということも報告されています。したがって、このレビューでは、禁煙後少なくとも6ヶ月間は経過観察を行い、その効果の検討を行うことが望ましいとしています。

もちろん、例え禁煙後に再喫煙したとしても、禁煙期間が長ければ長いほどその効果はあったと考えられますので、あきらめずに何度でも禁煙にチャレンジすることも大切になるでしょう。

日本でもここ数年で禁煙外来がたくさんできました。また、禁煙外来に保険使えるようになる(現在は使えない)という話も出ているようです。

今後は禁煙外来の長期的な効果を検討していくこと、そして、再喫煙の予防に有効な方法を確立していくことが望まれるところでしょう。


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世界のマクドナルドとKFC 国によって味も健康への影響も違う!

今や世界120ヶ国に存在するというマクドナルド、85ヶ国以上にあるというケンタッキーフライドチキン(KFC)とともに、世界中でこの名前を知らない人はいないというくらい有名です。

このマクドナルド、世界のチェーン店だけあって、レギュラーサイズの大きさは各国共通。ならば、材料も一緒のはず、ということにはならないようです。

ニューイングランドジャーナルオブメディシンの4月13日号では、フライドポテトやチキンナゲットに含まれるトランス脂肪(酸)の量が、各国で異なることが報告されました。

High Levels of Industrially Produced Trans Fat in Popular Fast Foods
Steen Stender, M.D. Jørn Dyerberg, M.D.
Volume 354:1650-1652 April 13, 2006

トランス脂肪は植物性ショートニング、一部のマーガリン、および部分水素添加油脂を材料または揚げ油として使用した多くの加工食品などの、食物中に含まれている脂肪のことですが、心疾患のリスクを増やすLDLコレステロールを増やすことから、なるべく摂取量を減らすことが推奨されています(1日5gの摂取で虚血性心疾患のリスクが25%上昇するとも言われています)。

いわゆるファーストフード店では、このトランス脂肪がよく使われていたことから、各国でその使用を避けるように指導されてきましたが、その効果にはまだだいぶ差があるようです。

この研究では、20ヶ国43軒のマクドナルドもしくはKFCにおいて、Lサイズのフライドポテト(171g)とチキンナゲット(160g)を注文し、そこに含まれているトランス脂肪の量を測定しました。

その結果、もっともトランス脂肪の量が少なかったのは、デンマークのマクドナルドとドイツのKFCで、各店ともに、トランス脂肪の量は1g以下でした。

逆に多かったのは、マクドナルドはニューヨーク店、そしてKFCはハンガリー店でした。
ニューヨークのマクドナルドのフライドポテトには10g、ハンガリーのKFCのフライドポテトには24gのトランス脂肪が含まれていました。

毎日これらを食べると虚血性心疾患のリスクが50%以上高くなる計算になります。

ちなみに、米国内のマクドナルドのトランス脂肪は全体的に他の国よりも高かったようです。
(自分も気をつけなければ…)

また、今回のマクドナルドとKFCのデータをみますと、マクドナルドよりもKFCの方が各国間の差が大きいようにみえました。

この点については、KFCの場合、その国の味覚の嗜好によって味付けを変えているということであり、それが影響しているかもしれません。

ところで、この研究を実施した人は、旅行や他の仕事のついでに訪れた国においてこれらの調査を行ったとのこと(しかも、わずか10ヶ月間で!)。残念ながら日本に用事はなかったようで、日本のデータはありませんでした。

日本ではトランス脂肪の摂取量は欧米に比べて低いと考えられていますが、実際のファーストフード店のデータではどうなのでしょうか?興味があるところです。

医学中央雑誌で検索してみたら、まだ誰も調べていないようですが(マーガリンは既に調べてありました)、栄養科のあるどこかの大学で是非検討してもらいたいものです。

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意外な結果!? アマルガムは神経や腎臓に悪影響しない?

さあ、鏡の前に立って、大きく口を開けてみましょう。
奥歯に銀色(灰色)の詰め物がしてあるのが見えませんか?
もし、それが数年前に行われたものであれば、あなたも過去の歯科治療でアマルガムが使われている可能性があります。

このアマルガム、銀と錫に水銀(比率は約50%)を加えて作られていることから、水銀の毒性である神経への影響が懸念され、自閉症の原因、脳の発育によくない、腎臓への影響などの可能性が指摘されてきました。

その一方で、本当にアマルガムが人体によくないのかどうかについても論議されてきました。

米国医師会雑誌(JAMA)の4月19日号では、アマルガムが小児の神経や腎臓に影響するかどうかについて、初めての無作為試験の結果が2つ報告されました。

Neuropsychological and Renal Effects of Dental Amalgam in Children: A Randomized Clinical Trial
David C. Bellinger; Felicia Trachtenberg; Lars Barregard; Mary Tavares; Elsa Cernichiari; David Daniel; Sonja McKinlay
JAMA 2006;295 1775-1783

Neurobehavioral Effects of Dental Amalgam in Children: A Randomized Clinical Trial
Timothy A. DeRouen; Michael D. Martin; Brian G. Leroux; Brenda D. Townes; James S. Woods; Jorge Leitao; Alexandre Castro-Caldas; Henrique Luis; Mario Bernardo; Gail Rosenbaum; Isabel P. Martins
JAMA 2006;295 1784-1792

最初の研究は、過去にアマルガム治療歴のない6歳から10歳の小児534人を対象として、アマルガム治療が将来の神経心理機能(IQ,記憶力など)、および腎機能に及ぼす影響について検討されました。

対象者をアマルガム治療群とアマルガムを含まない治療を行う群の2群に無作為に分け、その後5年間の経過観察を行いました。

対象者は平均15本の歯に治療が行われ、その後5年間における検査の結果、アマルガム治療を受けた群の尿中には有意に水銀が増えていました。

しかしながら、5年間における知能テストの変化は両群に有意差はみられませんでした。また、記憶力、視覚運動検査、および腎機能検査の指標である尿中アルブミン量についても両群間に有意差はみられませんでした。

したがって、アマルガムが小児の神経発達を阻害するのではないかという仮説は否定されたということになるでしょう。

一方、もう一つの研究は、過去にアマルガム治療歴のない8歳から10歳の507人の小児を対象に行われました。

一つ目の研究と同様に、アマルガムによって治療を行う群と、使用しないで治療を行う群の2群に無作為に分け、その後7年間の経過観察を行いました。

7年間の経過観察期間中に、対象者は平均18.7本の歯の治療が行われました。アマルガム治療を行った群の小児はそうでない人に比べて、尿中の水銀レベルが2倍近く高くみられました。

しかしながら、記憶力、注意力、視覚運動機能等の検査を実施した結果、7年間のどの時期においても両群間に有意な差はみられませんでした。

したがって、最初の研究と同様に、アマルガム治療は小児の神経障害の原因にはなりえないということが言えるでしょう。

アマルガム治療が神経に及ぼす影響については裁判にもなっていることから、今回の2つの研究の結果は、特に法曹界に大きな影響を及ぼすのではないでしょうか?

ちょっと気になるのは、以前の報告では、アマルガム治療を行うと、尿中の水銀量が5~6倍になるということのようでしたので、それに比べると今回の2つの研究ともにそれ程の水銀量ではないということです。

すなわち、今回の研究結果はあくまでも、アマルガム治療によっておこる体内への水銀の取り込みが少量の場合の神経、腎機能への影響、と考えておいたほうが無難だと思われます。

というのは、当然ながらこのアマルガム治療の是非については歯科で多く取り上げられており、歯科医院のホームページ等に多数この問題が書かれています。

そうしたサイトによれば、アマルガムによる症状の中には頭痛、疲労感などの不定愁訴に近いものやアレルギー等の症状もあるようです。

したがって、本来ならこうした症状に関する無作為試験の結果も確認されるべきでしょう。

もっとも、全米では現在血圧計、体温計などにも水銀は使われなくなってきています。こうした流れからいくと、歯科領域においても使わない方が無難のような気がします。

しかしながら、上記の論文では、小児の歯科治療の選択肢の一つになりうると結論付けているのです。

私見ですが、この背景にはアマルガム治療がそれに代わる治療に比べて未だ安価であるということが影響しているかもしれません。なんせ、保険を使ってでさえ米国内の歯科治療の費用は高額で有名ですから…

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少量の飲酒は認知症を予防する。ただし、女性だけ?

少量の飲酒が心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞を予防することは既に知られています。
一方、ある種の認知症(痴呆症)は動脈硬化による小さな脳梗塞が関連していることもわかっています。
したがって、少量の飲酒はむしろ認知症の予防によいのではないかと考えられています。

実際、下記の米国医師会雑誌(JAMA)の報告では、まったく飲まない人に対して、週に1杯未満のお酒を飲む人は35%、そして、週に1~6杯程度のお酒を飲む人は54%認知症のリスクが下がることが報告されています。

Prospective study of alcohol consumption and risk of dementia in older adults.
Mukamal KJ, Kuller LH, Fitzpatrick AL, Longstreth WT Jr, Mittleman MA, Siscovick DS.
JAMA. 2003 Mar 19;289(11):1405-13.

しかしながら、これまでの報告は白人に偏っており、他の民族で同じような効果がみられるかどうかはよくわかっていませんでした。

米国脳卒中専門誌Strokeの4月6日号では、白人以外のヒスパニック系や黒人においても同様に、少量の飲酒が認知症を予防する可能性があることが報告されました。

Alcohol Intake, Carotid Plaque, and Cognition. The Northern Manhattan Study.
Wright CB, Elkind MS, Rundek T, Boden-Albala B, Paik MC, Sacco RL.
Stroke. 2006 Apr 6

この報告では、Northern Manhattan Study に参加したヒスパニック系、黒人、白人2215人を対象として、標準化された認知機能診断のための質問紙Mini-Mental State Examination (MMSE)を実施し、同時に最近1年間の飲酒量についての調査を行いました。

その結果、女性では、まったく飲まない人に比べて、週に1杯から13杯程度(1杯はビール360mlもしくはワイン120ml)飲む人は、MMSEの得点が高い(認知機能がよい)人の割合が22%多くみられました。一方、男性では飲酒とMMSEの得点との関係はみられませんでした。

ところで、これまでの報告においても、少量の飲酒と認知症との関連については、男性よりも女性にみられたという報告が多いようです。しかしながら、その理由はまだ明らかになっていません。

個人的には飲酒と喫煙との関連が強いために、飲酒量、喫煙量ともに多い男性では効果が出にくいのではないかとも考えます。男性の喫煙率の高い日本人でのデータが必要と思われますが、残念ながら飲酒量と認知症との関連について詳しくみた研究は日本ではほとんどないようです。

もちろん、今回の研究を含めて、あくまでも少量の飲酒の効果が指摘されているだけで、たくさん飲めばよいというものではありません。実際、先のJAMAの研究では、週に14杯(1日2杯以上)飲むと、逆に認知症の危険度が22%上昇することが報告されています。

また、これまでの報告からも飲酒はがんとの関係も報告されています。

昔から、酒は百薬の長などといいますが、まさにその通りで、お酒を薬として考えれば、飲みすぎたら副作用が出るのはあたりまえともいえるでしょう。

週に1、2回の飲酒は、気分を和らげ、ストレス解消にもなるし、身体にもよい…
ただし、その量で抑えられるかどうかが一番の問題ですね(それがストレスになったりして…)。


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葉酸よおまえもか! 葉酸とビタミンB6, 12は心血管病を予防しない

血中ホモシスティン値が高いと心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなることは、既に多くの研究によって報告されてきました。一方、緑黄色野菜に含まれる葉酸、肉や魚などに含まれるビタミンB6、B12によって、血中ホモシスティン値が下がることもわかっています。

したがって、葉酸、ビタミンB6、B12の摂取が血中ホモシスティンを下げることにより、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を予防するのではないかということが期待されていました。

ところが、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)の4月13日号に載った2つの論文からは、どうやら葉酸、ビタミンB6、B12の摂取は何の効果ももたらさない可能性が示されました。

1. Homocysteine Lowering with Folic Acid and B Vitamins in Vascular Disease.
The Heart Outcomes Prevention Evaluation (HOPE) 2 Investigators
N Engl J Med. 2006 354:1566-1577

2. Homocysteine Lowering and Cardiovascular Events after Acute Myocardial Infarction.
Bonaa KH, Njolstad I, Ueland PM, Schirmer H, Tverdal A, Steigen T, Wang H, et al.
N Engl J Med. 2006 354:1578-1588

先日の「ビタミンE」に引き続き、有望であった葉酸、ビタミンB6、B12までダメとなると、またまたサプリメント業界の頭を抱える様子が目に浮かぶようです。(もっとも、葉酸の場合、妊婦さんに必要なことはしっかり証明されていますが…)

最初の論文は、55歳以上の5522人を対象者を、葉酸、ビタミンB6、B12を服用する群とプラセボ群の2群に無作為に分け、その後5年間の心筋梗塞、脳卒中の発症との関係を検討しました。

その結果、葉酸、ビタミンB6、B12を服用した群はプラセボ群に比べて、血中のホモシスティン値が有意に低下しましたが、心血管疾患死亡は5%減少したのみで、有意差はみられませんでした。

唯一減少がみられたのが、脳卒中の発症についてで、服用群で25%の低下がみられました。一方、不安定狭心症の入院については、むしろ24%の増加がみられました。

結局、葉酸、ビタミンB6、B12を服用は心血管疾患の発症を予防しなかったというように考えられるでしょう。

もう一つの論文は、葉酸、ビタミンB6、B12を服用が心筋梗塞の再発、心筋梗塞後の死亡を抑えるかどうかについて検討されたものです。

この研究では、葉酸単独、ビタミンB単独、そして葉酸+ビタミンB6、B12の効果が検討されました。

その結果、葉酸単独、ビタミンB単独が心筋梗塞後の心筋梗塞・脳卒中・突然死を予防しなかったのはもちろんのこと、なんと葉酸+ビタミンB6、B12を服用した群では、逆に心筋梗塞・脳卒中・突然死の発症が22%増えるという結果でした。

したがって、葉酸、ビタミンB6、B12は心筋梗塞後の患者の二次予防にも使えないという結果だったと言えるでしょう。

それでは、なぜこのような結果になったのでしょうか?

そもそも、血中のホモシスティン値の上昇は酸化ストレスや血管壁の障害と関係することが報告されており、ホモシスティン値の上昇そのものが動脈硬化の原因になるのではないかと考えられていました。

ところが、今回の結果からは、ホモシスティンは動脈硬化の原因ではなく、単なるマーカーであり、何かホモシスティンの上昇と関与する他の原因が存在する可能性があるということになります。

現実的な問題として、これまで、職域・地域の循環器検診などでホモシスティンを測定し、高値だった人には「野菜をたくさん食べて、葉酸を摂取し、ホモシスティンを下げましょう!」と指導してきたわけです。

これからは、この指導がしにくくなってしまいます(トホホ…)

もちろん、今回の結果は、あくまでも葉酸のサプリメントの話です。野菜には他にも循環し疾患の予防に有用なカリウム、カルシウム、食物繊維等が含まれているわけですから、野菜を摂取すること自体がお勧めであることは言うまでもありません。

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アスピリンとビタミンEで循環器疾患は予防できるか?

今日の疫学セミナーは、ハーバード大学Julie E. Buring教授によるThe Women’s Health Studyによる低用量アスピリンとビタミンEの循環器疾患予防効果についての講演でした。

低用量のアスピリンが心筋梗塞、脳卒中、その他の血管疾患の全てにおいて、その再発予防に有効であることは既に確立された見解となっていました。ところが、健常人に対する予防効果についてはその効果は明らかではありませんでした。

Women’s Health Studyは45歳以上の健常女性においてアスピリンとビタミンEの継続的な服用が、心筋梗塞や脳卒中を予防するかどうかについて検討しています。

Women’s Health Studyの参加者はなんと39876人!
この人数を無作為にアスピリン(100mg)投与群とプラセボ投与群に2群に分け、
さらにそれぞれをビタミンE(600IU)投与群とプラセボ群の2群に分け、各群それぞれ10年間にわたって服用してもらいました。

その結果、アスピリン服用者はそうでない人に比べて、心筋梗塞が9%、脳卒中が17%減少していました(脳卒中のみ有意)。特に、脳梗塞については24%減少していましたが、脳出血については有意ではないもののやや増加傾向がみられました。また、輸血を要する胃腸出血はアスピリン服用群で40%の増加がみられました。

したがって、健常な女性においてもアスピリンは心筋梗塞,心血管死のリスクを上昇させることなく脳卒中の発症を抑制することが明らかになりました。

一方、年齢別にこれらの結果をみると、アスピリンの効果は65歳以上の人で特に強くみられており、まったくの健常者というよりは、なんらかの動脈硬化のリスクをもっている人にこそやはり有効なのだろう、ということが言えそうです。

どうやら高血圧、高脂血症などのリスクを何ももたない人が飲んでもその効果は薄いようですね。

ところが、ビタミンEについては、心筋梗塞、脳卒中、総死亡との関連は何もみられませんでした。尤も、アスピリンと違って、出血のリスクもなく、脳出血や胃腸出血のリスクの上昇もみられませんでした。

Buring教授いわく、「効果もなければ、副作用もない」とのこと。

ビタミンEについては、最近の論文では心臓病に対してもがんに対しても否定的な論文が多く、サプリメントとしての効力は大いに疑問視されています。

ただわずかな望みがあるとすれば、この研究では循環器疾患死亡については有意に24%減少させたこと、そして、アスピリンと同様に65歳以上の循環器疾患を減少させる傾向がみられたことくらいでしょう。

興味のある方は下記論文をご参照ください。

A randomized trial of low-dose aspirin in the primary prevention of cardiovascular disease in women.

Vitamin E in the primary prevention of cardiovascular disease and cancer: the Women's Health Study: a randomized controlled trial.

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やる気の出ない病気とは? 新しい病気の発見か?

英国医学雑誌BMJ誌の4月1日号にて、新しい疾患としてやる気(意欲)が出ない病気(motivational deficiency disorder)がオーストラリアで問題になっていることが報告されました。

Scientists find new disease: motivational deficiency disorder
Ray Moynihan
BMJ 2006;332:745 (1 April)

シドニーから発信されたこのニュースによると、極端な怠けももしかしたら、その背景にこの病気が隠れているかもしれないとのこと。

この「やる気不足病」はなんと、オーストラリア人の5人に1人にみられ、その症状として、どうしようもないほどの無気力感があり、重症のケースでは、やる気がわかないあまり呼吸をするのもしんどくなって死に至る場合もあるとか。

神経内科医のLeth Argos 氏によると、この疾患はPET (positron emission tomography)とやる気を評価する質問紙によって診断できるとのこと。また、この疾患は世間によく理解されていないため、治療できていないケースも多いとの話です。

また、まだ公表はされていませんが、現在この疾患への治療薬を開発中であり、現在第Ⅱ相試験を実施中であるとか。この薬剤「Indolebant」を投与された若い男性はソファから起き上がれなかった状況から、今や仕事に復帰できるところまで回復したとのことです。

さらに、この疾患領域に関係するカンファレンス(the inaugural Conference on Disease-Mongering) がニューキャッスル大学において4月11日から13日にかけて行われるそうです。

とまあ、ここまで読んで既にお気づきの方もいらっしゃると思いますが、

このBMJに載った記事は4月1日発行というところに大きな鍵があるわけです。

そうです。エイプリルフールのジョークだったわけですね。

でも、内容も一部の変な部分(呼吸するのもしんどくて死んでしまうとか)を除けば、結構それらしく書いてあり、さらに、リンクされたカンファレンスのHPを見ると、カンファレンスのタイムテーブル、からアブストラクトまでしっかり載っているわけです。相当に手の込んだいたずらと言えるでしょう。
(しかもちゃんとこの論文がPubmedにも掲載されているのもすごい)

この記事に対する反応は素晴らしく早く、すぐに読者から沢山のコメントが寄せられていました。

その中から一つ

April fool?

Leth Argos. Brilliant

そうです。Leth ArgosとはLethargy(無気力)そのものの名前だったのですね。

おそらく英語圏の人ならすぐわかるんでしょうねぇ。この名前で。




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胸の大きさが違うと乳がんになりやすい?

以前、「胸が大きい人は乳がんになりやすい」という論文がありましたが、胸の大きさだけでなく、左右差が大きくても乳がんになりやすい可能性が発表されました。

Breast asymmetry and predisposition to breast cancer.
Scutt D, Lancaster GA, Manning JT.
Breast Cancer Res. 2006 Mar 20;8(2)

この研究では、マンモグラフィによる乳がん検査を受けた人の中から、その後乳がんになった人252人と、ならなかった人で症例と年齢をマッチさせた252人を対象として、胸の大きさの違いを比較しました。

胸の大きさはマンモグラムの結果をもとに容量を推定し算出しました。

その結果、胸の大きさの左右差が100ml違う毎に乳がんのリスクは50%上昇していました。また、胸の大きさと大きさの左右差とは強い関連がみられたため(大きい方が左右差がおこりやすくなるため)、大きさの差を容量で割った比を用いても、やはり左右差は乳がんのリスク上昇に関与していました。

その他、乳がんになりやすい要因を調整した結果、乳がんのリスクを上昇させる因子は、胸の大きさの違い、身長、乳がんの家族歴、初経が早いこと、閉経状況でした。

以前、医師専門のサイトで胸の大きさと乳がんとの関係について論議されていたことがありましたが、その時の意見としては、胸が大きいということは乳腺組織がより発達している可能性があるため、乳がんがおこりやすいのではないかという話でした。

したがって、この左右差についても大きい方が乳腺が発達しているから、乳がんになりやすいのでは?というように考えられます。

しかしながら、本研究の本文をみると、左右差と乳がんが起こった部位とには有意な関連はみられませんでした。すなわち、左の胸に乳がんが発症した人の左右差をみても、右の方が大きかった人と左の方が大きかった人の割合は同じであり、左胸が大きい人に乳がんが起こりやすかったというわけではありませんでした。

したがって、乳腺だけでは本研究の結果を説明するのは難しいでしょう。

いずれにせよ、本研究を追認するような結果が出るのを待つ必要はありそうです。

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塩分を減らすと寿命が縮む?

塩分を過剰に摂取することが、血圧を上げ、脳卒中、胃がん等様々な病気の原因になることは多くの研究で明らかにされてきましたし、誰でも知っていることだと思います。

日本人では摂取塩分量を1日10g以下にすることが勧められていますが、実際の1日の平均塩分摂取量は未だに12gを超えており、まだまだ塩分を摂り過ぎているといえるでしょう。

米国では、1日の推奨ナトリウム摂取量が2400mgから2300mgに下げられました。ナトリウム2300mgというと塩分量にして約5.8g!、日本人にはとうてい達成できない数字と思われます。

ところが、最近の米国を代表する栄養調査(NHANES)による研究によると、減塩している人では、却って生命予後が悪くなる可能性が指摘されました。

Sodium intake and mortality in the NHANES II follow-up study.
Cohen HW, Hailpern SM, Fang J, Alderman MH.
Am J Med. 2006 Mar;119(3):275.e7-14.

この研究では、米国の国民栄養調査であるthe Second National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES II)に参加した7154人を対象として行われました。

ベースライン調査において、24時間思い出し法による食事調査を実施し、参加者の摂取塩分量を算出し、その後の全死亡、循環器疾患死亡との関係をみました。

ベースライン調査において摂取塩分量が少ない人(ナトリウムで2300mg未満)の人は、そうでない人に比べ、女性、糖尿病、肥満の割合が多く、摂取カロリー、身体活動量が少なめで、喫煙者の割合も少ないという結果でした。

平均13.7年間の経過観察中、541人の循環器疾患死亡を含む1343人が死亡しました。その結果、摂取カロリーで調整した塩分摂取量と循環器疾患死亡との間には負の関連がみられました。

年齢、性、高血圧、糖尿病、肥満度、身体活動量、喫煙等の交絡因子を調整した後も、塩分摂取量と死亡との関連はみられ、塩分摂取量が少ない人はそうでない人に比べて、循環器疾患死亡が37%多く、全死亡も28%多いという結果でした。

ただし、これら塩分摂取量と死亡との関連は、55歳未満、非白人、肥満者ではみられませんでした。

通常、こうした研究の場合、ベースライン調査の時点で高血圧など循環器疾患のリスクを既に持っている人で塩分を減らした食生活を既に行っているという可能性があります。

ところが、本研究の対象者ではベースラインのリスクにはそれ程大きな違いはありませんでしたし、また、ベースラインのリスクを考慮した解析でも、塩分摂取が少ないことは死亡の増加に関連していました。

とはいえ、塩分摂取量の把握はベースライン調査で1回のみであることや、元々塩分摂取量の少ない白人(なんと2300mg未満の人は全体の約半数!)でのみこうした結果がみられているということを考えると、この結果を日本人にそのままあてはめることはできません。

実際、日本人を対象とした研究では、摂取塩分量が多いことが脳卒中死亡のリスクを上げることが既に報告されています。

Sodium intake and risk of death from stroke in Japanese men and women.
Nagata C, Takatsuka N, Shimizu N, Shimizu H.
Stroke. 2004 Jul;35(7):1543-7.

気になるのは、海外でこうした論文が出ると、その結果だけがマスメディアにもてはやされて(塩分を減らしすぎるのは身体によくない!とか)しまう可能性があることです。

日本人以外を対象とした研究の場合、その結果が本当に日本人にあてはめられるのかどうか、常に考えるようにすることが必要でしょう。
(もちろん、日本人でのエビデンスをもっと増やすことも重要ですね!自戒をこめて…)

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もの言わぬは、腹ふくるる業なり

昔から「もの言わぬは、腹ふくるる業なり 」と申しますように、言いたいことを言わずに我慢していると、腹が膨れてくるなんてことが実際にあります。

もう10数年も前になりますが、旭川医大第三内科の教授(現名誉教授)で消化器心身症の権威である並木正義先生の講演を聞いたことがありました。その際、並木先生はこのことわざとともに、呑気症(無意識に空気を呑み込んでしまう症状)により見事に膨れたお腹の写真を提示されていたのを思い出します。

呑気症ならずとも胃腸の機能が低下すれば、腸内にガスがたまりやすくなり、腹部膨満感や腹痛が起こるのはよくあることですが、最近の論文から考えると、腹が膨れるのは、消化器疾患だけのためではないようです。

Chronic stress at work and the metabolic syndrome: prospective study
Chandola T, Brunner E, Marmot M.
BMJ. 2006 Mar 4;332(7540):521-5.

この研究では、職場ストレスとメタボリック症候群との関連を前向きに検討しました。

対象はロンドン市職員である35歳から55歳の男女10308人で、職場ストレスとメタボリック症候群との関連を14年間経過観察しました。

職場ストレスはKarasekの職場ストレスモデルを用いて、仕事上の要求が多く、仕事上の自由度が少なく(裁量権が少なく)、同僚や上司からの社会的支援が少ない場合に「職場ストレスあり」と判定されました。

14年間にこの調査を4回実施し、3回以上「ストレスあり」と判断されたケースを慢性的な職場ストレスありとしました。

14年間の経過観察の結果、慢性的な職場ストレスを感じている人は職場ストレスがない人に比べて、メタボリック症候群になる危険度が2.25倍あり、この関連は、ベースラインで肥満者を除いても、同様にみられました。さらに、職場ストレスが多いほどメタボリック症候群になりやすいという量・反応関係がみられました。

メタボリック症候群の代表的な診断基準はウエスト径です。すなわち、メタボリック症候群は内臓肥満との関連が強いため、ウエスト径が大きくなっていくのです。

したがって、慢性的なストレスを感じている人(仕事が忙しい上に、同僚・上司からの支援も少なく言いたいこともいえない環境にある人)では、徐々に内臓脂肪が増えていく結果、ウエスト径が大きくなっていく(お腹が膨れていく)可能性があるとも言えるでしょう。

ところで、「もの言わぬは、腹ふくるる業なり 」の出典は、かの有名な吉田兼好による「徒然草」のようです。
「思(おぼ)しきこと言はぬは腹膨(ふく)るるわざ」(「思うこと言わぬは腹ふくる」)とあるように、兼好法師はこの当時から心と身体との関係について鋭い観察をしていたのかもしれません。

もっとも、さすがの兼好法師も「思ったことを言わない」ことがメタボリック症候群の原因になるかもしれない!、なんてことは思いもよらなかったでしょうが…


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楽天家ほど長生き?

一般的には楽天的な人ほど長生きと思われていますが、実際にはどうなのでしょうか?
先に紹介したthe Zutphen Elderly Studyでは、楽天的な気質と循環器疾患死亡との関連についても検討しています。その結果、楽天的な人はそうでない人に比べて、循環器疾患で死亡する可能性が半分以下であることがわかりました。

Dispositional optimism and the risk of cardiovascular death: the Zutphen Elderly Study.
Giltay EJ, Kamphuis MH, Kalmijn S, Zitman FG, Kromhout D.
Arch Intern Med. 2006 Feb 27;166(4):431-6.

この研究では、64~84歳男性545人を対象として、楽天的な性質と循環器疾患死亡との関連を検討するために15年間経過観察を行いました。

参加者にはベースライン調査、および5年毎の追跡調査において、楽天的かどうかについての質問紙調査を行いました。楽天的かどうかは「私は今なお人生から多くのものを期待している」など4項目からなる質問紙にて評価しました。

ベースライン調査では、.楽天的である人ほど、うつの得点が低く、自分を健康であると思っている割合が多く、身体活動量が多めでしたが、飲酒量、喫煙量、体重等との関連はみられましせんでした。

また、楽天的な人の割合は年齢とともに下がる傾向がありましたが、もともと楽天的な人ではたとえ年齢が上がっても楽天的というような傾向もみられました。

ベースライン調査から最初の2年間は解析から除外した上で、楽天的なことと循環器疾患死亡との関連をみた結果、 楽天的な人ほど循環器疾患死亡のリスクが低くなり、上位3分位の人は下位3分位の人に比べて、年齢調整後の死亡リスクが55%低くなっていました。

また、楽天的なことと循環器疾患死亡との関係は、糖尿病や高コレステロール血症など循環器疾患危険因子を補正しても同様にみられました。

さらに、質問調査によるうつの得点を調整しても同様の傾向であり、楽天的なことは他の身体的心理的因子とは独立して循環器死亡に関連することが示されました。

それでは、なぜ楽天的なことが循環器疾患死亡を減らすのでしょうか?

本研究では、楽天的なことと循環器疾患リスクファクターとの関連についてはほとんどみられておらず、他の要因の影響が考えられています。

例えば、楽天的な人は人付き合いが多く、社会的な支援を受けやすいなどが考えられるでしょう。また、本研究では測定されていませんが、炎症、血管内皮機能、自律神経機能、血小板凝集能などが影響している可能性もあります。

本研究では、他の死亡要因との関連は検討していないため、死亡率全体との関係ははっきりしませんが、少なくとも循環器系疾患死亡との関連で言えば、楽天的な方が好ましいとは言えるでしょう。

とはいえ、本研究でも示されているように、こうした性質というものは簡単に変えられるものではありません。もし、自分は楽天的な方ではないなぁ、と考えている場合、血圧、コレステロール、糖尿病等その他の循環器疾患リスクをきちんとコントロールすることでも十分予防可能だと思います。

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やっぱりココアは心臓病に良い?

ココアが健康に良いという話は時々話題になりますが、最近の米国内科専門誌Archives of Internal Medicineに発表された研究では、ココアは高齢者の血圧によく、さらに心臓死を減らす可能性があることが報告されました。なお、この研究は先日行われましたAHAの疫学カンファレンスでも発表され、結構注目されていました。

Cocoa intake, blood pressure, and cardiovascular mortality: the Zutphen Elderly Study.
Buijsse B, Feskens EJ, Kok FJ, Kromhout D.
Arch Intern Med. 2006 Feb 27;166(4):411-7.

この研究は、オランダのthe Zutphen Elderly Study に参加した65~84歳の男性470人を対象として行われました。最初に、ココアの摂取と血圧値との関連を横断研究で検討し、次に、15年間経過観察を行い、心臓死を含む死亡との関連を検討しました。

ココアの摂取量は食事調査によりチョコレート、ココアドリンクなど24種類のココアを含む食材を聴取し、ココア含有量を算出した上で一日平均摂取量を出しました。食事調査は5年後と10年後にも実施されましたが、参加者のココア摂取量はほぼ同じように推移していました。

参加者の約3分の1はベースライン調査時にココアを全く摂取していませんでした。1日あたりのココア摂取量の中央値は2.11gでした。

ココアを全く摂取しない群に比べて、2.9g以上摂取する群では肉類の摂取が少なく、砂糖、ナッツ類、アルコールの摂取量は多めでした。

また、解析をココアの摂取量によって3群に分けて行った結果、最も摂取量が多い群では摂取量が少ない群に比べて、最大血圧値は平均3.7mmHg、最小血圧値は平均2.1mmHg低く、ココアの摂取量が多いほど血圧値が低いという関係がみられました。

15年の経過観察期間中、314人が死亡し、そのうち152人は心臓血管死でした。ココアを摂取量が少ない群に比べて、ココアを多く摂取する群は心臓血管死のリスクが半分(相対危険度0.50)であり、総死亡のリスクも同様に減少していました(相対危険度0.53)。

また、これらココア摂取と死亡との関連は、年齢、喫煙、飲酒、血圧値、身体活動、その他の食事摂取状況、ビタミンC、E等の抗酸化物質摂取等を考慮した解析でも同様にみられました。したがって、ココアの摂取そのものが心臓血管死亡のリスクを減らした可能性が高いと言えるでしょう。

とはいえ、よくデザインされた研究ではありますが、対象人数がやや少なめで高齢者に偏っていますので、今後若年者を含めたもっと大規模な人数での調査が必要とされるでしょう。

また、本研究では、ココアで血圧が下がっているということが心臓血管死亡の減少とは直接関係しておらず、なぜココアが心臓血管死亡を減らしたのか?という点については疑問が残ります。

これまでの報告では、ココアの摂取が循環器系疾患の発症と関連する血管内皮機能を良くする働きがあることも報告されており、そのことがメカニズムの一つとして考えられてはいます。

いずれにせよ、チョコレートにしろココアドリンクにしろ、ココアの摂取には砂糖の摂取がつきものですから、食べ過ぎて却って太ってしまったということにならないように気をつけたいものです。

そして、この論文が出たことで最も恩恵を受けるであろう人は?

もちろん、みのもんた氏であろうことは想像に難くありません。
(あとはサプリメント業界か?)

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ED(勃起障害)の予防法は?

3月2日から5日までAmerican Heart Association(AHA)の疫学部門のカンファレンスがありアリゾナ州はフェニックスに来ています。

こっちはミネソタとは違って、夏みたい!プールで泳いでいる人もたくさんみかけます。
そんな人たちを横目でみながら、しっかり勉強しなければ…

カンファレンスの発表の中から、面白そうな話題を一つ、

これからの疫学研究のテーマになるのでは?という冗談(本気?)も飛び交った発表の演題は

米国におけるErectile Dysfunction (ED:勃起障害)の頻度とその危険因子

米国の国民栄養調査の対象者のうち2126人の男性から協力を得て、行われたEDの研究です。

この研究によると米国の20歳以上の男性のうち、EDが「ほとんどいつも」、もしくは「ときどき」起こる人の頻度はなんと18%!、米国で約1800万人の男性がEDを持っているということになります。

さらに、その危険因子をみると、特に問題になるのが糖尿病!
糖尿病の人の約31%はEDがあり、糖尿病がない人に比べて約3倍EDのリスクが高くなっていました。

昔から糖尿病の合併症として神経障害があるため、糖尿病の人でEDが起こりやすいのはよく知られていますが、実際に数字でみると、やっぱりかなりのインパクトがあるんだなあという感じです。

その他に多変量解析で有意にEDと関係したのは、なんとテレビの視聴時間が長いほどEDになりやすくなる!
ということ。

テレビの視聴時間が長いとそうでない人に比べて約2倍EDになりやすいようです。

これは、テレビの時間というよりは、身体活動量に関連した因子と解釈されています。すなわち、テレビを長くみている人は身体活動量が少ないためEDになりやすくなる。ということです。

これまでにも、がん、循環器疾患、糖尿病、長生き、うつなど数々のものと関連してきた身体活動量ですが、なんとEDにも有効なのではないか?というわけです。

もちろん、今回の研究は横断研究なので本当に身体活動を増やすとEDが予防できるのかというところまでは答えは出ていません。

まあ、運動をすれば、少なくとも糖尿病の予防にはなります。
糖尿病を予防すればEDの予防にも繋がりますので、どっちにしても運動はやったほうが良いということになるでしょう。

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親は子供の肥満に気が付かない

米国の肥満が問題となっているのは大人ばかりではありません。大人の肥満を予防するためにも、子供の頃から肥満を予防することが大切と言われています。

大人の肥満に比べて子供の肥満の場合、両親の影響を強く受けるわけですが、自分の子が肥満なのかそうでないのか気が付かないことが多いようです。

こんな感じのお話が、今回の疫学セミナーにおいてLisa Harnack准教授により発表されました。

タイトルは以下の通りです。

Parental Misclassification of Preschool-Age Child Weight Status

セントポールのプレスクールの子供達とその両親を調査した結果、
85%タイル以上の肥満児の両親のうち、自分達の子供が肥満であるということを気が付いているのは、
わずかに数%!
実に95%以上の肥満児の両親が自分達の子供は平均的な体重であると思っているのです

では、なぜこのようなことが起こるのか?

これにはこれまでの社会的な背景が関係しているといいます。

すなわち、少なくとも米国社会では、あまりやせすぎの赤ちゃんは健康ではない!というイメージが先行しているのではないか、ということが考えられるようです。

やせていない(太っている)! → 健康(病気っぽくない)! → 平均的(みんなと一緒だ)! という流れですね。

確かに、やせすぎの子供よりも、ちょっとぽっちゃりしていた方が健康的に見えるのは日本も一緒ですよね。

さらに、子供の体重を親に示すときは、通常50%タイルを標準として、それより多いか少ないかを表示しますが、50%以下というのはどうも平均以下であるというように思う人が多くって、何とか平均以上の体重にしようという意識が強くなってしまう、という話もありました。

このあたりは偏差値など何でも数値で比較してしまう現代社会の影響でしょうか?

現在、プレスクールの児童の約35%が過体重と考えられるため、何とか、両親の認知を変えていく必要があるそうですが、実際にはこうしたことから指導は難しいようです。

日本の場合、むしろ、若者では逆の意識が強いのではないでしょうか?すなわち、スリムなことが、社会的にかっこいいと思われているところが多く、それが自分の体型の認知に影響している可能性が考えられます。

若い女性で標準体重から考えたらかなりやせているにもかかわらず、自分は太っているというように認知してしまうのは、こうした影響もあるでしょう。

20年くらい前まではアイドルも少しくらいぽっちゃりしている方が(榊原郁恵とか、宮崎美子とか…って年齢がわかってしまうような発言ですが…)、人気がありましたから、もしかしたらまたそんな時代が来るかもしれません。

ところで、最近、元モーニング娘。の加護さんが喫煙で謹慎という事件がありました。
そういえば、彼女は現在のアイドルの中ではぽっちゃりしている方だったと思います。
もしかしたら、彼女の中にぽっちゃりしていることに対する悩みがあったのかもしれません。
女性の中には喫煙することで食欲を抑える方もいらっしゃりますので、それが関係あったのかどうか…
だとしたら、彼女もこうした体型に関する社会的なイメージの犠牲者か?

なんてことは単に大袈裟な解釈ですね。

肥満が多くなっているとはいえ、まだまだ米国よりは肥満者の少ない日本ですので、
体型に関するイメージを日米比較したら面白い結果がでるかもしれません。


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配偶者の入院が自分の死亡リスクを上げる

これまで多くの研究により、配偶者との死別が自分の死亡リスクを上昇させることが報告されてきました(特に男性において)。

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの2月16日号において、配偶者の入院と自分の死亡リスクとの関連が報告されました。これによれば、配偶者が入院しただけでも、自分の死亡リスクが上昇する可能性があるようです。

Mortality after the hospitalization of a spouse.
Christakis NA, Allison PD.
N Engl J Med. 2006 Feb 16;354(7):719-30.

この研究では、 1993 年にメディケアに加入していた夫婦 518,240 組を対象として、9年間の追跡期間中の入院と死亡との関係を検討しました。

追跡期間中、 1 回以上入院した人の割合は、夫 が383,480 人(74%)、妻 が347,269 人(67%)であり、夫 のうち252,557 人(49%)、妻 のうち156,004 人(30%)が死亡しました。

男性では,6.4%が配偶者が大腸癌で入院後 1 年以内に死亡し、6.9%が配偶者が脳卒中で入院後に、7.5%が配偶者が精神疾患で入院後に、8.6%が配偶者が痴呆(認知症)で入院後に死亡していました。

一方、女性では,3.0%が配偶者が大腸癌で入院後 1 年以内に死亡し、3.7%が配偶者が脳卒中で入院後に、5.7%が配偶者が精神疾患で入院後に、5.0%が配偶者が認知症で入院後に死亡していました。

配偶者が入院した後の死亡リスクは、特に配偶者が認知症や精神疾患で入院した場合に高くなっていました。配偶者が精神疾患で入院した場合、男性における死亡のリスクは19%増加し、女性では32%増加していました。同様に、配偶者が認知症で入院した場合、男性の死亡リスクは22%増加し、女性では28%増加していました。

その他、配偶者が脳卒中、心不全、慢性肺疾患、大腿骨頸部骨折などで入院した場合、男女ともに死亡のリスクが上昇していましたが、配偶者ががんで入院した場合は、死亡のリスクはそれ程上昇していませんでした。

また、配偶者が死亡した場合、その後の死亡リスクは男性で21%、女性で17%上昇していました。

さらに、全体的にみると、男性では、配偶者の入院に関連した死亡リスクは、配偶者の死亡に関連した死亡リスクの 22%であり、女性では死亡リスクの 16%でした。

以上の結果より、配偶者の入院は、認知症、骨折、脳卒中などのように特にその介護が負担になるような疾患においては、自分自身の死亡リスクを上昇させる可能性があると言えるでしょう。

それにしても、配偶者が入院した場合の男性の死亡率をみると、どの配偶者がどの疾患で入院していようが女性より高く、おおよそ1.5~2倍以上の差がみられています。

そもそも男性の死亡率の方が高いので(49% v.s. 30%)、男性にとっては妻が死亡した場合はもちろんのこと、例え入院であっても自分の死亡のリスクが高くなってしまうのはさらに深刻な問題です。

特に男性にとっては、こうした死亡のリスク上昇がみられないための要因を調べていく必要がありそうです。

例えば、家事を頻繁にするとか、運動を定期的にしているとか、外出の機会が多いとか、何か予防できる手段がありそうなものですが…

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4年以内に死ぬ確率

4年以内に死ぬ確率とは言っても、50歳以上の人のみにあてはまる話です。これまで多くの疫学研究によって、死亡、循環器疾患発症の予測等が行われてきました。今回、身体指標と身体機能の両方から死亡の予測を行った結果が米国医師会雑誌(JAMA)の2月15日号で発表されました。

Development and Validation of a Prognostic Index for 4-Year Mortality in Older Adults
Sei J. Lee, Karla Lindquist, Mark R. Segal, Kenneth E. Covinsky,
JAMA. 2006;295:801-808.

この研究では50歳以上の地域住民11701人を対象に行われたthe Health and Retirement Study (HRS)の結果をもとに死亡の予測について解析されました。

4年間の経過観察中に1361人(12%)が死亡し、12個の独立した因子が死亡に関係していました。

各因子をその重要度でポイント化すると、年齢(60‐64歳:1ポイント、65‐69歳:2ポイント、70‐74歳:3ポイント、75‐79歳:4ポイント、80‐84歳:5ポイント、85歳以上:7ポイント)、性(男性:2ポイント)、疾病等の有無(糖尿病:1ポイント、がん:2ポイント、肺疾患:2ポイント、心不全:2ポイント、喫煙:2ポイント、肥満度が25未満:1ポイント)、身体機能の低下(風呂に入れない:2ポイント、数ブロック歩くことが困難:2ポイント、お金の管理が困難:2ポイント、大きな荷物を運ぶのが困難:1ポイント)というようになります。合計ポイントが高くなるほど死亡の危険度が上昇するということです。

合計ポイントが0-5ポイントの人が今後4年間に死亡する危険度はわずかに4%であったのに対し、6-9ポイントの人では15%、10-13ポイントの人では42%、そして、14ポイント以上の人では64%の人が亡くなると予測できます。

例えば、60歳の退職を目前にした男性がいたとして、この男性が喫煙していて、肥満度が25未満であったなら、合計ポイントは既に6ポイントになります。したがって、この男性が今後64歳までに死ぬ危険性は15%程度あるということになります。逆に、例え84歳であっても、女性で何もリスクがなく、日常生活にも支障がないのであれば合計ポイントは5ポイントですので、今後4年間における死亡のリスクは前述の60歳の男性よりも低くなります。

これらの数値は低いか高いか、もしくは本当に個人にあてはまるかどうかは別として、ある程度の目安として知っておいてもよいでしょう。もちろん、このポイントの換算は主に白人を対象として計算されていますので、日本人にそのままあてはまるとは限らないことを了解しておく必要はあります。

興味深いのは肥満度が25未満の方が死亡のリスクがむしろ高くなっていることです。肥満度25以上といえば日本では立派な?肥満になりますので、むしろ肥満していた方が死亡のリスクは下がるという結果がみられたということになります。実際、この集団では、肥満度が25未満の人の死亡リスクはそうでない人の2倍ということでした。日本人ではもうちょっと肥満度の値を低く設定する必要はあると思います。

とはいえ、最近の日本人女性では必要以上にやせようとする人が多い傾向がありますから、極端なダイエットは控え、健康的な体型を維持することが大事でしょう。(もっともこれは若い女性限定の話で、中年以降の女性で極端なダイエットをしている人は珍しいかもしれませんが…)

日本人でも20歳時の肥満度と死亡との関連をみてみたら面白い結果が出るかもしれませんね。


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お笑い芸人がもてる理由

ここ数年お笑いブームが続いているようですが、それとともにお笑い芸人と女優の交際報道も多くなっているような気がします。お笑い芸人はもてるのか?それを支持する報告がされたようです。

ただし、この研究の原文を確認できていないので、この記事を紹介しているBioTodayという研究情報サイトからの引用です。(論文名をこのサイトの管理人さんに問い合わせたのですが教えてはもらえませんでした)

この研究によると、ジョークが添えてある異性の写真と何の面白味もない文章が添えてある異性の写真を200人の大学生に見せてどの異性をパートナーにしたいかを尋ねたところ、女性は面白い文章が添えてある男性をパートナーにしたいと回答する傾向があったとのことです。

(すなわち、同じ外見であれば面白い人の方が女性にとって受けが良いということになるかもしれません。)

一方、男性ではこの傾向は認められなかったのとのこと。また、実験の結果、女性はユーモアを受けることにも発することにも等しく価値を見出していましたが、男性は自分のユーモアを受け入れてくれることを重要視していたようです。

(ということは、男性にとっては自分を笑わしてくれる女性はそれほど魅力的には感じないということでしょうか?むしろよく笑ってくれる女性に魅力を感じるということになるかもしれません。)

さらに、女性はあらゆる関係においてユーモアを発してくれる人を好ましいと感じる傾向がありましたが、男性は自分のユーモアを受け入れてくれる人を好ましいと感じる傾向があり、その傾向は性的な関係において一層強まったとのことです。

原文を読んでいないのでなんとも言えませんが、男性にとってはユーモアのみならず、自分の気持ちや考えを受け入れてくれる女性に魅力を感じるということになるかもしれません。男性は基本的に甘えたがりやということになるでしょうか。

それと、ユーモアだけでなく、他の感情、仕事、行動面と男女の好みの違いをみてみたら面白いと思います。例えば、タバコを吸う仕草一つにしても、男女で好ましいと思う頻度は異なるかもしれません。また、好ましいと思う頻度は自分が喫煙しているかどうかによっても違ってくるでしょう。そうした他の因子をこの研究でどれくらい考慮しているかが気になるところです。

とりあえず、意中の男性がいらっしゃる女性は会話の中でよく笑ってみること。そして、意中の女性がいらっしゃる男性は会話の中でよく笑わせようと試みてはいかがでしょうか?ただし、お寒いギャグで却って逆効果ということにもなりかねないので男性はご用心。お笑い芸人をたくさん抱える吉本興業さんには、会話に笑いを入れる講座なるものを開催してもらいたいものですね。


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長期病欠の原因は?

職場を長期に病欠される人がいらっしゃいます。最近はうつ病を始めとして精神的なストレスがその要因として注目されていますが、それ以外にも様々な要因が考えられています。

British Medical Journal (BMJ)の1月30日号では、長期病欠のリスクファクターを検討した結果が報告されました。

Physical work environment risk factors for long term sickness absence: prospective findings among a cohort of 5357 employees in Denmark.
Lund T, Labriola M, Christensen KB, Bultmann U, Villadsen E.
BMJ. 2006 Jan 30

この研究は、デンマーク人雇用者5357人を対象として、職場環境などをインタビューし、その後18ヶ月間における長期病気休暇(8週間以上)との関係を前向きに検討しました。

経過観察中に348人が長期病気休暇をとりました(女性55.7%、男性44.3%)。男女ともに首や腰を過剰に屈曲したり捻ったりする仕事、立ったりしゃがんだりするのが多い仕事、荷物を持ったり運んだりする仕事、および荷物を押したり引いたりする仕事が長期病気休暇に関係していました。

特に、女性においては、身体的環境要因と心理的環境良い運の交互作用がみられました。すなわち、仕事の役割がはっきりしない、および精神的な仕事の要求度が高いといった職場ストレスが高い女性では、荷物を持ったり運んだりするなどの身体的負担が重なると特に長期病気休暇が起こりやすいという結果でした。

近年、腰痛などの慢性疼痛疾患にうつや心理的要因が関与することが明らかになっていますが、今回の報告は特に女性においてその作用が強く出る可能性を示したものと言えるでしょう。

これまで、横断研究では重いものを持つ環境が腰痛と関連することが報告されていますが、前向き研究はほとんどありませんでした。今回の研究では横断研究でみられた関連が前向き研究でも実際にみられたことでこれまでの研究を支持する結果でした。

しかしながら、今回の検討では主に長期病気休暇の原因として労働環境や心理的要因について検討が行われており、高血圧、糖尿病等の環境要因以外の部分についても今後検討する必要があるでしょう。

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喫煙の肺がんへの影響、日本人で少ない?

喫煙が肺がんのリスクを上昇させることは誰でも知っていることですが、同じように喫煙していても肺がんになりにくいタイプの人がいるもの確かなようです。

人種別、民族別に喫煙と肺がん発症との関連をみた研究が、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)の1月26日号に公表されました。

Ethnic and Racial Differences in the Smoking-Related Risk of Lung Cancer
Christopher A, et al.
N Engl J Med 354:333-342 January 26, 2006

この研究は米国に住む、アフリカ系米国人、日本系米国人、ラテン系、ハワイ原住民、そして白人18万3813人を対象として、肺がん発症と人種との関連をみました。

8年以上の経過観察期間中に1979人の新規肺がんが登録されました。肺がんの発症率はアフリカ系米国人で最も高く、日系人はアフリカ系米国人に比べて男性で約半分、女性で約3分の1程度の発症率でした。

喫煙の本数別に肺がんの発症頻度をみると、30本以下の人では、特にアフリカ系米国人とハワイ系の人の肺がん発症率が高くみられました。喫煙本数が10本以下のアフリカ系米国人に比べて、喫煙本数が10本以下の日系人の肺がんの発症率は25%に過ぎませんでした。同様に11~20本では、アフリカ系米国人に比べて日系人では39%でした。

一方、21本以上喫煙している群では、アフリカ系米国人と日系人との間の肺がん発症率の違いは極端に縮まり(日系人の発症率はアフリカ系の61%)、31本以上になると有意差がなくなりました。

また、これら喫煙と肺がんとの関係における人種の影響は、男女別、がんの組織別にみても同様にみられました。

以上より、日系人やラテン系では、喫煙本数が少ない場合、喫煙の肺がん発症に寄与するリスクがアフリカ系米国人やハワイ系に比べて低いと考えられますが、喫煙本数が多ければリスクはどの人種でもあまり変わらないということになるでしょう。

本研究は日系米国人を対象としたものであり、日本人にそのままあてはまられるかどうかはわかりませんが、これまでの日本人を対象とした肺がんと喫煙との関連をみた文献でも、米国人に比べて日本人では喫煙の肺がん発症に対する影響が小さいことが報告されています。

Lung cancer death rates by smoking status: comparison of the Three-Prefecture Cohort study in Japan to the Cancer Prevention Study II in the USA.
Marugame T, Sobue T, Satoh H, Komatsu S, Nishino Y, Nakatsuka H, Nakayama T,
Cancer Sci. 2005 Feb;96(2):120-6.

これは、日本人の喫煙者で、喫煙本数の少ない人では米国人に比べて喫煙の影響を受けにくいため、と考えることのできるかもしれません。

もちろん、少ない本数でも肺がんのリスクを上昇させることには変わりありませんので、吸わないことが一番いいのはあたりまえの話ですが、どうしてもやめられない人は、喫煙の本数を減らすことをまず考えた方がよいでしょう。


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元気で長生きのコツ、やっぱり運動!

最近は単に長生きするだけではなく、元気で長生きすること、いわゆる健康寿命を延ばすことが重要になってきました。最近公表された論文からは、定期的な運動は単に寿命を延ばすだけでなく、健康で長生きするために効果があることがわかってきました。その中から2つの研究を紹介します。

最初に、Annals of Internal Medicineの1月17日号に載った論文では、定期的な運動が認知症の予防に有効であることが報告されました。

Exercise is associated with reduced risk for incident dementia among persons 65 years of age and older.
Larson EB, Wang L, Bowen JD, McCormick WC, Teri L, Crane P, Kukull W.
Ann Intern Med. 2006 Jan 17;144(2):73-81.

この研究では、認知症のない65歳以上の男女1740人を対象として、生活習慣や健康状況と認知症発症との関連を調べました。平均6.2年間の経過観察中に158人の新規認知症(アルツハイマー病107人を含む)が登録されました。

運動と認知症発症との関連を検討した結果、週に3回以上の定期的な運動を実施している人はそうでない人に比べて認知症になるリスクは38%減少していました。また、運動と身体活動能力との間には交互作用がみられました。すなわち、元々身体活動能力が高い人ではそれ程運動のメリットは大きいものではありませんでしたが、身体活動能力が低い人では、運動による認知症のリスクの軽減が強くみられました。

したがって、元々体力がない人ほど定期的な運動をした方が認知症予防に有効であったといえるでしょう。

一方、この研究の対象者は元々定期的な運動を行っている人の割合が3分の2以上であり、健康に意識の高い集団であることが考えられます。したがって、対象集団がやや平均的な集団から偏っている可能性はあります。


もう一つの研究は、米国老年精神雑誌(American Journal of Geriatric Psychiatry)の1月14日号に載った論文で、精神的にも健康な高齢者になるための条件を調べたものです。

Successful Mental Health Aging: Results From a Longitudinal Study of Older Australian Men.
Almeida OP, Norman P, Hankey G, Jamrozik K, Flicker L.
Am J Geriatr Psychiatry. 2006 Jan;14(1):27-35.

この研究は、80歳になったときに認知症がなく(MMSEで24点以上)、うつもない(GDS-15で5点以下)ようにするためには、どんな因子が関与しているかを調べたものです。

75歳以上の男性601人を平均4.8年間経過観察した結果、80歳の時点で76%の人が認知症もうつもない精神的にも健康なサクセスフルエイジングを達成していました。

このサクセスフルエイジングを達成することの阻害要因は、年齢、脂肪を除去していない牛乳の摂取であり、促進要因は教育歴、そして身体活動量でした。

年齢や教育歴はどうすることも出来ない問題であるのに対し、身体活動は何歳からでもできることですよね。ちなみに、身体活動はそれが積極的な身体活動であってもそうでなくてもともにサクセスフルエイジングを達成するために有効でしたので、とりあえず身体を動かしましょうってことでしょう。

もちろん、身体活動量の増加そのものがうつ予防には有効と考えられてはいますが、それ以外にも行動範囲が広がることにより、人との付き合いも多くなることも精神的な健康を保つのに有効でしょう。

家でじっとしていて、誰とも話さない日が続けば、誰でも気持ちは沈むし、脳への刺激も少なくなってしまう可能性は十分に考えられますよね。

ということで、寒さに負けずに運動しましょう!ってもちろん、最初から無理すると却って身体を悪くすることもあるので、ご用心。何事もほどほどが大切です。


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他人の不幸は蜜の味?

現在、世間を大きく騒がしているライブドアの社長、ホリエモンこと堀江貴文氏。彼の逮捕に多くの人はどのように感じているのでしょうか?好き嫌いが分かれるキャラの堀江社長ですから、ある人は「かわいそうに」と思い、ある人は「ざまあみろ」と思うというように意見は分かれるところでしょう。

ところが、最近の研究成果からは、例え堀江社長が自分の嫌いなタイプであったとしても、女性の場合はあまり堀江社長の不幸を喜ばず、男性の場合のみ不幸を喜ぶ可能性が示されました

この研究はネイチャー(Nature)誌の1月18日号に載っています。

Empathic neural responses are modulated by the perceived fairness of others.
Singer T, Seymour B, O'doherty JP, Stephan KE, Dolan RJ, Frith CD.
Nature. 2006 Jan 18

他人の不幸に対し、人間がどう反応するかを調べたこの研究では、その反応に明らかな男女差があることが示されました。

本研究の対象は男女16人ずつで、最初にマネーゲームをみんなで行いました。その時男女2人ずつのプロの俳優をサクラとして一緒にゲームに参加させ、好ましいタイプと嫌な(ずるい)タイプに演じさせました。

次に、好ましいタイプと嫌なタイプに分けられた俳優に対し、対象者の前で痛み刺激を加えました。それとともに、対象者(被験者)の脳血流量をfMRIにて測定しました。

その結果、好ましく思っている人が痛みで苦しむ様子をみたとき、男女いずれの被験者の場合も、脳の「共感」や「痛み」と関連する領域に反応がみられました。

一方、嫌いなタイプの人が痛みで苦しむ様子をみたとき、、女性は好ましく思っている人が苦しんでいたときと同じ脳領域に反応がみられました(好ましく思っている人程ではない)が、男性では同じ領域に反応はみられませんでした。

男性では、むしろ脳の「報酬」と関連する部分に大きな反応がみられ、この反応は質問紙で把握した個人の「復讐心」と相関がみられました。

一般に、ワイドショーとかのゴシップネタは女性の方が喜ぶように思われますが、本研究の結果はそれとは違って、むしろ男性の方が嫌いな人の不幸を喜ぶという結果でした。

ところで、この研究のポイントは、最初の段階で好みの判定を行う際に、ゲームに対して公正(fair)に行うかずるく(unfair)行うかということで好みを分けさせた点にあると思います。

すなわち、男性の場合、公正でない(ずるい)行動に対する制裁の気持ちが女性よりも強く現れやすいということを反映していた可能性があります。

一方、女性の場合、その人がずるいことをしたかどうかという問題よりも、現実的に不幸な状態にあるということに対する興味(共感?)が強いのではないでしょうか?

したがって、今回の堀江社長の逮捕劇に関して、男性では堀江社長がずるいことをやったと思っている人では、特に「自業自得」「ざまあみろ」という感情が強く出現し、女性は堀江社長が何をやったかという点には興味なく、「ホリエモンどうなっちゃうの~」という点に強く興味を示すのではないかと考えられます(あくまでも上述の研究から導いた私見ですが…)。

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2種類のメタ分析

先週の金曜日の疫学セミナーはDr. Susan Duvalによるメタ分析(meta-analysis)についてのお話でした。
講演タイトルは
"IPD or not IPD: What is the question in meta-analysis"

メタ分析では既に公表されているいくつかの研究を結果を統合し要約統計量を算出することで、疾患のリスクや治療効果についての有益な情報を得ることができます。

例えば、塩分制限に関するメタ分析の論文(He-FJ, et al. Effect of modest salt reduction on blood pressure: a meta-analysis of randomized trials. Implications for public health. Journal of Human Hypertension. 2002)では、塩分制限に関する28の論文をメタ分析した結果、100mmol/日(食塩量で6g)の食塩制限による最大血圧値の予測変化量が高血圧者では、-7.1mmHg、正常血圧者では-3.6mmHgであることがわかりました。

しかしながら、このような既に公表された論文のみを解析するメタ分析は、publication bias(公表される論文は有意な効果がみられたものが多い)の影響を強く受ける可能性があります。

そこで、公表された論文だけでなく、実際に実施されている研究における個々のデータをまとめたメタ分析が行われるようになってきました。

今回の講演では、Dr. Duvalが実際に携わっている肥満と糖尿病発症に関する共同研究CODAプロジェクト(Collaborative study of Obesity and Diabetes in Adults)での経験をもとに、これまでのメタ分析(MAL)と個々のデータをまとめたメタ分析(MIPD)それぞれの特徴をお話されました。

MIPDの良い点としては、個々のデータを集めるため、情報量が多く、公表されていないデータも集められ、交絡因子や時間的な因子の影響も補正可能であることなど、研究データについえは様々な利点があります。

その一方で、数多くの共同研究者を募り、データを集め、フォーマットを統一し解析しなければならないという煩雑さも多くあります。今回のCODAプロジェクトでは、37の集団が研究に参加しましたが、MALを実施した場合に比べてMIPDでは費用が10倍、そして解析に要する時間も10倍多くかかったとのことでした。

金も時間もない日本人にとってはなかなかできない研究手法の一つなのではと思ってしまいます。

尤も、データの信頼性を増すためにこのような解析方法は今後増えてくると思います。最近行われたフィブリノーゲンと循環器疾患との関係についてメタ分析した論文でも、同じような手法がとられています。

Danesh J, et al.; Fibrinogen Studies Collaboration.
Plasma fibrinogen level and the risk of major cardiovascular diseases and nonvascular mortality: an individual participant meta-analysis.
JAMA. 2005 Oct 12;294:1799-809.

ところで、今回のCODAプロジェクトの結果では、肥満と糖尿病との関連についてはMALとMIPDでそう変わりはなかったとのことでした。

個人的には、肥満と糖尿病の関連のようにどの文献でも同じような方向の結果が得られるものでは、MALでもMIPDでもそう変わりがないのではないかと思います。ただ、その推測をたくさんの費用と労力をかけて実際に確かめることはとても大切なことだと思います。

最近、論文の捏造の話題が多くみられますが、そういう人にこそこうした地道な研究を経験してもらいたいものですね。


 


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起床直後は頭が働かない?

もうそろそろセンター試験ということで、受験生には大切な時期になってきました。
タイミングよく?徹夜明けと起床直後ではどちらが頭が働くかという研究結果が、1月11日の米国医師会雑誌に公表されました。

Effects of sleep inertia on cognition.
Wertz AT, Wright KP Jr, Ronda JM, Czeisler CA.
JAMA. 2006 Jan 11;295(2):163-4.

この研究では男性8人、女性1人を対象として、最初に3週間にわたり自宅で毎晩8時間の睡眠を取ってもらった後に、日中の計算能力を確認し、その後、抜き打ちで起床直後の計算能力について調査されました。

その結果、起床直後から10分間は重度の計算能力の低下がみられ、軽微な低下はその後2時間近くにわたってみられました。

次に、26時間にわたり徹夜してもらい、その直後にもう一度計算能力を調査した結果、起床直後の計算能力よりも徹夜明けの計算能力の方が高いことがわかりました。

このような起床直後の寝ぼけた脳は、酒に酔っている状態と同等であると考えられました。

実際問題として、起床直後に試験を受ける人はまずいないと思いますので、少なくとも起床後2時間以降に試験を受けるようにすれば問題ないと思います(これは従来からよく言われている通りですね)。

むしろ、実際に問題になると思われるのは、救急当直をしている医師の場合ではないでしょうか?

というのは、夜間当直をしている医師の場合、患者さんがこなければ仮眠を取ることも多いと思います。そんな時、緊急で起こされ、患者さんを診なくてはならなくなった場合、もしかしたら頭はまだしっかり働いていないまま、診察を行っている場合があるかもしれないということです(思い当たるふしがある医師も多いのでは?)

もちろん、徹夜明けの脳の方が働いていると言っても、今回の研究はあくまでも26時間後の計算能力を調べたものということを考慮する必要があります。実際には徹夜明けで通常の勤務をしている人の場合、36時間以上眠らない状態が続いている場合もあるわけですから、そうした状態の計算能力もみる必要があるでしょう。

個人的な興味としては、朝に弱い人(自覚的に寝起きが悪い人)と朝に強い人(自覚的に目覚めがいい人)で起床直後の計算能力を比較してみたいです。

朝に弱い人の脳は起床後どの位の時間寝ぼけた状態にあるのかとか、
血圧が低い人の方が起床直後の寝ぼけた時間が長くなるのかどうかを調べてみたいものです。

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アレルギーとがんとの関係

2月が近づいてくると、早い人ではもう花粉症の症状が出てくる人もいるようです。

それでは花粉症の人達の生命予後はどうなっているのでしょうか?
花粉症の人は長生き?それともがんになりやすい?

気になる人は国際疫学雑誌(International Journal of Epidemiology)の1月4日号(オンライン版)に、アレルギーとがんとの関係についての総説が発表されましたので、それをみるとよいでしょう。

An overview of the association between allergy and cancer.
Turner MC, Chen Y, Krewski D, Ghadirian P.
Int J Cancer. 2006 Jan 4;

この総説では、これまで公表された1966年から2005年までの文献により喘息、アトピー性皮膚炎、および花粉症とがんとの関係を調べました。

その結果、がん全体でみると、喘息と花粉症の既往を持つ人はそうでない人よりもがんになりにくいという報告はあるものの、それを否定する論文もあり一定の結果が得られませんでした。

アレルギーとがんとの関係を部位別にみると、気管支喘息と肺がんとの関連をみた最近のメタ分析の結果から、非喫煙者で気管支喘息を持っている人は非喫煙者で喘息がない人に比べて1.8倍がんになるリスクが高いことが示されました。

それとは逆に、アトピーの人はそうでない人に比べて、すい臓がんのリスクが約30%低く、同様にアレルギーを持っている人はそうでない人よりもすい臓がんのリスクが20%低くなることが、最近のメタ分析により示されました。ただし、気管支喘息とすい臓がんとの関連はみられませんでした。

さらに、アレルギーを持っている人は脳腫瘍にもなりにくいとの報告もありました。

アレルギー疾患は免疫系の異常反応により起こる疾患ですが、がんもまたその発症に免疫系が関与していることが知られています。

したがって、両者にはなんらかの関連があっても不思議はないものと考えられます。

しかしながら、これまでの疫学研究においてはアレルギー疾患の有無、アトピーの有無、花粉症の有無等ほとんどが参加者の自己申告によるものです。

客観的なアレルギーの診断による大規模疫学研究の結果が待たれるところです。

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メタボリック・シンドロームは本当に存在するのか?

今日は、月に1度の文献抄読会の日でした。
本日のテーマは「メタボリック・シンドロームは本当に存在するのか?」
この記事はDose the Metabolic Syndrome Really Exist?という題で米国医師会雑誌(JAMA)に寄稿されたものです。

記事の元になっているのは、米国心臓協会(American Heart Association; AHA)が昨年9月にメタボリック・シンドロームについての診断基準を発表したのに対し、米国糖尿病協会(American Diabetes Association; ADA)と欧州糖尿病協会(European Association for hte Study of Diabetes; EASD)が合同でそれに真っ向から対立するように、メタボリック・シンドロームについての疑問を公表したしたことにあります。

米国心臓協会の診断基準については以前のこのブログで説明しています。

ADAとEASDの主張はDiabetes Careの9月号に掲載されています。

The metabolic syndrome: time for a critical appraisal: joint statement from the American Diabetes Association and the European Association for the Study of Diabetes.
Kahn R, Buse J, Ferrannini E, Stern M; American Diabetes Association; European Association for the Study of Diabetes.
Diabetes Care. 2005 Sep;28(9):2289-304.

この総説では、メタボリック・シンドロームに関する過去の論文をレビューした結果、メタボリック・シンドロームの概念にはいくつもの問題があることが述べられています。

具体的に問題点をいくつか挙げてみると

1)メタボリック・シンドロームの定義がまちまちである(これは以前のブログでも述べたところです)。

2)病因論としてのインスリン抵抗性の役割が確実ではない。
(元々インスリン抵抗性を示すものとしてメタボリック・シンドロームが提唱されたのにも関わらず、メタボリック・シンドロームの基準と実際のインスリン抵抗性が一致していない)

3)メタボリック・シンドロームの診断基準である高血圧、肥満、高トリグリセライド、高インスリン等はそれぞれ単独に循環器疾患の危険因子であり、メタボリック・シンドロームそのものの危険度がこれらの危険因子の危険度の総和を超えるものではない。
(あえてメタボリック・シンドロームを定義しなくても個々の危険因子の評価で十分)

4)メタボリック・シンドロームに対する特異的な治療法があるわけではない。
(結局、個々の危険因子に対処するだけである)

特に、3)に関しては下記の文献が参考になるでしょう。

The metabolic syndrome and 11-year risk of incident cardiovascular disease in the atherosclerosis risk in communities study.
McNeill AM, Rosamond WD, Girman CJ, Golden SH, Schmidt MI, East HE, Ballantyne CM, Heiss G.
Diabetes Care. 2005 Feb;28(2):385-90.

この文献では、フラミンガム・リスクスコアとメタボリック・シンドロームの両者について冠動脈疾患の予測能を比較した結果、両者でほとんど予測能はほとんど変わりなく、メタボリック・シンドロームを診断する有用性はそれ程大きくないことが示されました。

確かに、メタボリック・シンドロームそのものが危険である(個々の危険因子の危険性をはるかに超えるものである)という証明がされないと、診断意義は少ないような感じがします。

しかしながら、個人的にはメタボリック・シンドロームという名前そのものに意義があると思っています。

例えば、肥満、トリグリセライドが150mg/dl以上、血圧が135mmHgという人は健診でもよくみかけます。この人に、「あなたは太っていて、しかも薬を飲むほどではないですがトリグリセライドと血圧がやや高めですよ」なんてことを話しても、ほとんどの人は危機感をもたないと思います。

ところが、同じ人に「あなたはメタボリック・シンドロームです!」と話すと、なんか大変な病気になってしまったのではないかという危機感をもってもらえる可能性があります。

生活習慣改善のための動機付けになる!ということでは有効だと思いますので、さらに病態としての意義がはっきりしてくればもっと有用性が増すと思います。

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ヨガと運動、どちらが慢性腰痛に有効?

米国ではヨガ教室が盛んです。TARGETなどのスーパーマーケットに出かけても、運動用具の1区画にはヨガコーナーがあります。そんなヨガの効果を検討した論文が米国内科雑誌Annals Internal Medicineの12月20日号に掲載されました。

Comparing yoga, exercise, and a self-care book for chronic low back pain: a randomized, controlled trial.
Sherman KJ, Cherkin DC, Erro J, Miglioretti DL, Deyo RA.
Ann Intern Med. 2005 Dec 20;143(12):849-56.

この研究では、慢性腰痛を抱える101人を対象にして、ヨガを実施する群、通常の運動療法を実施する群、腰痛に関するセルフケアの本のみを送る群の3群に無作為に分け、12週間の介入を行いました。

ヨガはviniyogaという治療を目的とした比較的簡単なものを1回75分12週間実施しました。内容は腰痛を治療ターゲットにしたリラクゼーション、筋肉のストレッチ、呼吸法など17個のポーズのうち毎回いくつかを実施しました。

運動療法はヨガと同様に1回75分12週間実施しました。内容はエアロビクスやストレッチなどでした。

セルフケア群は腰痛に関するハンドブックのコピーを自宅に送ってもらい、ストレッチや生活上の注意を学びました。

12週後腰痛に関連した身体機能と痛みについての評価を実施した結果、ヨガを実施した群、運動療法群ともに身体機能の改善がみられましたが、特にヨガを実施した群はセルフケア群や運動療法群に比べて身体機能がより改善していました。痛みに関しては治療法による改善に差はみられませんでした。また、26週後にも同様の評価を行った結果、ヨガを実施した群のみがセルフケア群よりも身体機能が改善していました。

さらに、ヨガを実施した群では腰痛治療のための服薬率も低下していました。

以上よりヨガは慢性腰痛に有効であり、その効果は通常の運動療法よりも大きいものと考えられました。

問題点としては、まだヨガが慢性腰痛に有効であるというメカニズムがはっきりしないことやどのようなタイプの腰痛に有効かが明らかにされていないことなどが考えられます。

また、今回のヨガの指導は一人のインストラクターが実施したのですが、この方は本も出してるベテランのインストラクターのようです。したがって、どのインストラクターに教わってもヨガの効果がみられるということは言い切れないと思います。

自分の場合、日本にいる時にヨガのポーズをいくつか教えてもらったり、こちらでも大学のヨガ教室に参加したりして体験していますが、確かに心身のリフレッシュにつながるような感じがします(ただ慢性腰痛持ちではないので、その効果の程は自覚できていないのですが…)

現在米国では腰痛改善のために100万人のヨガを実施しているそうです。慢性腰痛の場合、これという有効な治療法がないため、このような科学的根拠にサポートされて、益々ヨガ愛好者が増えるかもしれませんね。

ところで、Bikramおよびvinyasaのようなスタイルのヨガはヨガに慣れていない腰痛患者には強すぎる可能性があり、Iyengarのような他のスタイルのヨガを実施したほうが良い場合もあるということが考察に書かれています。

自分にはBikram、vinyasa、そしてIyengarの区別がつかないのですが、誰か知っている人がいたら是非教えてもらいたいものです。

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簡単に飲酒量を減らす方法

飲みすぎは身体に悪いことは誰でも知っていると思います。しかしながら、飲みすぎを自分で抑えようと思っていても難しいという人は多いでしょう。

そんな人にピッタリの節酒方法がみつかりました。やり方は簡単!

グラスの種類を変えるだけです。

英国医学雑誌British Medical Journal (BMJ)の12月24日号に掲載されたこの論文では、細長いグラスに酒を注ぐよりも、太くて短いグラスに酒を注ぐほうが注ぐ量が20~30%増えてしまうことが明らかになりました。

Shape of glass and amount of alcohol poured: comparative study of effect of practice and concentration.
Wansink B, van Ittersum K.
BMJ. 2005 Dec 24;331(7531):1512-4.

この研究では198人の大学生と86人のプロのバーテンダーを対象として、同じ量(355ml)であるが形が違う2種類のグラス(細長いグラス、太くて短いグラス)を用意し、1.5オンス(44.3ml)の量を注いでもらうという実験を行いました。大学生については実験前に標準的なグラスで44.3mlを注ぐ練習を10回繰り返した後に実験を行いました。

その結果、大学生では実際注いだ量が細長いグラスで44.7mlだったのに対し、太くて短いグラスでは46.1mlでした。また、プロのバーテンダーでも同様に細長いグラスでは46.4mlであったのに対し、太くて短いグラスでは54.6mlと20%以上多く太くて短いグラスに注いでしまうことがわかりました。

また、注意深く注ぐ場合と、そうでない場合はそうでない場合の方が多く注ぎすぎてしまい、特にそれは太くて短いグラスで起こりやすいこともわかりました。

一方、お酒の種類(ウイスキー、ラム、ウォッカ、ジン)の影響はみられませんでした。

この研究からは2つの点で教えられることがあります。

1つ目は、例えプロのバーテンダーであっても、お酒を注ぐ量はグラスの形で違ってしまうことです。まして、我々素人が無造作にグラスに酒を注ごうものならグラスの種類によって大きな差が出てしまうのは明白でしょう。

普段、太くて短いグラスを使っている人は、例えば2杯のお酒を飲んだつもりでも、実は細くて長いグラス2.5杯分に相当するということです。ということは、逆に太くて短いグラスを細長いグラスに換えるだけでお酒の量を減らすことが可能になるかもしれません(もちろん本人には内緒でグラスだけを換えてあげるほうがよいでしょう)。

2つ目は、疫学調査を実施する上で、飲酒量をグラスで何杯飲んだかを確認する場合があります。その時、グラスの種類によって本人が実際に飲んでいる量と自己申告した量が異なる場合があるということです。

正確に飲酒量を自己申告してもらうのは普段から難しいのですが、正確な飲酒量を把握するためには、今後はいろんな種類のグラスを用意して、このグラスで何杯飲んだというような調査方法を考えて行かなければならないでしょう。

ところで、今回の研究結果を一番応用できるのは参加したバーテンダーの皆さんではないでしょうか?この実験に参加した後、バーテンダーが働いている店のグラスがみんな細長くなったかどうか、そっちの結果が知りたいところです。

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脂肪を減らしても体重は減らない?

年末年始に食べ過ぎて体重が増えたという人も多いと思います。
少し油物を控えなければ!と思っている方にピッタリの論文が出ました。
米国医師会雑誌(JAMA)の1月4日号に低脂肪食による減量の長期間介入研究の成果が発表されました。

Low-fat dietary pattern and weight change over 7 years:
the Women's Health Initiative Dietary Modification Trial.
Howard BV, Manson JE, Stefanick ML, Beresford SA, Frank G, Jones B,Rodabough RJ, Snetselaar L, Thomson C, Tinker L, Vitolins M, Prentice R.
JAMA. 2006 Jan 4;295(1):39-49.

この研究では、48835人の閉経後女性を対象として無作為に介入群(19541人)と対照群(29294人)に分け、低脂肪食ダイエットによる減量効果を平均7.5年間経過観察しました。

介入群は脂肪の摂取を全体の20%以下に減らし、野菜や穀物の摂取量を増やすように栄養士の指導を受けました。対照群は栄養指導の本のみが配られました。

介入1年後、介入群では平均2.2kgの有意な体重減少がみられましたが、対照群では体重の変化はみられませんでした。介入群と対照群との体重差は介入1年後は1.9kgでしたが、7.5年後には0.4kgにその差は縮まりました(実際の介入は1年間実施し、その後は年に4回のフォローアップを行っています)。

体重減少が顕著だったのは人種では白人、また脂肪摂取量が減った人、野菜を食べる頻度が増えた人ではより体重減少がみられました。

アトキンス博士の低炭水化物ダイエットが流行っていた米国ではありますが、低脂肪食にすると逆に摂取炭水化物の頻度が多くなります。今回の結果は、炭水化物の摂取量が増えたとしても、体重は増えることはない(むしろちょっとは減る)というメッセージを伝えたいのだと思います。

アトキンス博士の低炭水化物ダイエットについては、1年程度の短期間の成果は出ていますが、長期的なフォローアップ検査が実施されていません。こっちの結果も興味が湧きますね。

今回の介入は脂肪や野菜の摂取頻度については介入を行っていますが、摂取カロリーについては特に指導していないところがポイントです。これなら指導も労力が少し減らせるでしょうか。

結局、せっかくの食事療法も継続しなけらば元の体重に戻ってしまう可能性があると言えるでしょうが、逆に1年間頑張れば、7.5年後の体重も増えることがないとも言えるでしょう。

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飲酒は女性の糖尿病を予防する?

お正月といえば新年会。何かと酒を飲む機会が多い時期が続いています。
糖尿病専門誌Diabetes Careの12月28日号では飲酒が女性の糖尿病を予防する働きがあることが報告されました。

Alcohol consumption and risk of type 2 diabetes among older women.
Beulens JW, Stolky RP, van der Schouw YT, Grobbee DE, Hendriks HF, Bots ML.
Diabetes Care. 2005 Dec;28(12):2933-8.

この研究では、49~70歳の女性16330人を対象として、飲酒量と2型糖尿病発症との関連について平均6.2年間経過観察しました。

経過観察中760人の新規糖尿病が登録されましたが、飲酒量と糖尿病発症との間には負の関連がみられました。飲酒しない人に比べた糖尿病発症の危険度は、週当たりのアルコールを5~30g飲む人で14%、30~70g飲む人で34%、70~140g飲む人で9%、140~210g飲む人で36%、そして210g以上飲む人で31%低下していました。

尚、飲酒の種類は糖尿病の発症に影響しませんでした。

毎日ビールを大瓶1本もしくはワインをグラス2杯(180cc)飲めば1週間の摂取アルコール量が約160gになります。この程度であればむしろ飲酒は糖尿病を予防するという結果です。

ただし、これまでの結果で女性で毎日ワイン換算でをグラス1杯(90cc)以上飲むと、乳がんのリスクが上昇することが既に報告されています。

Alcohol and postmenopausal breast cancer risk defined by estrogen and progesterone receptor status: a prospective cohort study.
Suzuki R, Ye W, Rylander-Rudqvist T, Saji S, Colditz GA, Wolk A.
J Natl Cancer Inst. 2005 Nov 2;97(21):1601-8.

前述の結果では週にワイン4杯程度でも糖尿病のリスクは減少しているようですので、無理に飲むよりも週末に楽しむ程度で十分だと思われます。

血液さらさらを目指して毎日赤ワインを飲むようにしているなんて話も聞きますが、血液がさらさらで心臓病は予防できてもがんの危険度が増したら一緒ですよね。

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二日酔いの特効薬

アスピリン、バナナ、キャベツ、コーヒー、卵、運動、新鮮な空気、果汁、緑茶、熱い風呂、ミルクセーキ、ピザ、睡眠、水…

これらのキーワードはすべて二日酔いの治療方法に使われているもののようです。

忘年会、クリスマスと何かとイベントが多く、お酒の量も増える時期ですが、British Medical Journal (BMJ)誌の12月24日号にタイミングよく、二日酔いの予防、治療に有効な方法について系統的レビューを行った結果が発表されました。

Interventions for preventing or treating alcohol hangover: systematic review of randomised controlled trials
Max H Pittler, Joris C Verster, Edzard Ernst
BMJ 2005;331:1515-1518 (24 December), doi:10.1136/bmj.331.7531.1515

この研究では、8つの二日酔いの予防・治療に関する無作為試験の結果を系統的にレビューし、どの方法が最も二日酔いに効果があるかということをみました。

無作為試験として抽出された8つの文献のうち4つはサプリメントに関するもので、使われたサプリメントは Borago officinalis (ルチヂサからのγリノレン酸), Cynara scolymus (チョウセンアザミ), Opuntia ficus-indica (西洋ナシ), yeast based preparationでした。その結果、γリノレン酸を服用した場合、頭痛、倦怠感の症状が、乾燥イーストを服用した場合は気分不快などの症状が有意に軽快しました。

残る4つは慣習的に用いられていた薬などで、具体的にはtropisetron, propranolol(βブロッカー), tolfenamic acid(トルフェナム酸), fructose (果糖)でした。この中ではトルフェナム酸を用いた場合のみ二日酔いの吐気、頭痛、口渇などの症状が軽快しましたが、他の3つの効果は明らかではありませんでした。

しかしながら、効果のあった研究もすべて単独の報告であり、しかも対象者数が少ない、使用した質問紙の妥当性の問題などを含んでいました。したがって、二日酔いに確実に効果があるという方法は明らかではないと結論付けられました。

ということで、この論文の結論でも著者らが述べていますが、最良の二日酔いの予防方法は何より酒を飲まないか、飲みすぎないということだそうです。ってあ・た・り・ま・え!

結構期待を裏切られました…

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胃潰瘍の薬で感染が増える?

クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)という名の細菌がいます。大腸に常在する菌の一種で、抗生剤の長期投与後の偽膜性腸炎(下痢や発熱を引き起こす)の原因菌になることで有名です。

どうもこの細菌による腸炎が近年増えてきているらしく、さらにその理由の一つとしてH2ブロッカーやプロトンポンプインヒビターなどの胃・十二指腸潰瘍の薬の服用があるのではないかという話です。

この研究は米国医師会雑誌(JAMA)の12月21日号に発表されました。

Use of Gastric Acid-Suppressive Agents and the Risk of Community-Acquired Clostridium difficile-Associated Disease
Sandra Dial; J. A. C. Delaney; Alan N. Barkun; Samy Suissa
JAMA 2005;294 2989-2995

英国の2つの地域において行ったこの研究では、1994年から2004年かけてClostridium difficileによる感染例の発症頻度を見た結果、1994年は10万人に1人だった発症頻度が2004年には10万人に22人となんと22倍にもなっていました。

一方、主な原因として知られる抗生剤の服用率をみると1994年から2004年にかけて漸減していました。また、プロトンポンプインヒビターの服用率はこの20年間で3~4倍増えていました。

地域住民において過去1年間に入院歴のないClostridium difficile感染例1233例に対し、1:10の割合で対照を抽出して比較したところ、Clostridium difficile感染例は対照者に比べて、炎症性腸疾患に罹患している(3.6倍)、腎疾患がある(3.7倍)、がんに罹患している(1.9倍)、抗生剤を服用している(3.1倍)場合が多いことに加え、胃・十二指腸潰瘍の薬であるプロトンポンプインヒビターを服用している(2.9倍)、H2ブロッカーを服用している(2.0倍)非ステロイド系坑炎症剤を服用している(1.3倍)ことも多くみられました。

意外なこと?に胃潰瘍の原因菌であるヘリコバクター・ピロリの感染はClostridium difficile感染には影響していませんでした。

これまで、Clostridium difficileによる腸炎(下痢)というと抗生剤ということがまず頭に浮かんでいましたが、今後は腎疾患や胃潰瘍の薬等も原因として考えていかなければならないということでしょう。

この研究は地域住民を対象として実施されいることから、この結果は公衆衛生学的に重要と思いますが、Clostridium difficile感染率の上昇はあまりにも著しく、これには診断精度の上昇などの要因が働いていることも予想されます。

今後もこの傾向が続くのか、そして、胃・十二指腸潰瘍の治療者が多いわが国ではどうなのか、これからも注目すべき話題でしょう。


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一気飲みは心臓にも悪い?

昔から酒は百薬の長などと言われますように、少量の飲酒は心筋梗塞や脳梗塞に予防的に働くことはよく知られていることと思います。

ところが、例えそれ程多い量ではなくても、一気飲みに代表されるように、急にお酒を飲むのは心臓に悪いことが米国循環器雑誌Circulationの12月20日号で発表されました。

Binge Drinking and Mortality After Acute Myocardial Infarction
Kenneth J. Mukamal, MD; Malcolm Maclure, ScD; James E. Muller, MD; et al.
Circulation. 2005;112:3839-3845

この研究では、45病院1935人の心筋梗塞入院患者を対象に、普段の飲酒量とともに、1~2時間で3杯以上のアルコールを飲むかどうかの調査を行い、その後平均3.8年間の死亡率をみました。

その結果、普段1~2時間で3杯以上のアルコールを飲む人(平均週に1回程度)は、1919人中250人であり、一気飲みをしない飲酒者に比べてその後の死亡率が2倍でした。

また、一気飲みをする人は、例え飲酒量が少なくても、やはり死亡率が高く、さらに、お酒の種類ではワインを飲む人が死亡のリスクが高め(2.7倍)でしたが、統計的にはお酒の種類の相互作用はみられませんでした。

一方、一気飲みをしない飲酒と死亡との間には負の関連がみられました。

したがって、飲酒は心筋梗塞後の死亡のリスクを減少させますが、その飲み方によっては逆にリスクを上昇させる場合もあるということになるでしょう。

この研究では、一気飲みの有無について病院へ入院する前の状態を聴取しているため、退院後の飲酒パターンを本当に反映しているかどうかは明らかではありません。しかしながら、過去の研究では、こうした患者さんの飲酒パターンは入院前も後もそれ程変わらないことは報告されています。

一気飲みは何故身体に悪いのか?ということについは、心臓に負担をかけることや、不整脈が起こりやすくなることが指摘されています。

一気飲みは大学生などの急性アルコール中毒の原因になることが多いとして問題になっていますが、週に1度、1~2時間でワイン3杯って、一般の人でも結構ありえることですよね。

やっぱり飲酒は食事とともに、ゆっくりお話しながらがお勧めなわけですね。週に1回の宴会でも飲むスピードには気をつけましょう。

(もしかして、単に食事も酒もせっかちな人がよくないだけかもしれませんが…)


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大腸がんのリスクを下げるのは食物繊維そのものではない

食物繊維を多く摂ることが大腸がんを予防するのではないか、ということがずいぶん前から言われてきました。これを支持する論文があったり否定する論文があったり、今なお論議が続いています。

そうした中、米国医師会雑誌(JAMA)から13の前向き研究を合わせて大腸がんと食物繊維との関連をみた研究が報告されました。

Dietary Fiber Intake and Risk of Colorectal Cancer A Pooled Analysis of Prospective Cohort Studies
Yikyung Park, ScD; David J. Hunter, MB, BS; Donna Spiegelman, ScD; Leif Bergkvist, MD; et al.
JAMA. 2005;294:2849-2857.

この研究では、食事とがんとの関係をみた13の研究に参加した男女725,628人を対象として食事中の食物繊維と大腸がんの発症との関連を6~20年経過観察しました。

経過観察中、8081例の大腸がんが発症し、食物繊維を多く摂取した人はそうでない人に比べて大腸がんの年齢調整危険度が16%減少していました。

しかしながら、他の危険因子を調整した結果、食物繊維と大腸がんとの有意な関連は消失しました。食物繊維を1日あたり10-15g摂っている人に比べて、10g未満の人は、多変量調整後も18%大腸がんのリスクが高くなっていましたが、30g以上摂ればもっとよいかという結果はみられませんでした。

シリアル、果物、野菜のどの食品から食物繊維をとっても、同様に年齢調整後の大腸がんのリスクは減少していましたが、他の危険因子を調整すると、有意なリスクの減少は消失しました。

以上の結果をみますと、食物繊維を多く摂る食生活は大腸がんのリスクを減らす可能性がありますが、それは食物繊維そのものの効果というよりは、それ以外の因子が影響している可能性があると思われます。

したがって、食物繊維のみをサプリメントで摂っても大腸がんのリスクは減少しない可能性が高いといえるでしょう。

それにしても72万人以上の人を解析してもこの結果。食物繊維に過剰な期待は持たない方がよいのでしょうか?


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寿命を6.6年延ばす食事

9月から続いたFolsom教授の疫学講義も昨日で終了しました。
最後の授業内容は循環器疾患の予防戦略で最も効率の良いものは、ということについての文献抄読および討論会でした。

そこで出た論文の中から面白いものを一つ紹介しましょう。

The Polymeal: a more natural, safer, and probably tastier (than the Polypill) strategy to reduce cardiovascular disease by more than 75%.
Franco OH, Bonneux L, de Laet C, Peeters A, Steyerberg EW, Mackenbach JP.
BMJ. 2004 Dec 18;329(7480):1447-50. Review.

ちょうど1年前にBritish Medical Journal (BMJ)に発表されたこの論文では、なんと循環器疾患を75%以上減らすための食事方法について書かれています。

これまで無作為試験等でその効果が確認されている食事について検討した結果、1日150mlのワインは循環器疾患を32%減らし、同様に週に4回(1回につき114g)の魚摂取は14%、1日100gのダークチョコレートは21%、1日400gの果物・野菜の摂取は21%、1日2.7gの生のガーリックは25%、1日68gのアーモンドは12.5%循環器疾患を減少させ、これらの食事を組み合わせることで、合計76%(95%信頼区間63-84%)も循環器疾患を減少させることができるということです。

この食事を50歳の時から始めると、男性では寿命が6.6年延び、循環器疾患にかからない期間が9.0年延びると計算されました。一方、女性ではそれぞれ4.8年、8.1年でした。女性は男性に比べて元々寿命も長いし、循環器疾患にもかかりにくいので、食事によって受ける利益も少ないということでしょう。

もちろんこの数字は理論上のもので、実際にこれだけ寿命が延びるかどうかということについては、まだ無作為試験が行われていない(行われることはない!?)ので明らかではありません。

さて、論文が公表されてから1年が過ぎていますが、残念ながらこの食事療法は全然広まっていません!

実際、この食事を継続するのは難しいでしょう。特に米国人にとっては魚摂取を週4回というのはかなり難しいのではないでしょうか?日本人だったら結構その気になればできるかも?しれませんね。

ところで、薬による治療には副作用がつきものですが、この食事療法には副作用はないのでしょうか?

考察の中で、研究者らは述べているのは、

この食事療法に他のお酒を組み合わせるのはよくないということ(すでにワインが入っていますから、他に飲んだら飲みすぎだということ)。

もちろん、この食事のあとに、車の運転や集中力を必要とするような仕事は避けること(これもお酒のため)

さらに、この食事の後に、ロマンチックなデートを予定している場合は、この食事をお勧めできないと書いてありました(もちろんガーリックのため、きっと相手に文句を言われるでしょう)。

最後の部分は科学的論文には珍しいユーモアあふれる表現ですね!下記、原文からの抜粋をご覧あれ!

Moreover, considering the disturbing adverse effects of garlic, we do not recommend taking the Polymeal before a romantic rendezvous, unless the partner also complies with the Polymeal.

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サプリメントでがん予防?

現在、いろいろな種類のサプリメントが世に出回っています。がん予防に有効と宣伝されているものも多いと思いますが、それらに科学的根拠はあるのでしょうか?

米国疫学雑誌(American Journal of Epidemiology)では、食事により摂取されたマグネシウムと大腸がんとの関連が報告されました。

Magnesium Intake and Reduced Risk of Colon Cancer in a Prospective Study of Women.
Folsom AR, Hong CP.
Am J Epidemiol. 2005 Nov 30; [Epub ahead of print]

この研究では、55~69歳35196人の女性を17年以上経過観察しました。観察期間中1112例の大腸がんが確認されましたが、摂取マグネシウムの量が下位20%の人に比べて、上位20%の人では、大腸がんになるリスクが20%減少していました。また、マグネシウム摂取と大腸がんとの関連は、直腸がんよりも結腸がんで強くみられました。これらの関連は年齢、摂取エネルギー量、他の栄養素の影響を調整した後もみられており、比較的信頼性の高い結果と考えられます。

一方、米国がん専門誌(Journal of National Cancer Institute)には、それとは逆に、カルシウムが前立腺がんに関与する可能性が報告されました。

Prospective Studies of Dairy Product and Calcium Intakes and Prostate Cancer Risk: A Meta-Analysis.
Gao X, Lavalley MP, Tucker KL.
J Natl Cancer Inst. 2005 Dec 7;97(23):1768-1777.

この研究では、12本の乳製品、カルシウム摂取と前立腺がんとの関係をみた論文をメタ分析した結果、よく乳製品やカルシウムを摂取している男性ほど前立腺がんになりやすいことがわかりました。

最も多く乳製品を摂取した群では、摂取しない群に比べて33%前立腺がんになりやすく、同様にカルシウムを多く摂取した群は摂取しない群に比べて46%前立腺がんになるリスクが高くみられました。

乳製品を多く摂ったからといって、前立腺がんになるリスクはそれほど多いものではないと考えられますが、カルシウムがリスクを高める方向に関与している結果がみられた点でインパクトが大きい論文だと思います。

というのは、マグネシウム、カルシウムともに、多く摂取すると高血圧を予防し、心筋梗塞や脳卒中などの循環器系疾患の予防には有効であることが知られています。

したがって、がんと循環器系疾患でそのリスクの方向が異なる結果がでると、指導する立場としては指導しにくくなると可能性があります。

前立腺がんは日本人に比べて欧米人で多く発症することが知られています。となると、いわゆる乳製品を多く取る欧米型の食生活の方がむしろ前立腺がんのリスクを高めているとも考えられます。

とりあえず、女性においては、これまで通り乳製品、カルシウムの摂取は多くしておいても大丈夫だと思われます。(下記の文献でも乳製品と乳がんとの関連はみられないようですし…)

Intake of dairy products, calcium, and vitamin d and risk of breast cancer.
Shin MH, Holmes MD, Hankinson SE, Wu K, Colditz GA, Willett WC.
J Natl Cancer Inst. 2002 Sep 4;94(17):1301-11.

いずれにせよ、サプリメントでがんを予防できたという論文はほとんどありませんので、がん予防のためにサプリメントという考えはとりあえず避けておいた方が無難だと思います。


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恋愛中であるという客観的診断は可能か?

クリスマスも近くなると、にわかにカップルが増えるといわれます。クリスマスを一人で過ごしたくないという気持ちからでしょうか。

そんなにわかカップルの相手が本当に自分に夢中であるかどうか、科学的に調べることができるかもしれません。

イタリアのPavia大学の研究者たちが、恋に落ちたばかりの人々とそうでない人の違いをみた結果、ドキドキするとか多幸感に満ちるなどの恋愛の感情は神経成長因子(NGF;nerve growth factor )として知られる分子によって引き起こされる可能性があることを報告しました。

Raised plasma nerve growth factor levels associated with early-stage romantic love.
Emanuele E, Politi P, Bianchi M, Minoretti P, Bertona M, Geroldi D.
Psychoneuroendocrinology. 2005 Nov 9; [Epub ahead of print]

この研究では、現在熱愛中の群58人と長期間のパートナーがいる群58人、および独身で恋愛中でない群58人において血液中の神経成長因子(NGF)を測定しました。

その結果、熱愛中の人達の平均NGF値が227pg/mlだったのに対し、長期間パートナーがいる人では123pg/ml、独身の人では149pg/mlであり、熱愛中の人でより高いレベルのNGFが検出されました。

なぜNGFが熱愛中の人のみで高くなるかは明らかではありませんが、NGF値と恋愛中の情熱量を測定するthe passionate love scale (PLS)の得点(こんな質問紙があったことにびっくり!)との間にはきれいな正の相関があることから、このNGFが恋愛中の症状(?)になんらかの影響を及ぼしていることが推測されています。

ちなみに、この質問紙「○○さんがいなくなったら、どうしようもなく悲しくなる」とか「○○さんは、私にとって最高の恋愛相手である」とか、聞いている方も恥ずかしくなるような質問が並んでいるようです。

また、不安やうつの人でもドキドキ感等の症状はあると考えられますが、これらの得点とNGF値との関連はみられず、NGF値は恋愛中の症状にのみ関連していたとのことです。

ところで、長期間パートナーがいる人は独身の人よりもNGF値が低いんですよねぇ。これって、倦怠期ってことでしょうか?もうドキドキもしないのかな。

さらに、熱愛中の群58人中、39人は1~2年後も同じ人と付き合っていたとのことですが、この人達に同じ検査をしたところ、PLSの得点は有意に下がり、しかもNGF値にいたっては227pg/mlから125pg/mlまで減少してしまったとのこと。おまけに、この時点ではPLSの得点とNGF値の相関はみられなくなっていました。

結局のところ熱愛は1~2年で終焉を迎えるということでしょうか?

もちろん、あくまでもこれらの結果は平均値を比較しているだけですので、中には2年以上たってもNGF値を高く保っていらっしゃる方もいるとは思います。

世の中には「恋多き女」などと呼ばれる人も多いとは思いますが、こうした人はNGF値を高く保とうとする生体システムが働いているのかもしれません。

また、この研究は、恋多きイタリア人を対象にしてされたことがポイントだと思います。日本人が対象だったらこのようにきれいな結果が出たかどうか…

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閉経の原因は人種によって違う?

今日の疫学セミナーはPamela Schreiner准教授による閉経に関する人種差についてのお話でした。
講演タイトルは

Ethnic Differences in Self-Reported Menstrual Status among Middle-aged Women: The Multiethnic Study of Atherosclerosis (MESA)

The Multiethnic Study of Atherosclerosis (MESA)は白人、黒人、ヒスパニック系、アジア人(中国人)を対象とした循環器系疾患の前向き研究で、70億円以上の予算をもとに動脈硬化の人種差の要因等を検討しています。

今回、自然閉経、手術による閉経(子宮摘出)、手術による閉経(卵巣摘出)、閉経期、閉経前に分けて人種差を検討した結果、最も自然閉経が早いのはヒスパニック系で(平均48.8歳)、遅いのは中国人でした(平均50.1歳)。

驚いたことに、黒人の半分以上(約53%)の閉経の原因は手術によるものであり、中国人の21.4%に比べると実に倍以上の割合でした。

日本人ではどの位の頻度で手術が行われているかは確かではありませんが、閉経の原因としてはおそらく中国人の頻度よりも低いくらいではないかと思います。

ではなぜ黒人で手術による閉経が多いのか?

今回のセミナーではこれについては言及されていませんでした。

過去の文献をちょっと調べてみると、

Powell LH, Meyer P, Weiss G, Matthews KA, Santoro N, Randolph JF Jr, Schocken M, Skurnick J, et al. Ethnic differences in past hysterectomy for benign conditions.
Womens Health Issues. 2005 Jul-Aug;15(4):179-86.

上記の論文では、黒人の良性腫瘍による子宮摘出の割合が白人の1.66倍であることが示されています。

また、別の論文では、良性腫瘍の代表格である子宮筋腫の原因として、肥満や高血圧が指摘されています。

Wise LA, Palmer JR, Spiegelman D, Harlow BL, Stewart EA, Adams-Campbell LL, Rosenberg L.
Influence of body size and body fat distribution on risk of uterine leiomyomata in U.S. black women.
Epidemiology. 2005 May;16(3):346-54.

Boynton-Jarrett R, Rich-Edwards J, Malspeis S, Missmer SA, Wright R.
A prospective study of hypertension and risk of uterine leiomyomata.
Am J Epidemiol. 2005 Apr 1;161(7):628-38.

黒人は他の人種に比べて、肥満、高血圧の割合ともに高く、それが子宮筋腫の頻度を増やして、子宮摘出が多くなっているのかもしれません。また、多産であることが子宮頸がんのリスクを高めている可能性もあると思われます。

一方、中国人で閉経年齢が遅いのはなぜでしょうか?
日本人の平均閉経年齢は51歳との報告もあり、アジア人としてまとめて考えてもよいかもしれません。

会場からは魚摂取との関連は?という質問が出されていましたが、
子宮筋腫のリスクと考えられている肥満、喫煙者の割合が少ないこと。
魚や大豆の摂取量が多いことなどが影響しているのかもしれません。
今後日本人でもこのような女性医学の分野における研究が望まれます。

ところで、以前このブログでも触れましたが、現在、日本人における医療専門職を対象とした前向き疫学研究が実施されており、そのホームページを見つけましたので、興味のある方は参照してください。

女性の生活習慣と健康に関する疫学研究(Japan Nurses' Health Stduy)



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繊維筋痛症に対する認知行動療法の有効性

繊維筋痛症(Fibromyalgia)は、首から肩にかけての痛みやしびれなど全身の筋肉の痛みに加え、疲労感、不眠などの症状を主とした原因不明の疾患です。リウマチを心配して受診される場合が多く、決してまれな疾患ではありません。また、不安やうつなどの症状も出ることから心療内科、精神科等を受診される場合も多いと思います。

この繊維筋痛症には不眠を高頻度で訴える例が多いのですが、この疾患の不眠に認知行動療法が有効であるかどうかはわかっていませんでした。

アーカイブス・オブ・インターナルメディシン(Arch Intern Med)の11月28日号に繊維筋痛症に対する認知行動療法の無作為試験の結果が公表されました。

Edinger JD, Wohlgemuth WK, Krystal AD, Rice JR.
Behavioral insomnia therapy for fibromyalgia patients: a randomized clinical trial.
Arch Intern Med. 2005 Nov 28;165(21):2527-35.

この研究では、繊維筋痛症患者47名を無作為に(1)認知行動療法実施群、(2)睡眠環境を整える群、(3)通常治療のみを実施する群の3群に分け、介入後の効果を比較しました。

認知行動療法は毎週6週間にわたって実施されました。主な実施項目は、睡眠の必要性、サーカディアンリズムの理解するための話に加え、起床時刻を決めること、ベッドルームを寝るためだけに使うこと、昼寝を避けることなどでした。

睡眠環境を整える群は、カフェインの制限、運動、寝る前の軽食の摂取、ベッドルームの照明、温度などについて指導を受けました

睡眠は質問紙調査を実施するとともに、夜間の起床等についてアクチグラフ(加速度センサーによる行動量の把握)による客観的評価を行いました。

介入後、夜間に目を覚ました時間は、認知行動療法を実施した群では50%減少しましたが、環境を整える群では20%、通常治療群では3.5%の減少にとどまりました。

また、認知行動療法群の57%は自覚的睡眠の改善がみられましたが、睡眠環境を整える群では17%、通常治療群では0%でした。

認知行動療法が不眠の治療に有効であることは以前から報告されていましたが、今回の研究により、繊維筋痛症患者の不眠にも、認知行動療法が有効であることがわかりました。今回の対象者数は比較的少ないため、この結果を一般化するには、もう少し対象者数を多くした検討が必要でしょう。また、本研究では介入6ヶ月後の追跡を実施できた割合は半数程度であり、追跡率が低いのもやや気になるところです。

ところで、繊維筋痛症では日常生活における軽度の運動も推奨されています。

Da Costa D, Abrahamowicz M, Lowensteyn I, Bernatsky S, Dritsa M, Fitzcharles MA, Dobkin PL.
A randomized clinical trial of an individualized home-based exercise programme for women with fibromyalgia.
Rheumatology (Oxford). 2005 Nov;44(11):1422-7.

やはり11月に公表された上記の無作為研究では、繊維筋痛症患者に運動療法を実施した結果、上半身の筋痛が減少したと報告されています。しかしながら、心理的因子の改善はみられなかったようです。

繊維筋痛症は生命に関わる疾患ではありませんが、痛みのため生活の質が低下している人が多いと思います。こうした生活指導による改善がなんらかの助けになればよいのですが…

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胸が大きい人は乳がんになりやすい?

胸が大きい人は乳がんになりやすい?この疑問に対する答えが
国際癌専門雑誌に公表されるようです。

A prospective study of breast size and premenopausal breast cancer incidence.
Kusano AS, Trichopoulos D, Terry KL, Chen WY, Willett WC, Michels KB.
Int J Cancer. 2005

この研究では、ナース・ヘルス・スタディⅡに参加した医療専門職89,268人を対象として、20歳時の胸の大きさと閉経前の乳がん発症との関連について前向き研究によって調査しました。

その結果、1993年から2001年までの経過観察期間中、803人の新規乳がん患者が登録され、肥満度(body mass index)が25未満の人の中で、20歳時のブラのサイズがD以上の人は、A以下の人に比べて乳がん発症の危険度は1.8倍でした。

また、肥満度が25以上の人では胸の大きさと乳がん発症との関連はみられませんでした。

したがって、乳がんは乳腺の大きさと関係あるのでは?という疑問を検討するために、胸の大きさをその代替マーカーとして測定した本研究の結果から言えることは、やせていて胸が大きい人では乳がん発症の危険度が上昇する可能性があるということでしょう。

本研究の内容についてはアブストラクトのみしか確認していませんので、詳細な言及は避けますが、ナース・ヘルス・スタディでは、20歳時のブラのサイズまで聴取しているのですね。いくら対象が医療専門職とはいえ、詳細な問診内容に驚いてしまいました。

日本でも保健医療職を対象として同様の研究が実施される(ている?)ようですが、果たしてここまで詳細な問診を行っているのでしょうか?

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薬で簡単に肥満は改善するか?

肥満が薬で簡単に治療できたら楽なのに!と思う人は多いと思います。そんな人のために?肥満治療薬と生活習慣のどちらが肥満改善に効果があるかという研究がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンの11月17日号に掲載されました。

Randomized trial of lifestyle modification and pharmacotherapy for obesity.
Wadden TA, Berkowitz RI, Womble LG, Sarwer DB, Phelan S, Cato RK, Hesson LA, Osei SY, Kaplan R, Stunkard AJ.
N Engl J Med. 2005 Nov 17;353(20):2111-20.

この研究では、無作為試験により肥満治療薬と生活習慣、およびその組み合わせのどれがもっとも肥満に対して有効かということを検討しました。

対象は、肥満成人 224 人で、以下の 4 群に無作為に割付け1 年間の介入を行いました。4群はそれぞれ、1 回 10~15 分、計 8 回の診察時にプライマリケア医が処方するシブトラミン(sibutramine)15 mg/日のみを服用する群;30 回のグループセッションで生活習慣の変更に関するカウンセリングのみを受ける群;シブトラミンの服用に加え,30 回のグループセッションで生活習慣の変更に関するカウンセリングを受ける群(併用療法群);シブトラミンの服用に加え,1 回 10~15 分,計 8 回の診察時にプライマリケア医から生活習慣の変更に関する簡単なカウンセリングを受ける群でした。また、参加者全員に1 日あたり 1,200~1,500 kcal の食事と、同じ運動療法を指導しました。

1 年間で減少した体重は、併用療法群で平均12.1 kg、シブトラミン投与のみの群で 5.0 kg、生活習慣の変更のみの群で 6.7 kg、シブトラミン+簡易指導群で 7.5 kg であり、肥満治療薬と生活習慣変更のカウンセリングの量を受けた併用療法群で最も肥満の改善効果がみられました。また、併用療法群のうち、食物摂取を記録した頻度が高い人は、記録頻度の低い人に比べて体重の減少が大きくみられました(18.1 kg 対 7.7 kg,P=0.04)。

以上より、肥満治療薬をただ使用するだけでは、生活習慣の改善を行った人に比べても減量の程度は大きくなく、肥満治療薬を服用することだけでは不十分であると言えるでしょう。

もし、肥満治療薬を生活習慣改善と併用して行えば、改善の程度は大きくなりますが、まずは生活習慣改善が最初である という原則は揺るがないものでしょう。食物摂取を記録した人でより大きく体重減少がみられたという結果は、この原則を支持するものと考えられます。

世の中、サプリメントのみならず、肥満治療薬の並行輸入等もよく行われているようですが(シブトラミンは日本で未発売)、本研究の結果から、そういう薬を飲む人達は、安易に薬を飲むだけでは、その効果は大きくない(しかも副作用もある!)ということをよく理解すべきだと思います。また、販売者もこうした研究結果をしっかりと消費者に伝えていくべきでしょう。

ところで、最近12日間程日本で仕事をしていました(お世話になった方々に心から御礼申し上げます)。日本食はヘルシー食とは言われておりますが、当然食べ過ぎれば体重増加するのはあたりまえです。いつも日本に行くたびに数Kg増えて帰ってきてしまう私自身がその典型例と言えるでしょう(自慢すべきことではありませんが…)。

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BMIとウエスト・ヒップ比 どちらが強く心筋梗塞を予測するのか?

肥満が心臓病の原因になるのはよく知られていますが、どの人種にもあてはまるかどうかは明らかではありませんでした。BMI(体重を身長の2乗で割ったもの)とウエスト・ヒップ比のどちらがより心筋梗塞発症と関連するかについての研究が11月5日ランセット(Lancet)誌に公表されました。

Obesity and the risk of myocardial infarction in 27,000 participants from 52 countries: a case-control study.
Yusuf S, Hawken S, Ounpuu S, Bautista L, Franzosi MG, Commerford P, Lang CC, Rumboldt Z, Onen CL, Lisheng L, Tanomsup S, Wangai P Jr, Razak F, Sharma AM, Anand SS; INTERHEART Study Investigators.
Lancet. 2005 Nov 5;366(9497):1640-9.

この研究では、52カ国12461人の心筋梗塞患者と14637人の対照者において、BMI、ウエスト径、ヒップ径、ウエスト・ヒップ比等の指標と心筋梗塞との関連をみました。

その結果、BMIの第5五分位(上位20%)は第1五分位(下位20%)の人に比べて、1.44倍心筋梗塞のリスクが高くみられました。しかしながら、ウエスト・ヒップ比および他の危険因子を調整するとBMIと心筋梗塞との間に有意な関連はみられなくなりました。

一方、ウエスト・ヒップ比については、第1五分位に比べた第2、第3、第4、第5五分位の心筋梗塞に対するリスクはそれぞれ、1.15、1.39、1.90、2.52であり心筋梗塞との間に強い関連がみられました。さらにこの関連はBMIを始とする他の危険因子を調整後も同様にみられました。

また、ウエスト・ヒップ比が上位40%であるものの心筋梗塞に対する人口寄与危険度は24.3%、BMIの上位40%におけるそれが7.7%であり、ウエスト・ヒップ比を低下させることによって得られる心筋梗塞発症者の減少数はBMIに比べて3倍以上であるという結果でした。

以前、メタボリック症候群の診断基準がウエスト径の部分のみ各国で異なるということを報告しましたが、今回の結果をみると、どの人種であってもウエスト径の方がBMIよりも心筋梗塞との関連が強いことから、将来的にはウエスト径の基準は国際的に統一されていくのではないかと思います。

とりあえずは、ベルトの穴に普段から注目することにしましょう。

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笑いは最良の治療法?

”笑う門には福来る”とよく言われますが、笑いと健康との関連が近年注目されています。Oncologist誌の9月号では笑いをがん治療現場で使うための具体例が示されています。

Laughter: the best medicine?
Penson RT, Partridge RA, Rudd P, Seiden MV, Nelson JE, Chabner BA, Lynch TJ Jr.
Oncologist. 2005 Sep;10(8):651-60.

結論としては、医療現場で笑いやユーモアを有効に使うことは、がん患者さんなどの痛みや心理状態を改善させる効果があるが、使うタイミングを間違わないことが大切であるということでしょう。

確かに、心理的に落ち込んでいる患者さんに対してやみ雲に冗談を言ってもむしろ逆効果でしょうし、笑いを治療法の一つと考えれば、適応や投与するタイミングが大事と思われます。

元淀川キリスト教病院のホスピス長で、金城学院大学学長の柏木哲夫先生の講演を聞かせてもらったとき、柏木先生がホスピス内で上手にユーモアを使っていらっしゃったお話をしていました。

例えば、柏木先生は一時退院する患者さんが体調面に不安を感じていらっしゃるとき、「大丈夫。私が太鼓判を押します。」とよくおっしゃったそうですが、その時、実際に太鼓判なる大型のハンコを作って、患者さんに押してあげたそうです。太鼓判って本当にあったら面白いと思う人はいるでしょうが、そのアイデアを即実行するところが実にいいですよね。

この論文の中でもユーモアの具体例がいくつか紹介されています。
ある医師は、新しいスタッフが入ってきた時に、患者さんに悪いことを伝える手段の一例として“cat on the roof”というお話をするそうです。

「屋根の上のネコ」というこのお話、具体的には、


大学生のチモシーが実家の弟に電話しました。

「ジョン、お兄ちゃんだけど、最近変わったことはない?」

「あっお兄ちゃん、…変わったことと言えば、お兄ちゃんのネコ死んじゃったよ」

チモシーは驚き、悲しみ、しばしすすり泣いたあと

「ジョン、あのなぁ悪いニュースをそんなふうに言っちゃいけないよ。お前はそのネコを僕がどれだけかわいがっていたかをよく知っているだろう?お前はこんなふうに言うべきだったよ」

「まず、”お兄ちゃんのネコが屋根の上に登っちゃって、自分達が助けようとしたけど助けられなかったから、消防車を今呼んだところだよ”と言うんだよ。そうすれば、お兄ちゃんはまた2、3時間後に電話するだろう?そしたらお前は”消防車が来る前に、ネコが屋根から落ちちゃって大怪我をしちゃったんだよ。今、ちょうど獣医さんのところに連れて行ったところだよ”と言う。そしたら、またお兄ちゃんは2、3時間後に電話するだろう?その時になって初めて”お兄ちゃん、残念ながらネコが死んじゃったんだよ”と言ってくれたら、お兄ちゃんもある程度覚悟が出来ているからこんなにがっかりしなくてすんだのに…」

「お兄ちゃん、本当にごめんよ。そんなふうに言ったらよかったなんて全然気がつかなかったよ。」

「いいんだよ。お前はまだ幼いし、これからそういうことを徐々に覚えていけばいいさ。」

「お兄ちゃん、ぼくもう大丈夫、もう大丈夫だよ。」

「わかったよ。じゃあ家の中で何か他に変わったことない?」

「あのね、お兄ちゃん。実はママが屋根の上に登っちゃったんだ。」


ちゃんとオチがあったのですね。


もう一つ、ある医師が患者さんに使って失敗した例を、

私は、患者さんの部屋に行って、検査をする時、カーテンを閉めながらいつもはこう言います。

「さあ、これで即席のプライバシー(instant privacy)空間の出来上がりです。」

これは、自分でも結構いい表現だと思いますが、ある日、間違ってこう言ってしまいました。

「さあ、これで即席の二人のための(instant intimacy)空間の出来上がりです。」

ちょっと面白さが伝わらないかもしれないので、原文では、こんな感じです。

I often close the curtain in the exam room and would usually say, “Okay, now we have instant privacy,” which is fine.

I made a mistake once and said, “Now we have instant intimacy.”

intimacyは「親密さ」を表す表現ですので「愛情行為」を遠回しに言う表現でもあることが面白いところです。
患者さんのためのプライベートな空間が、二人の愛情行為を実施する場所になってしまったのですね。

意訳して、こんな感じにしたほうが伝わるかも?

私は、患者さんの部屋に行って、検査をする時、カーテンを閉めながらいつもはこう言います。

「さあ、こうすれば裸になっても誰にもみられませんよ」

ある日、間違ってこう言ってしまいました。

「さあ、こうすれば裸で(あれを)やっても誰にもみられませんよ」

うーん。今ひとつかな。

ともあれ、ちょっとしたいい間違いが変な誤解を受けることはよくあるものです。

それで思い出したのが、私の友人の研修医時代の失敗談。

医師が聴診したときによく言う表現として、「胸の音は問題ありません。」というのがあります。これはもちろん、心臓や肺の音に問題がないということです。

ある日友人が、若い女性を診察したとき、

「胸の音に問題ありません。」と言うべきところを、間違って

「胸の形に問題ありません。」と言ってしまったそうです。

もちろん、すぐ気付き、慌てて言いなおしたそうですが、例え意識していなくても(むしろ意識していないだけに?)誤解を招きかねない表現ですよね(聞いたこっちは大笑いしましたが)。

自分が経験したものとしては、医師になってすぐの頃、地方都市の病院で診察をしていて、

「最近、(目の下に)くまはでますかねぇ?」と聞いたとき、

「あっそういえば、昨日出たみたいだって言っていました」

「えっ?誰が?」

「うちのおばあちゃんが」

「自分では、(目の下の)くまに気がつかないですか?」

「自分ではみたことないですねぇ」

「じゃあ、おばあちゃんに言われたんですね」

「ええ、電話で」

「???」

そうです。患者さんは熊のことを言っていたのですね。
どうりでかみ合わないわけです。


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CPAP治療は睡眠時無呼吸症候群の生存率に貢献しない?

ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)の11月10日号に、睡眠時無呼吸症候群に関する2本の論文が掲載されました。

1つ目の論文では、睡眠時無呼吸症候群が脳卒中および死亡を予測する結果でしたが、2つ目の論文は持続陽圧呼吸(CPAP)による治療は、睡眠時無呼吸症候群の無呼吸を減らし、酸素飽和度を改善させたものの、死亡を減らすまでには至らないという結果でした。

H. Klar Yaggi, M.D., M.P.H., John Concato, M.D., M.P.H., Walter N. Kernan, M.D., et al.
Obstructive Sleep Apnea as a Risk Factor for Stroke and Death
N Engl J Med. Volume 353:2034-2041 November 10, 2005 Number 19

Continuous Positive Airway Pressure for Central Sleep Apnea and Heart Failure
T. Douglas Bradley, M.D., Alexander G. Logan, M.D., R. John Kimoff, M.D., et al.
N Engl J Med. Volume 353:2025-2033 November 10, 2005 Number 19

一つ目の論文は、睡眠外来を受診した1022人の患者にPopysomnographyによって睡眠中の無呼吸の回数を調べ、その後の脳卒中発症および死亡との関連を経過観察しました。

1時間あたり5回以上の無呼吸を睡眠時無呼吸症候群と定義し、無呼吸がない人に対する脳卒中および死亡のリスクを算出した結果、無呼吸症候群では脳卒中および死亡のリスクが2.24倍でした。睡眠時無呼吸症候群と脳卒中・死亡との関連は高血圧などの因子を調整した後も1.97倍と有意に上昇していました。

本研究の対象者は外来受診者ということで、やや偏った集団であり、最初の検査の時点で睡眠時無呼吸症候群と診断されたものが68%と高率でした(通常20%程度)。したがって、この結果をそのまま一般住民にあてはめることは難しいですが、これまで報告されてきた結果と同様の結果が得られており、ほぼ妥当な結果と思われます。

一方、もう一つの論文では、中枢性の睡眠時無呼吸症候群と心不全を合併した患者258人を無作為にCPAPによる治療を実施した群と実施しなかった群に分け、その後3~18ヶ月間経過観察しました。

3ヶ月後、CPAPによる治療を実施した群では、睡眠時無呼吸の頻度が低下し、交感神経系の指標であるノルエピネフリンが低下し、睡眠時の酸素飽和度が上昇しました。

しかしながら、18ヶ月後の生存率は両群ともに同じであり、CPAP治療は生存率には影響しないという結果でした。

この研究では、対象者数が比較的少なく経過観察期間も短かかったため、生存率に有意差が出るには至らなかった可能性もあります。また、心不全を合併した症例のみを対象としているため、一般の睡眠時無呼吸症候群患者とCPAP治療の効果をみたものではないという点が重要です。

というのは、閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者を対象として、CPAP治療により致死性および非致死性循環器疾患発症を抑えることができたという研究はランセット誌の5月号にて既に報告されています。

Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study.
Marin JM, Carrizo SJ, Vicente E, Agusti AG.
Lancet. 2005 Mar 19-25;365(9464):1046-53.

したがって、睡眠時無呼吸症候群が心臓病、脳卒中といった循環器疾患の発症のリスクを上昇させるのは明らかと考えられますが、睡眠時無呼吸症候群があるからといって全例にCPAP治療を実施することが必ずしも予後を改善するわけではないということでしょう。

今後、どのようなタイプの人にCPAPを実施するのが有効なのかについての研究がもっと報告されてくると思います。

もっとも、睡眠無呼吸の人が太っていたらまず減量させないとね!

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コーラを飲みすぎると高血圧になりやすい!

コーラ好きはご用心!普段からコーラをよく飲む人は将来高血圧になりやすく、一方コーヒーは関係ないことが米国医師会雑誌(JAMA)の11月9日号に発表されました。

Habitual Caffeine Intake and the Risk of Hypertension in Women
Wolfgang C. Winkelmayer, MD, ScD; Meir J. Stampfer, MD, DrPH; Walter C. Willett, MD, DrPH; Gary C. Curhan, MD, ScD
JAMA. 2005;294:2330-2335.

以前よりカフェインが血圧を上昇させる作用があることは数多く報告されてきました。この研究では、ナース・ヘルス・スタディ(the Nurses' Health Study)Ⅰ、Ⅱに参加した高血圧がない職業看護師15万5594人を対象として、カフェイン摂取と高血圧発症との関連について12年間経過観察しました。

カフェイン摂取については、質問紙により日常生活で摂取しているコーラ(ダイエットコーラ、レギュラーコーラ)、コーヒー、お茶、カフェイン抜きのコーヒー等の摂取頻度について調査し、摂取したカフェイン量を調査しました。

経過観察中に3万3077人が医師の診察により高血圧と診断されました。

カフェイン摂取量を5分位に分けて高血圧発症との関連をみたところ、カフェイン摂取と高血圧発症との間には逆Uカーブの関係がみられ、少量~中等量のカフェイン摂取は高血圧のリスクを約10%上昇させましたが、多く摂取した人ではこのようなリスクの上昇はみられませんでした。

次に、飲み物の種類別に摂取頻度と高血圧発症との関連をみたところ、コーヒーをほとんど飲まない人に比べて、4、5杯以上飲む人では高血圧のリスクは約10%低下していました。

また、コーラの摂取頻度別に高血圧のリスクをみたところ、ダイエットコーラ、レギュラーコーラのどちらとも、コーラを多く飲む人ほど高血圧のリスクは上昇していました。特に、レギュラーコーラをよく飲む人でこの関連は強く見られ、コーラをほとんど飲まない人(1日1杯未満)に比べて4杯以上飲む人の高血圧になるリスクは28~44%上昇していました。

コーラ摂取と高血圧との関連は、肥満度、飲酒量、身体活動量などの高血圧に関係する他の因子を調整した結果であり、さらに、塩分、カリウム摂取量等も調整しても同様にみられており、コーラ摂取そのものが高血圧発症に影響する結果であったといえるでしょう。

ではなぜコーラを多く摂取すると高血圧になりやすくなるのか?

残念ながらこの答えは本研究からは導き出せません。メカニズムとしては、コーラを摂取することでインスリン抵抗性が強くなることや糖尿病になりやすくなること、さらには今回調べていない他の成分が影響している可能性などが考察では論じられています。

まあ、コーラが身体によいと思う人はむしろ少数でしょうから、今回の結果自体はそれほど驚くようなものではないと思いますが、むしろ、

医療職であるにもかかわらずコーラを飲む成人女性の多さに驚きます。

計算してみるとコーラを毎日1杯以上飲む女性は25%以上!しかもその頻度は増えてきているようです。しかも、1日4杯以上飲む人も4%程度おり、決してまれではありません。
(ダイエットコーラを飲む人の割合が多いのがせめてもの救いか?)

確かに、こちらの食生活をみると、コーラを思わず飲んでしまう環境がそろっています。

例えば、スーパーではコーラ1ダース(12本)が2~3ドルで売られていますから、気軽に購入できますし、ファーストフードの飲み物もお代わりし放題ですから、ついつい飲んでしまうのもわかります。

こうした清涼飲料水の摂取とアイスクリームの大きさが米国の肥満を助長させているような気がするのですが、日本も今や対岸の火事とは言えなくなってきているでしょう。

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大御所登場!

今日の疫学セミナーはヘンリー・ブラックバーン(Henry Blackburn)教授の講演でした。
講演タイトルは
Between the Olives and the Grapes. A story of Research on Lifestyles, Diet and Prevention of Heart Attacks

ブラックバーン教授といえば、ミネソタコード(心電図をかじったことのある医師であればほとんどの人が知っている)の生みの親的な存在として日本でも有名です。

既に80歳位になっているはずですが、まだまだ現役で活躍しているところが素晴らしい!
しかも決して偉ぶらずに気さくに話しかけてくれたりして人物的にもとっても尊敬できる人なのです。

そのブラックバーン教授の講演とあって、セミナー室はこれまでのセミナーで一番と言っていいほどの大賑わいでした。


実際の講演の内容は、循環器疫学の歴史を1.創世記(1948年まで)、2.1948~1972年、3.1973年以降の時期に分けてお話下さったのですが、中でも創世記から疫学研究が出現してきた20世紀半ば位の時期の話がとても印象的でした。

最初にフグを食べた人(たぶん死んでしまったでしょうが)、うなぎの蒲焼を思いついた人(きっとへびでも試しているよね)、納豆を作った人(たぶんできたのは偶然でしょうが、食べたところがすごい!)などなど何でも最初にやった人は偉い!と思うのですが、疫学研究でもそうだと思います。

前向き疫学研究の走りで、未だに素晴らしい研究成果を発表し続けるフラミンガム研究(Framingham Study)、日本人と日本人移民者の研究で生活習慣の変化が疾患発症に及ぼす影響をみたNI-HON-SAN study、そして日本人を含む7カ国の食生活の違いと循環器疾患の発症率との関係をみたSeven Countries Studyなどなど、その研究を立ち上げることになった経緯がどういったものであったかにとても興味が湧きます(講演では時間が足りなくてそこまでは言及されていませんでしたが)。

特にSeven Countries Studyはミネソタ大学の疫学部の創始者であるAncel Keys博士(なんとTIME誌の表紙に載ったことがある!)が中心となって始められたものです。この研究については下記ミネソタ大学HPでも紹介されていますのでご参照下さい。ちなみにブラックバーン教授の講演タイトルBetween the Olives and the GrapesはこのSeven Countries Studyにちなんでつけられたようです。

http://www.epi.umn.edu/about/7countries/overview.shtm

その中で、日本がSeven Countries Studyに加わった経緯についても載っています。

http://www.epi.umn.edu/about/7countries/japan.shtm

当時の日本人の食生活といえば、極端に少ない動物性脂肪の摂取、それに比べて魚の摂取量が多く、炭水化物を多く摂り、そして塩分摂取は欧米人の3倍!という欧米人にとっては信じられない食生活を送っており、さらに脳卒中の発症がやたら多いこともあって研究対象として格好の集団だったと思われます。

(ちなみに、この日本の紹介文の中に、我々がよく知っている大先生の名前もちらっと出て来ておーっと思います。)

今日の講義の中で出てきたKeys博士以前の研究者の名前は、これまでほとんど聞いたことがなく、よい勉強になりました。

本日紹介された研究者らの名前は、Cornelis DeLangen, I Snapper, JJ Grben, Nikolai Amitschkow etc…

知っている人がいたら、相当の疫学通かお年を召した方?


ところで、本日講義をされたブラックバーン教授も年齢を感じさせない元気さですが、そのボスだったKeys博士もお年を召してもとっても元気に活躍されていたようです。

亡くなられたのは2004年でつい最近の話なのですが、100歳まで生きられています。

それどころか90歳代でも大学に来て論文を書いておられたそうです。
97歳まで書いていたという話を聞きましたが、PubMedでも93歳の時に書いた論文が検索できます。

日本でこれだけ息の長い研究を続けられる人はどれだけいらっしゃるのでしょうか?
(っていうか米国でも?)

健康に寄与する食生活について素晴らしい業績を残しただけでなく、健康を維持しQOLの高い生活を自ら実践してこられたという点で、まさに我々の見本となるべき存在といえるでしょう。

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γ(ガンマ)GTPはお酒のみの指標だけではない?正常値内でも安心できないエビデンス続出!

γ(ガンマ)GTP(Gamma-glutamyltransferase:以下GGTP)は検診でよく行われている血液検査の一つです。
男性で高い人が多く、これが高い人の多くは「お酒の飲みすぎですねー」なんていうことをよく言われます。
もちろん、胆道系疾患などでも高くなる場合があるので、酒を飲まない人でも正常値を超えている場合は、精密検査が勧められています。

ところが、最近の疫学研究では、GGTPが例え正常範囲内であってもその値が高い人では、高血圧や循環器系疾患のリスクが高くなることが相次いで報告されています。

米国高血圧雑誌Hypertensionの11月号に、GGTPと高血圧との関連を前向き研究で調査した結果が報告されました。

Body Fat Distribution, Liver Enzymes, and Risk of Hypertension: Evidence From the Western New York Study
Saverio Stranges, Maurizio Trevisan, Joan M. Dorn, Jacek Dmochowski, and Richard P. Donahue
Hypertension 2005;46 1186-1193

この研究では、1455人の男女を対象に、GGTPと高血圧との関係を6年間に渡って経過観察を行いました。
高血圧を140/90mmHg以上もしくは降圧剤服用者とした時、GGTPが14以下の人に対する高血圧発症の相対危険度は26~38の人で1.8倍、39~55の人で2.7倍でした。

また、GGTPは飲酒者で高くなるため、飲酒量やベースラインの血圧値を考慮した解析を行った場合でも、39~55の人の高血圧発症の相対危険度は2.1倍であり、飲酒量とは独立して、GGTPが高血圧と関係することがわかりました。

さらに、現在飲酒者と非飲酒者を別々に解析した結果、非飲酒者でGGTPが26~38の人の高血圧発症の相対危険度は3.5倍であり、特にお酒を飲まない人でGGTPが高めの人は注意が必要であるという結果でした。

GGTPは通常60~70を超えなければ、検診では正常範囲内として扱われることが多いと思います。今回の結果は、例え、GGTPが正常範囲内であっても高めの人は高血圧になる危険性がより高いという点が特に注目すべきことでしょう。

興味深いことに、この研究ではGGTPは肥満であればあるほど、特にウエスト径が大きければ大きいほど高くなるということも報告されています。

すなわち、内臓肥満(特に脂肪肝)がGGTP高値に影響しているのではないかと推察されています。

本研究は疫学研究としては対象人数がやや少ないことと追跡率が68%とやや低めな点が気になりますが、GGTPと高血圧との間にはきれいな量・反応関係がみられており、データの信頼性は高いものと考えられます。

一方、米国循環器雑誌Circulationの10月号にはGGTPと循環器疾患死亡との関係についての大規模疫学研究結果が公表されました。

Gamma-glutamyltransferase as a risk factor for cardiovascular disease mortality: an epidemiological investigation in a cohort of 163,944 Austrian adults.
Ruttmann E, Brant LJ, Concin H, Diem G, Rapp K, Ulmer H; Vorarlberg Health Monitoring and Promotion Program Study Group.
Circulation. 2005 Oct 4;112(14):2130-7.

こちらの研究は16万3944人のオーストラリア人を対象に、GGTPと循環器疾患死亡との関連について17年間の経過観察を行いました。

その結果、GGTPが高くなるほど循環器疾患死亡が増加し、きれいな量・反応関係がみられました。

具体的には、男性ではGGTPが14未満の人に対する循環器疾患(脳卒中、心筋梗塞、心不全等)死亡の相対危険度は、14~27の人で17%増加、28~41の人で28%増加、42~55の人で39%増加、56以上の人で64%増加していました。

一方、女性ではGGTPが9未満の人に対する循環器疾患死亡の相対危険度は、9~17、18~26、27~35、36以上の人でそれぞれ、4%、35%、46%、51%増加していました。

したがって、男女ともにGGTPの値は低ければ低いほど循環器疾患死亡のリスクは低くなるということがいえるでしょう。

この研究では、飲酒量を対象者全員では把握していなかったために、飲酒量の影響がどのていどあったかということは不明ですが、これだけ大規模な人数での結果ですので、データの信頼性は高いと思われます。

もし、検診の結果をみて、GGTPの値が高かったら、早速運動と食事によって内臓脂肪を減らすことを考えては如何でしょうか?

ちなみに自分の値は高いグループではないと思いますが、一番低いグループでもないと思います。お酒をそう飲んでいるわけでもないし… って、やっぱり内臓脂肪?

とりあえず、今日はフィットネスに出かけることにしましょう。


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ハローウィン発祥の地はどこ?

10月31日は日本でもおなじみのハローウィン(Halloween)の日。
ちなみに自分が小さい頃にはハローウィンの名前すら知らなかった(って年がばれる?)

米国では小学校でハローウィンのパレードをするくらいだから、結構大きなイベントなのでしょう。
そこで、ハローウィンのことをいろいろ調べてみたところ、

もともとは古いケルト人(ドルイド教)の祭りで、秋の収穫を祝い、悪い自然霊や魔女などを追い出す祭りであったとか。その古いケルトの習俗がいつの間にかキリスト教文化に取り入れたようです。さらにそれが、米国に移ってからは、おもに子供の祭りとしてにぎやかに騒ぎ、御馳走を食べる収穫の祝いの行事となっていったとのこと。

では、米国におけるハローウィン発祥の地はどこでしょう?

これが、何とミネソタ州のAnokaという町だったのでした。

Anokaのホームページにはここの町は

the Halloween Capital of the Worldと言われているということが載っていました。

ハローウィンのある10月にはいろいろとイベントも開催されているらしい。

といっても、Anokaのことがわかったのが、10月29日でしたので、イベントには当然参加できませんでした。

でも、the Halloween Capital of the Worldというくらいだから、町をあげて家をハローウィン仕様に飾り付けているのではないかと期待して、とりあえず行ってみました(Anokaはミネアポリスの街中からでも30分もあれば行けます)。

ところが、

特になんてことはない町でした…

町のメインストリートにthe Halloween Capital of the Worldの旗があちこち飾っているだけで、その近辺の家とか、まったくもって普通

ちょっと凝った飾りつけをしている家はあるものの、驚くほどではありませんでした。

Capitalというくらいなら、もっと町をあげて派手にお祭りしてくれ!

と声を大にして言いたいです。

とまあ、無駄足を踏んで帰ってきたわけですが、

夜9時近くになって、近所に住む同僚から電話があり、近くの家でパンプキンをたくさん飾ってある家があるから行ってみたら?

という連絡を受けて、とりあえず行ってみました。


こっちの方が断然すごい!

なんと159個のパンプキンをくりぬいてきれいにライトアップしていたのです。

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はっきり言ってAnokaの人達にも見習ってほしいです。
家の人の話だと8月からかぼちゃをくりぬいて作っていたとか…
素晴らしい!

ところで、日本でよく食べるかぼちゃもこっちのスーパーで売っているのですが、
Pumpkinと言っても買えません。日本のかぼちゃはこっちではsquashの一種のようです。

それと、Halloweenの発音もハローウィンではなくて、どうやらハロウィーンのようですねぇ。これもちゃんと知っていないと年齢がばれるものの一つなのでしょうか?


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どれが正しいメタボリック症候群の診断基準なのか?

日本でも最近話題のメタボリック・シンドローム。
簡単に言えば、内蔵肥満に高トリグリセライド血症、耐糖能障害、高血圧、低HDL血症などが合併すると、より心筋梗塞など循環器系疾患にかかるリスクが高くなるというものです。

先日米国循環器病雑誌Circulationの10月25日号にAmerican Heart Association (AHA) とNational Heart, Lung, and Blood Institute (NHLBI)との合同によるメタボリック症候群に関する診断基準、およびそのマネジメントについてまとめられたものが公表されました。

Association; National Heart, Lung, and Blood Institute. Diagnosis and management of the metabolic syndrome: an American Heart Association/National Heart, Lung, and Blood Institute Scientific Statement.
Grundy SM, Cleeman JI, Daniels SR, Donato KA, Eckel RH, Franklin BA, Gordon
DJ, Krauss RM, Savage PJ, Smith SC Jr, Spertus JA, Costa F; American Heart
Circulation. 2005 Oct 25;112(17):2735-52.

これによると、

下記の5項目のうち3つ以上にあてはまれば、メタボリック症候群と診断されます。

1.ウエスト径 男性102cm以上、女性88cm以上

2.トリグリセライド(中性脂肪)値 150mg/dL以上 または 治療中

3.HDLコレステロール値  男性 40mg/dL未満 女性 50mg/dL未満 または 治療中

4.血圧値 最大血圧 130mmHg以上 または 最小血圧  85mmHg以上 または 高血圧治療中

5.空腹時血糖値 100mg/dL以上 または 糖尿病治療中

血圧値、血糖値に関しては以前の基準より厳しくなりました。
メタボリック症候群の循環器系疾患に関する寄与率が高いことが背景になっているものと考えられます。

興味深いことに、メタボリック症候群の基準は国によって違うのですが、高血圧、HDLコレステロール値等の基準等はそれほど大きく違うものではありません。ところが

なぜか、ウエスト径に基準については各国バラバラなんですねえ!

英国医学誌ランセットLancet誌の2005年9月24日号によれば、

The metabolic syndrome--a new worldwide definition.
Alberti KG, Zimmet P, Shaw J; IDF Epidemiology Task Force Consensus Group.
Lancet. 2005 Sep 24-30;366(9491):1059-62.

ヨーロッパは 男性 94cm以上 女性 80cm以上
南アジアは 男性 90cm以上 女性 80cm以上
中国は   男性 90cm以上 女性 80cm以上

ここまでは肥満の頻度の違いで説明できるとしても

日本は 男性 85cm以上 女性 90cm以上

なぜか、日本だけが男性と女性とで肥満の基準が逆転しているのです!

そうです。日本だけが米国、ヨーロッパだけでなく、同じアジア人の基準からもはなれた診断基準であるとであるといえるでしょう。

では、日本の診断基準がおかしいのか?

と言われると、あくまでも私見ですが、日本の診断基準は妥当なのではないかと思います。

というのは、内臓肥満ということを考えると、日本人女性の場合、相当ぽっちゃりした女性でもそのほとんどは皮下脂肪であり、内臓肥満の割合は男性に比べると非常に少ないからです。

ですから、内臓肥満の診断ということで定義すれば日本の基準は妥当な線と考えられます。

それに対して、諸外国は肥満の頻度、もしくは病態との兼ね合いから診断基準を設けているような印象を受けます。

すなわち、女性の場合、男性よりも全体的にウエスト径が小さいので診断基準もそれに合わせたということ、もしくは、女性の場合、男性よりも少ない内臓脂肪で循環器疾患のリスクが高まるため男性よりも診断基準を厳しくしたということです。

日本人の場合、残念ながら女性のウエスト径と将来の循環器疾患発症との関係については、まだ明解な回答が出ていないと思います。

したがって、動脈硬化学会、肥満学会、内科学会等いくつもの学会が合同で協議し発表したメタボリック症候群の基準が、今後どのように変わっていくのか注目したいと思います。

世界の基準に迎合していくのか、それとも日本独自の基準をまもっていくのか…

いずれにせよ、メタボリック症候群のリスクを明らかにする疫学研究をもっと出していくことが大事でしょう。

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うがいで風邪は予防できるのか?

風邪予防のためにうがいをしましょう!
って、誰でも知っているあたりまえのことと思われる人も多いでしょうが、
実は、うがいが風邪を予防するかどうかという明確な科学的根拠はこれまでほとんどありませんでした。

水でうがいをすると、しない場合に比べて風邪を引く危険性が少なくなるかどうかについて、京都大学の川村孝教授と里村一成助教授らが研究結果を米国予防医学雑誌(American Journal of Preventive Medicine)の11月号に発表しました。

Prevention of upper respiratory tract infections by gargling a randomized trial.
Satomura K, Kitamura T, Kawamura T, Shimbo T, Watanabe M, Kamei M, Takano Y, Tamakoshi A; Great Cold Investigators
Am J Prev Med. 2005 Nov;29(4):302-7.

この研究では、18~65歳の男女387人に実験に参加してもらい、参加者を(1)1日3回以上、水でうがいをする(2)1日3回以上、ヨード含有液を使ってうがいする(3)うがいしない-の3つのグループに分けてそれぞれ60日間経過観察を行いました。

参加者からの情報(鼻水、のどの痛み等)をもとに、風邪にかかったかどうかの判断を行った結果、経過観察中に130人が風邪をひいたと判断されました。30日あたりの風邪をひく頻度は、何もしないグループでは0.26、ヨード含有液をつかってうがいをしたグループでは0.24、そして、水でうがいをしたグループでは0.17であり、水でうがいをしたグループは何もしなかったグループに比べて、36%風邪の発症を減少させました。一方、ヨード含有液をつかってうがいをしたグループは何もしなかったグループとほぼ同様の風邪の発症がみられました。

水でうがいをすることが、しないことに比べて風邪予防に効果があったことを無作為比較研究で初めて明らかにしたという点で、この論文の公衆衛生的な価値はとても高いと考えられます。

しかしながら、いくつかの問題点も考えられます。

最初に、解析から除外したインフルエンザ様の症状が現れた人達の数について、
論文では、水でうがいをしたグループ12人、ヨード含有液でうがいをしたグループ11人、何もしないグループ14人を解析から除外していますが、これらの発症者にグループ間の有意差はみられませんでした(0.78)

ということは、水でうがいをしても、インフルエンザの発症を予防するには役に立たない!

ということでしょうか?確かにインフルエンザの感染力を考えれば、水でうがいをした程度で予防できるとは思えないのですが、これらの発症者を解析に加えてしまうと、おそらく全体として水でうがいをしたとしても、何もしなかった人に比べて有意に発症者を減らす結果にはならなかったと思われます。

次に、ヨード含有液の効果があまりにもみられないことについて、
論文では、その理由として、ヨード含有液の殺菌作用により常在菌をも死滅させてしまうこと、およびヨード含有液がのどの粘膜を障害してしまうことをあげていますが、実際の論文上の風邪発症の曲線をみてみると、すでに、10日目には水でうがいをしたグループとヨードでうがいをしたグループの風邪発症率の差は大きく開いているのです。これほどの差が水とヨード液との間で開くのは上記の理由のみでは説明しきれないと思います。

もちろん、「水でうがいをする」ことが風邪を予防するということは、一般的にはよく信じられていることですので、この思い込みが風邪の発症率に影響した可能性も考えられます。

とはいえ、このような疑問点があるからといって、この論文の価値が下がるわけではありません。

「水でうがいをすることが風邪を予防するのか?」という誰しもが日常においてちょっとした疑いをもつことについて、それが本当かどうか確かめてみようという研究者の姿勢には学ぶことが多いと思います。

こうした日常のちょっとした疑問、または昔から信じられてきたけど科学的根拠が明らかではないことに対する研究がどんどん行われてほしいし、自分もこうした研究に携わって行きたいと思います。

ところで、どうでもよいことなのですが(単に個人的な興味)、
こうした研究は結構BMJ(British Medical Journal)に載ることが多いように思うのですが、この研究をなぜAJPMに載せたのか?もっとぶっちゃけて言えば、BMJなど他のもっとメジャーな雑誌には投稿しなかったのかどうか?知りたいところです。

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自殺予防戦略 何が効果的なのか?

米国医師会雑誌(JAMA)の10月26日号の総説にて、これまで実施された自殺予防戦略の系統的レビューが報告されました。これによると、自殺予防のためには医師による介入が最も重要であるとのことです。

Suicide Prevention Strategies: A Systematic Review
J. John Mann; Alan Apter; Jose Bertolote; Annette Beautrais; et al.
JAMA 2005;294 2064-2074

2002年の全世界の自殺者数は877000人!先進国では自殺予防のためのプランがいくつか行われていますが、その効果の程は明らかではありません。

この総説では、1965年から2005年6月までの自殺予防プログラムに関する研究を検索し系統的レビューを行いました。

10のメタ分析、18の無作為研究、24の前向き研究、そして41の地域研究をレビューした結果、プライマリケア医に教育をすることで、うつなどの感情障害の診断率を上昇させること、およびうつの薬物療法を行うことの有効性が確認されたものの、地域住民への教育やマス・メディアを介した自殺予防キャンペーン等の効果については、明らかな有効性はみられませんでした。

地域における自殺予防プログラムは通常、うつのスクリーニング、自殺予防教育、自殺予防キャンペーン等いくつかの介入を組み合わせて実施することが多いため、一つの方法の評価というのは困難な場合が多いことが予想されます。

一方、自殺の最も重要な原因の一つである「うつ」については、初期段階では倦怠感、食欲不振等の不定愁訴が多く、内科医をはじめとするプライマリケア医を受診することが多いと思います。

したがって、本論文は、プライマリケア医が診察の中で「うつ」を見逃さないことの重要性をメジャー・ジャーナルによって再確認したという点で、医療現場に与える影響は大きいと思われます。

具体的には

患者 「最近、食欲がなくて、起きた時に身体もだるくて重く感じるのですが…」

医者 「大丈夫!胃の検査も血液検査も正常だから、気のせいですよ!

と言ってほうっておくのではなく、

「気のせい」ということに、焦点をあてて、うつが潜んでないかを確認することが大事ということでしょう。

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早期退職しても長生きはできない?

英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ:British Medical Journal)のオンライン版(10月21日)に、早期退職した人の平均余命が延長するかどうかについての研究結果が報告されました。

Age at retirement and long term survival of an industrial population: prospective cohort study
Shan P Tsai, Judy K Wendt, Robin P Donnelly, Geert de Jong, Farah S Ahmed
BMJ, doi:10.1136/bmj.38586.448704.E0 (published 21 October 2005)

結局のところ、55歳や60歳で早期退職しても、65歳で退職した人と比べて、“余命”は延びないことがわかりました。

早期に退職して、余生を過ごす生活は長生きと関連するのではないかと広く考えられてきました。しかしながら、これまでそれを証明するような研究は行われていませんでした。

この研究では、米国シェル・オイル(Shell Oil)の勤務者のうち、55歳で退職した者(839人)、60歳で退職した者(1929人)、65歳で退職した者(900人)を対象に、1973年~2003年にかけて、退職した年齢とその後の平均余命との関係をみました。

その結果、55歳で早期退職した人は、65歳で退職した人に比べて、退職後の死亡率は1.37倍とむしろ高い傾向がみられました。特に、男性では55歳で早期退職した人は65歳で退職した人に比べて死亡のリスクが83%高く、経済状況が低い人はそうでない人に比べて死亡のリスクが17%高くみられました。

また、60歳で退職した人はどちらかというと65歳で退職した人と同様の結果でした。

したがって、早期に退職することは65歳まで働き続ける人に比べて、長生きどころか、かえって寿命が短くなるという結果だったといえるでしょう。

本研究の問題点として、55歳で早期退職した人は、元々健康状態が悪いことが原因で退職していたのではないか、ということも考えられますが、本研究では、55歳で退職した人では、少なくとも退職後10年間(65歳になるまで)生存していた人、および60歳で退職した人は退職後5年間生存していた人を調査の対象としていますので、その影響は比較的少ないと考えられます。

また、興味深いことに、55歳で早期退職した人は、65歳で退職した人に比べて経済状況は良い人の割合が多かったようです。

米国では、若いうちからしっかりお金をためて、老後の生活費用が確保できたら早期に退職し、悠々自適で生活するというのが好ましい生活のように思われていると思います。

そんな米国人を対象として研究であっても、早期退職は長生きに結びつかないという結果が出たことに驚きを感じてしまいます。

ただ、特に男性や経済状況がよくない人で早死にしやすかったということを考えると、男性は悠々自適の生活が合わない人が多いのか、それともやむなく退職した人も含まれているからかもしれません。

この結果を日本人にあてはめてみると、日本では早期退職にはリストラが影響することが多いと思います。また、仕事に生きがいを求める人も多いことから考えると、日本人の早期退職者は今回の結果よりも強く死亡と関連する可能性が考えられます。

とはいえ、日本では、早期退職したくなくても早期退職しなければならない人が多いのも事実。自分ではどうしようもありません。

老後の蓄えがしっかりある人はともかくとして、そうでない男性は、少なくても60歳、できれば65歳まで何かしらの仕事を探してやり続けた方が長生きできるということでしょうか?

いずれにせよ、男性が女性より早死にすることには変わりないんですけどねぇ… ハァ…


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日本人には腎不全が多い?

今日の疫学セミナーはミネソタ大学のDr. Jon Snyderによる腎疾患の疫学についての講義でした。講演タイトルは「The Epidemiology of End-Stage Renal Disease in the United States」です。

2003年の米国における腎不全に陥っている腎臓病(End-Stage Renal Disease; ESRD)の人数は45万2957人。これは10年前と比べて少しずつ増えてきているようです。

ESRDの発症頻度は黒人、ヒスパニック系、米国先住民で多く、アジア人や白人は少ないとのこと。
また、ESRDの原因として、米国では糖尿病がダントツに多く、2番目の理由の高血圧の2倍以上です。3番目が慢性腎疾患、4番目が腎のう胞でした。確か、日本人では以前までは慢性腎疾患が1番目の原因だったはずですが、ここ10年間で糖尿病がそれを追い抜いたところだと思います。

本日の講義内容で驚いたことが2つ。

1つ目は、移植が盛んな米国であっても、ESRDの治療として選択されるのは人工透析がほとんどであり、98%を占めるそうです。移植の恩恵を受けるのはほんの2%に過ぎません。これは、移植数はどんどん増えているそうですが、ESRDの患者数も増えているため、いくら移植をしても追いつかないそうです。

日本でも糖尿病の増加に伴いESRDの数は増えてくることは予想されますので、同様に移植が増えてもその恩恵を受ける人の割合は減る一方でしょう。

2つ目は、ESRDの国際比較において日本人の有病率が高いこと。堂々の世界第一位でした。発症率は台湾が1位で、日本は3,4番手くらいですから、日本人では発症しても長生きできる人が多いということでしょうか。

実際、下記の論文では、日本、ヨーロッパ、米国の透析患者の死亡率を比較し、米国が最も高く、日本が最も低いことを報告しています。

Mortality among hemodialysis patients in Europe, Japan, and the United States: case-mix effects.
Goodkin DA, Young EW, Kurokawa K, Prutz KG, Levin NW.
Am J Kidney Dis. 2004 Nov;44(5 Suppl 3):16-21.

まったくの私見ですが、ちょっと危惧するのは日本の透析導入基準について。
厚生省により1991年から透析導入基準が定められてはいますが、それよりも早い段階で透析を実施するケースが多いのではないかということ。

米国在住のアジア人では白人と同レベルの有病率なのに、日本人になるとその有病率が急に上昇するのはなぜでしょうか?もちろん、塩分の摂取量が多いとか高血圧の頻度が多いのも関係あるのでしょうが、国民皆保険制度があり、透析導入者への医療費も無料の日本においては、他の国よりも透析導入にもって行きやすい環境があるのではないかと考えてしまいます(もちろん、それが悪いといっているわけではありません)。

言いたいのは、ESRDの有病率の国際比較をする場合、透析導入者の数をその基準に含ませると、導入体制が整っている先進国でどうしても有病率が高くなってしまうのではないかなあ、ということです。


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芸術を語ることは高齢者の便秘と血圧に良い?

定期的に芸術を語り合うことは高齢者の便秘を改善し血圧を低下させる可能性が発表されました。
米国YAHOOによる記事は以下に載っています。

http://news.yahoo.com/s/afp/20051014/od_afp/afplifestylearthealthoffbeat_051014141429

スウェーデン人の研究者である Britt-Maj Wikstroem (Ersta Skoendal University College in Stockholm)らの研究によると、美術品を見たり美術について語り合うのは心をなごませるだけでなく、便秘や血圧の治療にも役立つという結果でした。

この研究では、80代前後の女性20人に週一度、4ヶ月間にわたり、各種の美術について語り合う集いを持ってもらう実験をしたところ、20人のグループは、活動の程度が上昇しただけでなく、血圧が正常な方向に変化したり便秘薬の使用が減少する効果がみられたとのこと。別の20人の女性グループにも同じ方法で趣味、関心事について話し合ってもらったが、美術グループのような効果はみられませんでした。さらに、美術グループは最後の集いが終わったあと何カ月も効果が持続したということです。

この論文の原文をみたいと思い、Pubmed等を検索してみたのですが、残念ながら論文化はされていませんでした(少なくともPubmedに載るような論文にはなっていない)。したがって、この発表の元になっているデータがどうなのかがはっきりしないので、今のところこの研究の信憑性について語ることはできません(この論文、どなたか知らないでしょうか?)

美術を見ることや話し合うことがよくて、趣味について話し合うことが効果がないというのがどうにも理解しにくいのですが…どうなんでしょう。

美術ではありませんが、音楽をたしなむというのは、高齢者の認知機能低下の予防になるという研究は結構発表されています。なかでも、2003年にニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに載った論文はとても印象的でした。

Leisure activities and the risk of dementia in the elderly.
Verghese J, Lipton RB, Katz MJ, Hall CB, Derby CA, Kuslansky G, Ambrose AF, et al.
N Engl J Med. 2003 Jun 19;348(25):2508-16.

この研究では、年齢が 75 歳以上の 痴呆がない469 人を対象として、余暇活動と痴呆リスクとの関係を前向きに調査したものです。調査開始時の余暇活動への参加頻度を調査し、その後約5年間における痴呆発症との関連をみました。
経過観察期間中に合計 124 例に痴呆(アルツハイマー病61 例,血管性痴呆 30 例,混合型痴呆 25 例,他の型の痴呆 8 例)が発症しましたが、余暇活動では、読書、ボードゲームをする、楽器を演奏する、およびダンスをすることが痴呆リスクの減少と関連していました。

具体的には、楽器の演奏を定期的に行っている人はそうでない人に比べて痴呆が起こるリスクは3分の1以下(ハザード比で0.31)でした。

あたりまえのことですが、高齢者にとっては家に引きこもる生活よりも、どんどん積極的に外出し、友人や家族達と楽しく語り合うことが痴呆の予防にも健康にもよいということでしょう。
(ただ、あたりまえに思われることを実際に証明するのは難しいものなのです)

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抗精神病薬を飲むと死亡のリスクが上がる?

抗精神病薬を飲むと死にやすくなる?と言っても、アルツハイマー病や痴呆(認知症)の人での話です。
2005年10月19日号の米国医師会雑誌にて、アルツハイマー病や痴呆の人を対象とした無作為試験をメタ分析し、死亡との関連をみた結果が公表されました。

Risk of Death With Atypical Antipsychotic Drug Treatment for Dementia
Meta-analysis of Randomized Placebo-Controlled Trials
Lon S. Schneider, MD, MS; Karen S. Dagerman, MS; Philip Insel, MS
JAMA. 2005;294:1934-1943.

米国ではアルツハイマー病や痴呆の攻撃性や幻覚等の症状を抑えるために、ある種の非定型抗精神病薬がよく使われています。この研究では、こうした抗精神病薬をこれらの患者が服用した場合に、死亡のリスクが上昇するかどうかについて、15の無作為研究結果をまとめました。

抗精神病薬として研究の対象になった薬物はaripiprazole, clozapine, olanzapine, quetiapine, risperidone, ziprasidone 日本では、リスバダール、セロクエル、ジプレキサ等の商品名で処方されています(日本では統合失調症のみに適応あり)。

合計3353名の服薬者と1757名のプラセボ(偽薬)服薬者の死亡を比較した結果、これらの抗精神病薬を服薬した場合に死亡のリスクが54%上昇することがわかりました(死因は突然死、心不全、肺炎等)。

しかしながら、どの薬が死亡率を上昇させるかという点では、薬同士の間で差がみられなかったため明らかにはなりませんでした。

これらの結果は、メタ分析で得られた結果とはいえ、まだまだ解析対象者数も少なく、確実にそうだとは言い切れないかもしれません。ただし、こうした死亡のリスクの上昇が起こる可能性があるということは念頭においたほうがよいでしょう。

実際、米国ではJ & J (ジョンソン・エンド・ジョンソン)がリスパダールをアルツハイマー病に向けて販売することは、FDAから却下されています。

自分の場合実際にアルツハイマー病や重度痴呆患者をみることはほとんどないので、こうした抗精神病薬がどの程度処方されているのかはわかりません。

ただ、リスパダール、セロクエル等はアルツハイマー病にも適応があるのではないかと治験が実施されているようですので、既に処方されている方も多いのではないでしょうか。

アルツハイマー病の場合、実際に効果があるといわれる薬は少ないのが現状ですから、症状を抑えるためのこれらの薬は実地医家、家族などから期待されていたはずです。

今回の結果を受けて多くの方(特に製薬会社の方?)からのため息が聞こえてきそうです。

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続・アメリカン・パラドックス

増え続ける米国人の体重。
減り続ける米国人のコレステロール値。
なんとも不思議なこのアメリカン・パラドックスについて以前報告しましたが、

http://psychosom.cocolog-nifty.com/blog/2005/09/american_parado_3f37.html

最近、米国人のコレステロール値の推移について、新しいデータがまとまったものが米国医師会雑誌(JAMA)に公表されました。
果たして、米国人のコレステロール値の低下傾向はそのまま続いているのでしょうか?

結論としては、米国人のコレステロール値は持続して減り続けている!という結果でした。

Trends in Serum Lipids and Lipoproteins of Adults, 1960-2002
Margaret D. Carroll, MSPH; David A. Lacher, MD; Paul D. Sorlie, PhD; et al.
JAMA. 2005;294:1773-1781.

この研究では、1960年代から米国人から無作為抽出した集団the National Health and Nutrition Examination Surveys (NHANES) のコレステロール値について経過観察しています。これまで、1960年代から1994年までの米国人のコレステロール値が、持続して低下傾向にあることを報告してきましたが、今回はさらに2002年まで経過観察し、同様の傾向がみられるかを調べたものです。

15719人の参加者のうち、1960年代の調査から今回の調査(1999~2002年)まで計5回の調査に全て参加した6098人を対象としています。

1988-1994年から1999-2002年にかけて、20歳以上の大人の総コレステロール値は平均206mg/dLから203mg/dLに低下しました。また、LDLコレステロールは129mg/dLから123mg/dLに低下しました。これらの低下は主に60歳以上の男性、50歳以上の女性においてより強くみられたとのことです。

また、総コレステロールが240mg/dL以上の人の割合は20%から17%に減少していました。

これらの調査は今後2010年まで引き続き行われるとのことです。
今から5年後の調査において、米国人の体重とコレステロール値がどのようになっているか、これからの楽しみでもあります。

それにしても、日本人のコレステロール値は相変わらず上昇傾向です。
最近の報告によれば、日本人の平均コレステロール値は201mg/dLとのこと。
この報告が4歳から99歳と幅広い年齢を対象にしていることを考慮すれば、日本人のコレステロール値は、米国人に限りなく近づいているか、もしくは追い越している可能性もあるということでしょう。

Serum lipid survey and its recent trend in the general Japanese population in 2000.
Arai H, Yamamoto A, Matsuzawa Y, Saito Y, Yamada N, Oikawa S, Mabuchi H, et al.
J Atheroscler Thromb. 2005;12(2):98-106.

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うつ病の治療にどの抗うつ剤を選ぶべきか?

アナルズ・インターナル・メディシンの2005年9月号の総説では、SSRIに代表される第二世代の抗うつ剤を使ったうつ病治療について、編集者の見解が述べられています。

Efficacy and safety of second-generation antidepressants in the treatment of
major depressive disorder.
Hansen RA, Gartlehner G, Lohr KN, Gaynes BN, Carey TS.
Ann Intern Med. 2005 Sep 20;143(6):415-26.


1990年代に登場したSSRIは副作用の少ない抗うつ剤として、使用頻度が急速に上昇してきました。この総説では、これまでの研究を系統的に文献レビューすることにより、その効果と副作用について述べられています。

46本の無作為試験を検討した結果、bupropion, duloxetine, mirtazapine, venlafaxine等のSSRI(選択的セロトニン再吸収阻害剤)のうつ病に対する効果はほとんど差がなく、また、副作用の出現率にも差がないことがわかりました。ただし、副作用の種類は抗うつ剤の種類によって異なるため、これらの抗うつ剤を使う場合は、効果の違いというよりは、副作用の種類の違いを考えて使ったほうがよいのではないかということです。

具体的に効果を比較してみた結果、

Fluoxetine versus Paroxetine (ルボックス・デプロメール 対 パキシル)

6つの研究をメタ分析した結果、ハミルトンうつ尺度で評価したこの両者の効果はほぼ同等であった(正確には1.09倍、パキシルの方に効果が良いと出ていますが有意差がないので効果には差がないということになります)。

Fluoxetine versus Sertraline(日本未発売)

5つの研究をメタ分析した結果、ハミルトンうつ尺度で評価したこの両者の効果はSertralineの方がわずかながら効果が高い(正確には1.10倍、上記とほとんどかわらないが、一応有意差があったので、効果にわずかな差がみられたということになります)。

Fluoxetine versus Venlafaxine(日本未発売)

6つの研究をメタ分析した結果、ハミルトンうつ尺度で評価したこの両者の効果はVenlafaxineの方がわずかながら効果が高い(正確には1.12倍、上記と同様ほとんどかわらないが、一応有意差があったので、効果にわずかな差がみられたということになります)。

副作用をみると、

嘔気・嘔吐

Venlafaxine の臨床試験では、嘔気・嘔吐の平均出現率は31% でした。

性機能障害

性機能障害は bupropion の方が  fluoxetine、sertraline よりも出現率が低いとのこと。
また、paroxetine(パキシル), sertraline, mirtazapine は、他の抗うつ剤に比べて性機能障害の副作用が高い傾向がみられるとのことでした。

体重増加

全ての研究をまとめると、明らかな体重増加はみららませんでしたが、使う薬によって差があるようです。

体重がもっとも増加しやすかったのが、mirtazapineで、8週間の治療で平均2kgの体重増加がみられています。また、体重が増加した者の割合でみると、 paroxetine(パキシル)服薬群がもっとも高く、 fluoxetine(ルボックス・デプロメール)服薬群がもっとも低い という結果でした。

その他

venlafaxineでは、16%にめまいが、bupropionでは27%に頭痛、16%に不眠がみられました。また、venlafaxine では、有意な最小血圧値の上昇が、その他抗うつ剤の副作用として、低ナトリウム血症、けいれん、肝障害、自殺等が指摘されています。

というように、効果はほぼ同じなので、副作用の面で、体重が増えたくない人、性機能を保ちたい人等の違いによって抗うつ剤を使い分けるという方法がよろしいのではということでした。

ここで問題になるのは、治療について本当に効果の差がないのか?ということです。例えば、FluoxetineとParoxetineでは日本では適応となる疾患が微妙に違います(Fluoxetineなら強迫神経症、Paroxetineならパニック障害というように)。ですから、うつ病患者さんもこうした他の症状を併せ持つ人も多いわけで、それを含めてもう少し効果を具体的に検討するということも必要になるでしょう。
また、うつ病の治療にはもちろん効果があるということも大事ですが、治癒するということはもっと大事です。どの程度の割合で治癒して、再発をどの程度防いでいるのかとか、まだまだ検討されていない問題は多いように思われます。

可能なかぎり、効果と副作用の情報を処方する側と服薬する側が共有して、お互いが納得できる治療を選択していくのが望ましいということでしょう。

これを裏付けるように、患者好みの治療が、うつ病の治療効果を増す!ということも報告されています。

The influence of patient preference on depression treatment in primary care.
Lin P, Campbell DG, Chaney EF, Liu CF, Heagerty P, Felker BL, Hedrick SC.
Ann Behav Med. 2005 Oct;30(2):164-73.

これによれば、薬物療法、精神療法、両方の治療の3つから好みの治療を選んでもらい、実際に受けた治療と比較したところ、3カ月間の治療後、自分が選んだ治療と一致する治療を受けた患者の72%は、一致しなかった患者よりも、うつ病が有意に改善していたとのことです。

薬物治療の好みについてもこういうことはあるのかもしれませんね。

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運動は認知症(痴呆)を予防するか?

ランセット・ニューロロジーのオンライン版(10月4日号)に「運動が痴呆やアルツハイマー病を予防するかどうか」についての論文が発表されました。

Leisure-time physical activity at midlife and the risk of dementia and Alzheimer's disease
Suvi Rovio, Ingemar Kåreholt, Eeva-Liisa Helkal, Matti Viitanen, et al.
Lancet Neurology Early Online Publication, 4 October 2005

身体活動が痴呆のリスクを下げる可能性があることは以前から報告されていましたが、一定の見解が得られていませんでした。

この研究では、余暇時間における身体活動量と将来の痴呆およびアルツハイマー病との関連をみるために、地域住民から無作為抽出された1449人(65-79歳)を対象に、平均21年間の経過観察を行いました。

21年間に117人の痴呆と76人のアルツハイマー病が新しく診断されました。多変量解析の結果、中年期において少なくとも週に2回以上の身体活動を行っていた人はそうでない人に比べて痴呆やアルツハイマー病になるリスクが有意に低くなっていまいした。具体的に、痴呆のリスクは52%、アルツハイマー病のリスクは62%の減少がみられました。

この結果は、年齢、性、教育歴、経過観察時間、運動機能障害、ApoE遺伝子多系、血管障害、喫煙、飲酒等の因子を調整した後にみられたものですので、運動は他の要因とは独立して痴呆を予防する可能性があると考えられます。また、特にApoE遺伝子多系E4をもっている人(アルツハイマー病のリスクがもともと遺伝子的に高い人)程、運動の恩恵を強く受けたとのことです。

この研究からまず言えることは、中年期にしっかりと運動しておくことが将来痴呆になるリスクを減少させるということですから、なるべく若い時期から運動はやっておいた方がよいということになると思います。

ただ、日本人にこの結果があてはまるかどうかはちょっと難しいところです。なぜなら本研究では、ApoE遺伝子多系E4をもっている人にその効果が多くみられたということですが、日本人でこの遺伝子多系をもっている人は約9%のみと報告されているからです。

ちなみに白人は14%、黒人は19%ということですので、日本人全体としてみればアルツハイマー病になるリスクは遺伝的には少ないと考えられているわけです。(ただし、日本人でApoE遺伝子多系E4をもっている人は白人よりもアルツハイマー病になりやすいとも考えられています。詳細は下記文献参照)

Effects of age, sex, and ethnicity on the association between apolipoprotein E genotype and Alzheimer disease. A meta-analysis. APOE and Alzheimer Disease Meta Analysis Consortium.
Farrer LA, Cupples LA, Haines JL, Hyman B, Kukull WA, Mayeux R, Myers RH, et al.
JAMA. 1997 Oct 22-29;278(16):1349-56.

ところで、米国では1日あたり少なくとも「30分の軽度~中等度の運動(ウォーキング等)を週に5回以上」もしくは「中等度以上の運動(エアロビクス等)を週に3回以上」実施することが推奨されています。

最近の報告によれば米国人の運動量は1994年から2004年にかけて、まったく運動しない人の割合は29.8%から23.7%に減少しているとのこと。ただし、推奨運動量を実際に実践している人は約25%大きな変動はないようです。

Trends in leisure-time physical inactivity by age, sex, and race/ethnicity--United States, 1994-2004.
Centers for Disease Control and Prevention (CDC).
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2005 Oct 7;54(39):991-4.

もちろん、運動は痴呆以外に循環器疾患予防の働きもありますので、運動するに越したことはありません。ちなみに、自分は日本在住の時には通勤等で毎日1万~1万2千歩ほど歩いていましたが、こちらにきたら車通勤になったので、4千歩程度に下がってしまいました。

車通勤の人は、意識的にフィットネスを行わないと、痴呆のリスクが上がってしまう?のでご用心を。

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精神障害の人は増えているのか?適切な治療は受けているのか?

昨日、米国でのうつ病の有病率について報告しましたが、その他の精神障害についてはどうなのでしょうか?
その疑問に答えてくれる論文は、ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)2005年6月号に載っていました。

Kessler RC, Demler O, Frank RG, Olfson M, Pincus HA, Walters EE, Wang P, Wells KB, Zaslavsky AM.
Prevalence and treatment of mental disorders, 1990 to 2003.
N Engl J Med. 2005 Jun 16;352(24):2515-23.

この研究では、18~54 歳の米国民における精神障害の有病率と治療率について、10年間の推移をNational Comorbidity Survey の結果に基づいて報告しています。1990~92 年に実施された家庭訪問による面接調査では 5388 例、2001~03 年に実施された面接調査で 4319 例の結果が得られました。

精神障害の診断はDSM-Ⅳ(米国精神医学会による「精神疾患の分類と診断の手引き第 4 版」)を用いて行われ、面接調査前の 12 ヵ月間にみられた不安障害、気分障害、薬物乱用障害を診断しました。

その結果、1990~92年の精神障害の有病率は29.4%、2001~03年の有病率は30.5%で軽度上昇傾向がみられるものの、有意差はありませんでした。

また、 精神障害を有する患者のうち、1990~92 年には 20.3%が治療を受けていたのみでしたが、2001~03 年には 32.9%が治療を受けており、こちらは有意に増加していました(P<0.001)。

昨日、米国での治療率が意外に低いので驚きましたが、これでもここ10年間で10ポイント以上治療率が増加していたのですね。

ところで、この論文が発表された前月に、同じ著者が自殺者の推移についてもデータを米国医師会雑誌(JAMA)に公表しています。

Kessler RC, Berglund P, Borges G, Nock M, Wang PS.
Trends in suicide ideation, plans, gestures, and attempts in the United States, 1990-1992 to 2001-2003.
JAMA. 2005 May 25;293(20):2487-95.

こちらの論文では、同じ調査によって得られた自殺率の10年間の推移をみています。

1990~92年、2001~03年のそれぞれにおいて、自殺願望をもっている人の割合は2.8%と3.3%、実際に自殺をしようとした人(自殺企図)の割合は0.4%、0.6%であり有意な増加はみられませんでした。(もちろん、減っているようには到底見えませんが…)

ここで、注目したいのは精神障害の有病率、治療率、自殺率との関係です。

自殺はうつ病をはじめとする精神科疾患を抱えている人で高いリスクをもっていることが明らかです。ですから、実際にはそうした人達に適切な治療を行うことが推奨されています。ところが、ここ10年間で10ポイント以上も治療率が上昇したのにもかかわらず、米国人の自殺率は減少していないということになります。

ということは、精神障害をもつ人に対する薬物療法は自殺を減らすことに対しては貢献していない!

という解釈もできてしまうかもしれません。

もちろん、この考えは早計でしょう。こうした薬物療法の自殺予防に対する効果が出てくるためには、10年間という期間はまだ短い可能性があります。また、自殺は、社会情勢や経済的な問題もその発症に影響しますので、単に精神障害の治療率が上昇したからといって、すぐさま自殺率の低下には結びつかない可能性もあります。

したがって、気長な話ですが、10年後の再調査結果を楽しみに待つことにしましょう。

一方、日本では、新潟県、青森県、秋田県などの地域介入が自殺者数を減らしたと報告されています。
(下記、厚生労働省の発表参照)

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5g.html#s8

地域介入の効果は認められているようですが、こうした介入が都会でも応用できるかどうかは不明です。

自殺予防については、厚生労働省が5年間で10億円の規模で研究予算をつけたとのことですので、日本での研究成果が待たれるところです。

http://www.mental-g.com/news/news050613.html


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国民の8人に1人はうつ病!

43000人を対象とした米国人の大規模疫学調査において、米国人の5.3%(約20人に1人)が最近1年間でうつ病に罹患しており、13.2%(約8人に1人)が生涯のうちで1度はうつ病に罹患する可能性が指摘されました。

この研究結果は米国の精神医学専門誌の2005年10月号で報告されています(詳細は以下の論文参照)

Hasin DS, Goodwin RD, Stinson FS, Grant BF.
Epidemiology of Major Depressive Disorder: Results From the National Epidemiologic Survey on Alcoholism and Related Conditions.
Archives of General Psychiatry. 2005 Oct;62(10):1097-1106.

この研究では、2001~2002年に、DSM-Ⅳという標準化された診断方法を用いて、米国に住む18歳以上の43000人を対象に調査が行われました。その結果、米国人の5.3%(約20人に1人)が最近1年間でうつ病に罹患しており、13.2%(約8人に1人)が生涯のうちで1度はうつ病に罹患する可能性が指摘されました。また、うつ病の罹患率は1980年代や90年代に比べて増加していました。

女性(2.0倍)、米国先住民(1.5倍)、中年(2.1倍)、配偶者との別離(死別、別居、離婚)(2.2倍)、そして低収入であること(1.7倍)は、うつ病のリスクを高めることがわかりました。一方、アジア人、ヒスパニック系、黒人であることはうつ病のリスクを低くしていました。また、女性は男性よりも治療を受ける割合が高く、うつ病であることは、他の精神科疾患(パニック障害、不安障害、薬物依存等)にもかかりやすいことがわかりました。

うつ病患者のうち、46%が死にたいと思っており、36%が自殺を考え、約9%が実際に自殺未遂をしたとのことです。さらに、治療を受けているものはうつ病のうちの60%のみでした。

本研究は43000人という大規模研究であるにもかかわらず、診断を面接法にて行っている点が特徴の一つです(通常この程度の大規模研究だと質問紙法のみで診断することも多いと思います)。

意外だったのは、比較的精神科の敷居が低い(受診しやすい)米国であっても、その4割は未治療であるということです。

一方、日本人における大規模研究はほとんどないのですが、最近1663人の地域住民に、上記と同様にDSM-Ⅳを用いて調査を行った研究が報告されました。

Kawakami N, Takeshima T, Ono Y, Uda H, Hata Y, Nakane Y, Nakane H, Iwata N, Furukawa TA, Kikkawa T.
Twelve-month prevalence, severity, and treatment of common mental disorders in communities in Japan: preliminary finding from the World Mental Health Japan Survey 2002-2003.
Psychiatry Clin Neurosci. 2005 Aug;59(4):441-52.

この研究でも過去1年間におけるうつ病の有病率が報告されており、その結果は2.9%でした。また、米国人と同様に、女性、中年、別居等がうつ病をリスクを上昇させる方向に関与していましたが、治療を受けている人の割合はわずか23%でした。

対象者等は異なるものの米国人に比べてうつ病の有病率が低いのは意外でした。日本人の自殺率は米国人よりも高いですし、自殺にうつ病が関与しているのも周知の事実ですので、もう少し高いことを予想していました。もしかしたら、治療を受けている人の割合があまりにも低いことが、自殺率の上昇に影響しているのかもしれません。この仮説は、自殺多発地域において、うつ病のスクリーニングと受診勧奨が地域の自殺率を低下させたという報告があることからも信憑性は高いと思います。いずれにせよ、日本人においても少なくとも1万人以上の規模での調査結果が出てほしいものです。

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緑茶は乳がんを予防する?

今日のCVDグループのミーティングはYu-MC教授によるThe Singapore Chinese Health Studyのお話でした。

当初、がんの疫学研究を目的として始めたこのStudyですが、最近は循環器系疾患との関連もみているようです。参加者は63527人のシンガポールに住む中国人。
特徴は165項目にわたる食頻度調査を実施し、がん発症との関連をみているところです。
これまで、緑茶、魚摂取とがんとの関連を報告してきました。
その中から最近の研究結果を紹介してくれました。

論文は、緑茶とアンギオテンシン遺伝子多系と乳がん発症リスクとの関連をみたものです。

Green tea intake, ACE gene polymorphism and breast cancer risk among Chinese women in Singapore.
Yuan JM, Koh WP, Sun CL, Lee HP, Yu MC.
Carcinogenesis. 2005 Aug;26(8):1389-94.

この研究ではnested case-cantrolの手法を用いて、297人の乳がん発症者と665人の対照者で、緑茶と乳がん発症との関連に、アンギオテンシン遺伝子が影響するかどうかをみています。
その結果、女性全体では緑茶と乳がんとの関連はみられなかったものの、アンギオテンシン遺伝子の活動が高いタイプの遺伝子を持っている人では、緑茶が乳がん発症を予防する働きがあることが確認されました。

緑茶を飲まない人に比べて、緑茶を少なくとも毎月飲んでいる人の乳がん発症リスクは0.33倍、毎週飲んでいる人のリスクは0.29倍でした。

それにしても、月に数回の緑茶摂取でこれほどまでに乳がんの発症を抑えるのかどうか、解釈が難しいところです。実際、緑茶をよく飲む日本人においては、緑茶摂取と胃がん発症との関連は既に否定的な論文がでていますし、緑茶摂取と乳がん発症との関連についても否定的な論文が出ています。

Suzuki Y, Tsubono Y, Nakaya N, Suzuki Y, Koizumi Y, Tsuji I.
Green tea and the risk of breast cancer: pooled analysis of two prospective studies in Japan.
Br J Cancer. 2004 Apr 5;90(7):1361-3.

いずれにしても、疫学研究の流れとして、食生活とがん発症との関連、遺伝子とがん発症との関連を単純にみるだけではなく、これらを組み合わせた検討というのは、これからの疫学研究で数多く出てくるのではないかと期待しています。


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タバコの本数を減らせば肺がんのリスクは下がるのか?

タバコが肺がんのリスクを上げるのは誰でも知っているかと思います。
また、禁煙が肺がんのリスクを下げることもよく知られています。
ところが、タバコの本数を減らすことが肺がんを予防するかどうかについては、あまりよく知られていませんでした。

米国医師会雑誌(JAMA)に載った最近の論文ではこの答えを報告しています。

この研究では19714人のデンマーク住民を喫煙状況と肺がん発症との関連について前向きで検討しました。5~10年の間をおいて調査した結果をもとに、対象者を喫煙状況によって1)継続的に1日15本以上喫煙している人、2)15本以上のタバコを吸っていたが半分以下に減らした人、3)継続的に1日1-14本の喫煙をしている人、4)調査期間中に禁煙した人、5)調査前から禁煙を持続的に実施している人、6)1度も喫煙したことがない人の6グループに分けて、将来の肺がん発症との関連をみました。

観察期間中に864人の新規肺がんが登録され、1)継続的に1日15本以上喫煙している人に比べて、2)15本以上のタバコを吸っていたが半分以下に減らした人の肺がん発症率は27%減少しました。また、3)継続的に1日1-14本の喫煙をしている人、4)調査期間中に禁煙した人の肺がん発症率は、継続的に15本以上吸っている人に比べてそれぞれ44%、50%でした。さらに、5)調査前から禁煙を持続的に実施している人、6)1度も喫煙したことがない人の肺がん発症率は、それぞれ17%、9%と極めて低い発症率でした。

これまで、タバコの本数を減らしても、かえって深く吸うようになるのであまり効果がないという考えもありましたが、この研究では半分以下に減らすことで肺がん発症の危険度を27%減らすということですので、ヘビースモーカーの人には朗報でしょう。

もちろん、禁煙の効果の方がはるかに大きいので禁煙することがお勧めなのは言うまでもありません。効果も1-14本吸っている人レベルに下がるという程度。どうしてもやめられない、という人ではこういう方法もあるということでしょう。

ところで、この研究では、1-14本のライトスモーカーのリスクを一緒に解析していますが、1-4本と10-14本ではどれだけリスクが異なるのかというのも検討してほしいものです。個人的にはリスクはだいぶ違うのではないかと思っています。もっとも1-4本という喫煙者は少数過ぎてこうした解析は困難なのでしょうが…

詳細は下記の論文をご参照下さい。

Effect of Smoking Reduction on Lung Cancer Risk
Nina S. Godtfredsen, et al.
JAMA. 2005;294:1505-1510.


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更年期におけるホルモン療法はがんの原因になる?

本日の疫学セミナーはNational Cancer InstituteのDr. James V. Laceyによるホルモン療法のお話でした。

講演タイトルは

Menopausal hormone therapy and endometrial cancer: turning a corner or going in circles?

更年期のホルモン療法は子宮内膜癌の原因になるか?っていうお話です。

そもそも更年期とは女性ホルモンが少なくなることにより、様々な症状が出てくる時期ですので、欠乏しているホルモンを補ってあげるという考え方は昔からありました。

最近の報告によれば、閉経後の女性における更年期症状の頻度は

顔のほてり・夜間の発汗 (30~80%)

乾燥感・性交痛 (17~30%)

睡眠障害 (35~60%)

気分障害 (8~38%)

排尿に伴う症状 (17~39%)

とのことですので、結構更年期症状の頻度は多いといえるでしょう。(詳細は下記参照)

National Institutes of Health State-of-the-Science Conference statement:
management of menopause-related symptoms.
Ann Intern Med. 2005 Jun 21;142(12 Pt 1):1003-13.

問題は、以前から行われてきたエストロゲンのみの治療を受けた場合、確実に子宮内膜癌の発症頻度が上昇するという報告があることです。

そこで、最近はエストロゲンとプロゲスチンの両者を併用して治療が行われるようになってきましたが、これについてもいろいろな見解があります。

このあたりの情報はここで説明するよりも下記のHP「さんふじんかに行こう」に詳しく載っています。

http://www2u.biglobe.ne.jp/~drt/drt2/

また、日本産婦人科学会もNIHの報告を受けて見解を発表しています。

http://www.jsog.or.jp/kaiin/html/hrt_2sep2002.html

今回の発表では、最近の報告では、両者の併用による子宮内膜癌の発症リスクは米国では上昇させるが、ヨーロッパでは上昇させないらしいという話が中心になっていました。両者の違いはプロゲスティンの材料が米国とヨーロッパでは異なることから来ているようです。

発表の資料になっているのは、Lacey博士が最近出された米国でのデータ

Lacey JV Jr, Brinton LA, Lubin JH, Sherman ME, Schatzkin A, Schairer C.
Endometrial carcinoma risks among menopausal estrogen plus progestin and
unopposed estrogen users in a cohort of postmenopausal women.
Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2005 Jul;14(7):1724-31.

および、ヨーロッパの大規模スタディのデータです。

Beral V, Bull D, Reeves G; Million Women Study Collaborators.
Endometrial cancer and hormone-replacement therapy in the Million Women Study.
Lancet. 2005 Apr 30-May 6;365(9470):1543-51.

これらの結果、米国では、エストロゲンとプロゲスチンの併用療法は子宮内膜癌のリスクを増やしたが、ヨーロッパでは逆に減らす結果でした。ただし併用療法を行う場合、プロゲスチンを月のうちの数週間だけ飲むよりも、継続的に飲んだ場合にリスクを下げる結果でした。また、これらの効果は特に肥満女性において強くみられたようです。

ただし、子宮内膜癌のリスクを減少させたヨーロッパの結果であっても、乳がんの発症リスクは上昇させるため、結局、がん全体でみれば併用療法はがんの発症リスクを高める結果でした。結局、ホルモン療法を受けるなら、短期間に継続して服薬するのがコツといったところでしょうか。

ところで、ヨーロッパの大規模スタディですが、Million Women Studyという大袈裟な名前の通り、参加人数はイギリス人の閉経女性716,738 人!

まさに百万人という数字も大袈裟とはいえない人数ですね。

しかし、こうした大規模研究ではあっても、例えば、ホルモン療法を受けている人は定期的に婦人科検診を受けている可能性が高いため、より早期にがんがみつかりやすい!というような問題は抱えているわけです。もちろん、早期に発見されるのはよいことなのですが、それにより、見かけ上ホルモン療法を受けている人の方ががんの発症頻度が高くなる可能性もあるわけです。

疫学研究って難しい…


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どの医学情報が信頼できるのか?

本日の疫学セミナーの講師はDr. Ian Shrier カナダのMcGill University の助教授です。

講演タイトルは、
Systematic Reviews: What is the most valid approach?

どんなシステマティック・レビュー(系統的文献レビュー)がよいのか?という話でした。

最初に提示されたのがCochrane Review 医学に関係している人ならほとんどの人が知っているであろう、有名なデータベースです。このコクラン・レビューでは、randomized controlled trials(無作為対象試験)の結果を主に引用して系統的レビューを行っているのですが、

これで本当にいいのー!?

というのが講演の主旨でした。

というのは、コクラン・レビューの特徴として、幅広い情報源から多くの研究を集めて来るわけですが、その分、あまり質のよくない研究も含まれる可能性が高くなる訳です。Olsenらの報告によれば、コクラン・レビューで引用されている論文の29%に何らかの大きな問題が含まれているとされています。

システマティック・レビューを行うにあたり、近年ではmeta-analysis (メタ分析)を行うのは当然のようになってきていますが、このメタ分析にも、無作為試験のメタ分析を行う場合と、前向き(コホート)研究のメタ分析を行う場合の2つに分けられます。最近は無作為試験のメタ分析の方が前向き研究のメタ分析よりもエビデンスとして重視される傾向がありますが、無作為試験だからといってみんな信じてよいかというと、そうでもないようです。

ここで無作為試験と前向き研究についてそれぞれの長所と短所をまとめてみましょう。

無作為試験 長所ー介入対象者とコントロール群を無作為に分けることにより、Selection biasの頻度が減る。
        短所ーなぜか介入対象者だけでなくコントロール群もよくなっちゃったりする。

例えば、カフェイン入りのコーヒーとカフェイン抜きのコーヒーをどちらが本物かわからないようにして飲ませると(この時、事前にどちらかはカフェインが入っていて、どちらかには入っていないと説明しておく)、なぜか、カフェイン抜きを飲んでも眠くなくなるとうような効果(プラセボ効果)が出やすいということですね。

前向き研究 長所ー少なくとも数千人以上の集団を観察研究するので、結果を一般化しやすい。無作為研究よりも費用が安く済む。無作為研究よりも通常は先に行われる。
        短所ー多くの対象者が必要なので、管理するのが大変。調べているものが本当に効果を持っているものなのかどうかがわからない。

例えば、よく怒る人に脳卒中の発症が多くみられたとします。もちろん怒ることが直接脳卒中の原因になる場合もあるでしょうが、もしかしたら、よく怒る人はイライラしてタバコを吸っている割合が多いのかもしれません。このように他の因子を介して脳卒中に関係しているかもしれませんが、それらの因子を測定していなければ(この場合タバコ)どれが関係しているのかわからないということです。

結論としては、よくデザインされている前向き(コホート)研究であれば、無作為研究に負けないエビデンスが得られるので、あまり無作為、無作為言ってちゃ駄目ですよぉ。というお話でした、たぶん…(終盤、睡魔が襲ってきてあいまいです…)。

興味がある人は下記の本を参照しましょう。

Systematic Reviews in Health Care: Meta-Analysis in Context
by Matthias Egger (Editor), Douglas G. Altman (Editor), George Davey Smith (Editor)
BMJ Publishing group

ちなみに、こちらでの価格が83.95ドル!
ちょっと高いんではないかい!
            

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どのような食事ががんを予防するのか?

どのような食事ががんを予防するのか?
この問題について、最近の疫学研究は様々な結果を報告しています。

9月27日号のNew York Times誌に

Which of These Foods Will Stop Cancer? (Not So Fast) という題で特集されました。

Leslie Michelson さんは、以前は野菜嫌いで魚もめったに食べない人でしたが、最近彼は食生活を改めました。週に3-4回はブロッコリー、カリフラワー等のアブラナ科の野菜を食べ、週に3回は魚を食べ、週に2回はトマトソースの食事を摂るようにしています。

このような内容で始まるこの特集では、食事によってがんが予防できるかどうかについて、様々な研究者の意見を聞いています。

おそらく、日本語版もそのうち出るでしょうから興味のある方はチェックしてみてください。

http://www.nytimes.com/2005/09/27/health/27canc.html

そもそも、食生活ががんをどれくらい予防するかということに関しては、2001年のネイチャー誌によれば、約20~20%のがんが食事で予防できるのではないかと報告されています。たった1~2割?されど1~2割なのです。

というのは、喫煙ががんの発症率を上昇させるのは、誰もが知っていることだと思います。では、非喫煙者が自分のがんを予防しようと考えたとき、他に何かできることはあるのでしょうか

少なくとも非喫煙者にとっては、食事に気をつけるということが最もがん予防に有効なのではと考えられるでしょう。?(もちろん、喫煙者にとっては禁煙することが最もがん予防に有効なのは明らかです。逆に喫煙者がどんなに食事を頑張っても、その効果は?です)


特集中に報告されているものとして、食物繊維の摂取が大腸がんを予防すること、果物と野菜の摂取が大腸がんやその他のがんをまた、低脂肪食が乳がんを予防することなどが提示されています。

一方、その他がんを予防する可能性があるものとして、βカロチンや抗酸化物質であるビタミンCやビタミンEなどが知られていますが、実際に4年間これらβカロチン、ビタミンC、ビタミンEの摂取を行った研究では、これらを摂取した人の方が摂取しなかった人に比べて新たな大腸ポリープの出現頻度が高かったことが報告されています。さらに、食物繊維を摂取することで大腸ポリープの発症を予防しようとした研究でも、残念ながらよい結果は得られていません。

さらに、日本の疫学研究でも、緑茶を多く飲んでも胃がんを予防しない可能性や野菜をたくさんとっても大腸がんを予防しない可能性も報告されています。

では、食事に気をつけることは何の意味もないのか?
もちろんそうではありません。

面白いことに、がんを予防するといわれている果物、野菜、魚を多くし、肉類、塩分を減らした食事というのは、少なくとも心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患を予防することがすでに知られています。

ですから、これらの食事は例えがんを予防できなかったとしても、循環器系疾患を予防することにはつながるわけですね。

がんと食事との関係については、まだまだ科学的根拠が十分なわけではありませんが、科学的根拠が出てから食事に気をつけても既に遅いことは明らかです。先を見越して今から気をつけておくほうが無難でしょう。

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久々に…

今日の疫学セミナーはハーバード大学の社会疫学をやっているM. Maria Glymour先生のお話でした。

講演タイトルは
Using instrumental variables analyses to strengthen causal inference in epidemiology: an example with state schooling policies and old age cognitive function

認知機能の低下に教育歴がどの程度影響するかを調べる時に、教育歴と認知機能の両方に影響する因子(交絡因子、例えば親の教育歴等)のみを補正するのではなく、教育歴のみに影響する因子(この研究では生まれた年、州の教育改革が行われた年等)も補正しないといけない。というような内容でしたが、久々に難解で理解不能な講演に出会いました。あーしんど。

講演の抄録は以下の通りです。ご参考まで。

Identifying causal relations from observational data is a fundamental challenge in epidemiology. Natural experiments and instrumental variables (IV) analyses can complement standard analytic approaches when important confounders are unmeasured or even unknown. Although IV analyses depend on strong assumptions, these assumptions are generally different than the assumptions required for conventional analyses of observational data. I will discuss the assumptions for causal inference from IV analyses, and present an example from my research on the effects of education on cognitive function in old age. This example is based on the idea that changes in compulsory schooling laws implemented in the first half of the 20th century represent natural experiments for the effects of additional schooling on cognition.

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さらにジャパニーズ・パラドックス

もう一つ、健康に関する日本人の不思議なネタを。

数年前の、山陽新幹線運転手の居眠り事故以来、睡眠時無呼吸症候群が話題になっています。
睡眠時無呼吸症候群とは、夜間に無呼吸が起こることにより睡眠が障害され、日中の眠気、熟睡感がないなどの症状がでやすくなるものです。

日中の眠気は、運転中の居眠りや仕事中のミスの原因になるため、睡眠時無呼吸症候群患者では、居眠り事故や仕事中の事故が多いことが報告されています。

最近はそれでけでなく、高血圧、心臓病、脳卒中などの原因にもなるのではないかということが報告されています。

ところで、この睡眠時無呼吸症候群には、肥満が最も強く関与していることが知られています。
すなわち、体重が増えると、咽頭から頸部にかけての脂肪が多くなるため、気道(空気の通り道)が狭くなりやすくなり、睡眠時の無呼吸がおこりやすくなるというものです。このような人では一般にいびきは必ず起こってきます。したがって、肥満者が多い欧米人ではこの睡眠時無呼吸症候群が以前から注目されており、欧米人男性の7~14%は中等度以上の睡眠時無呼吸症候群であると報告されています。

ところが、日本人ではどうか?というと、当然、欧米人に比べて肥満者が少ない日本人においては、睡眠時無呼吸症候群の有病率も少ないように思えますが、そうでもないというのが最近の報告です。
筑波大学の谷川先生らの報告によれば、測定方法に違いはあるものの、日本人男性においても約10%に睡眠時無呼吸症候群が見られる可能性があると指摘されています。

では、なぜ日本人に睡眠時無呼吸症候群が多いのでしょうか?

一つは、顎の形が注目されています。日本人は顎が小さいために、気道が狭くなりやすい(ちょっとの体重増加でも影響を受けやすい)ことが、睡眠時見呼吸症候群の頻度を上昇させていることが報告されています。(どうやら縄文人のような顔より弥生人のような顔が悪いらしい)

また、日本人は飲酒量が欧米人に比べて多いために、その影響が出ている可能性も指摘されています。すなわち、飲酒により咽頭部の弛緩がおこり気道が狭くなりやすいということのようです。

ということは、日本人はもともと睡眠時無呼吸症候群が起こりやすい素質があることに加えて、近年の体重増加の影響が睡眠時無呼吸症候群の増加に影響している。というように考えられるでしょう。

いびきを自覚、または指摘されたことがある人、日中の眠気を感じやすい人、一度無呼吸のチェックをしてみる必要があるのではないでしょうか?(最近は携帯型の無呼吸測定装置も開発されており、自宅でもチェックできると思います)

睡眠時無呼吸症候群に興味のある方は以下の文献をご参照下さい。


Young T, Peppard PE, Gottlieb DJ.
Epidemiology of obstructive sleep apnea: a population health perspective.
Am J Respir Crit Care Med. 2002 May 1;165(9):1217-39. Review.

Tanigawa T, Tachibana N, Yamagishi K, Muraki I, Umesawa M, Shimamoto T, Iso H.
Usual alcohol consumption and arterial oxygen desaturation during sleep.
JAMA. 2004 Aug 25;292(8):923-5.

Tanigawa T, Tachibana N, Yamagishi K, Muraki I, Kudo M, Ohira T, Kitamura A,
Sato S, Shimamoto T, Iso H.
Relationship between sleep-disordered breathing and blood pressure levels in
community-based samples of Japanese men.
Hypertens Res. 2004 Jul;27(7):479-84.

Lam B, Ip MS, Tench E, Ryan CF.
Craniofacial profile in Asian and white subjects with obstructive sleep apnoea.
Thorax. 2005 Jun;60(6):504-10.

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ジャパニーズ・パラドックス(Japanese Paradox)

フレンチ・パラドックス、アメリカン・パラドックスと続いたら、当然次は…そうです。ジャパニーズ・パラドックスです。

今年のAHA (American Heart Association)の疫学部門のカンファレンスはワシントンで開催されました。その時に、かなり注目された発表がありました。ピッツバーグ大学の関川先生、滋賀医科大学の上島先生等の共同研究による、日米住民の冠動脈石灰化(心臓の血管を養っている冠動脈が高度の動脈硬化を起こしているもの)所見と循環器危険因子を調べた研究です。

最近、冠動脈石灰化所見は将来の心筋梗塞の予測因子になることや、実際に冠動脈狭窄と強い関連があることがわかっています。

この研究では、現在40歳代の日本人と米国人男性の冠動脈石灰化所見の頻度を調べたところ、米国人では47%の人に冠動脈石灰化がみられたのに対し、日本人ではわずか13%にみられたのみでした。もともと日本人の心筋梗塞発症率は米国人に比べて5分の1とも言われていますので、この結果は一見リーズナブルな結果だと思われます。

ところが、よく知られている(既に確立されている)心筋梗塞の危険因子である高血圧、喫煙率、そしてコレステロール値は日本人の方がいずれも高かったのです。

例えば、最大血圧値は日本人の平均が122.6mmHgであるのに対し、米国人は113.7mmHg
総コレステロール値は日本人の平均が220.9mg/dlであるのに対し、米国人は192.8mg/dl
喫煙率は日本人が48%であるのに対し、米国人は15%

これらの結果は既に一部論文にもなっていますので、詳細は以下の論文を参考にしてください。

Sekikawa A, Ueshima H, et al..
Much lower prevalence of coronary calcium detected by electron-beam computed
tomography among men aged 40-49 in Japan than in the US, despite a less
favorable profile of major risk factors.
Int J Epidemiol. 2005 Feb;34(1):173-9.

学会発表では、上記の論文よりも対象者数を増やして報告されていましたが、同様の傾向でした。

すなわち、現在の日本人は、以前より米国人より高かった血圧、喫煙率に加えて、コレステロール値ですら米国人よりも高くなってしまった。 にもかかわらず、相変わらず、心筋梗塞になる率は低い、という現象が起こっているのです。
これが、まさにジャパニーズ・パラドックスという点です。

それでは、現在、日本人が米国人に比べて心筋梗塞を予防するにあたり有利な点は何なのでしょうか?
まず言えるのは、体重増加が著しい日本人であっても、米国人に比べるとまだまだやせているという点です。
では、それほどまでに肥満は心筋梗塞の原因になるのか!?というと、実際はそれ程ではないはずです。
現に、米国人の心筋梗塞発症率は、体重が増え続けているにもかかわらず、コレステロール値、血圧、喫煙率の低下により、減少してきているのです。

次に考えられるのは、日本人の食生活。魚を多く摂取する食生活が心筋梗塞を予防しているのではないかという説もあります。ただ、実際にはそれ程までに魚が心筋梗塞を予防するかどうかは不明です。

その他、笑い話では、日本人は抗生物質をよく服用するので(好きなので?)、これによって、動脈硬化の原因となるような炎症が予防できているのでは?とかいう人もいます。

そういえば、以前、養殖の魚は抗生物質をたくさん与えているので、魚を食べると風邪を引かない!なんていう話もありましたよね(もちろん、風邪の原因はウイルスなのでその時点で間違いなのですが…)。

なぜ、日本人は心筋梗塞の発症が少ないのか?…今後は急速に増えていくのか?
疫学者にとっての悩みでもあり、興味でもある話題です。


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アメリカン・パラドックス(American Paradox)

以前、フレンチ・パラドックスというのがありました。フランス人は脂肪分が多い食品をよく食べるのに心筋梗塞が少ない!これは、赤ワインを飲むことで心筋梗塞の発症が抑えられるからだ!というものです。

ところで、今日から、毎週月曜日の朝一番に、ボスの講義に参加することになりました。
12月まで続く大学院生向けの疫学の授業です。内容はほとんど(たぶん?)知っていることですが、知識の整理になるし、米国人の講義の進め方等に興味があるので参加することにしました。

先週の第一回目は残念ながら出席できませんでしたが、第二回目の今週のテーマは、循環器疾患のリスクファクターでした。

ここで気になるデータを一つ。これは以前肥満の講演を聞いたときにも同様のデータが米国人で示されていたのですが、ミネソタ住民の循環器系疾患の危険因子の推移を見ると、

1980年から1997年にかけて、ミネソタ住民男性の
コレステロール値は平均212から205へ、喫煙者は34%から21%へ、最大血圧値は125から123へそれぞれ減少しています。おそらくこの傾向は2000年代になっても変わらないと思います。(女性も同様の傾向)

ところが、体重は平均183ポンドから194ポンド(1ポンド454gなので約88kg)に増えているのです。

以前聞いた講演では糖尿病の頻度も低下していました。そうです。米国人の体重は年々増加しているのにもかかわらず、血圧、コレステロール、喫煙率などの危険因子は年々改善しているのです。確かに禁煙すると体重が一時的に増加するのはよくある話ですが、これほどまでの体重の増加にそんなに喫煙が影響しているとも思えないし、体重が増えたら血圧やコレステロール値は高くなるのも普通なのにねえ。

低脂肪牛乳やコレステロールフリーの販売を促進させることが有効だったという報告もありましたが、それならなんで体重は減らないの?米国人はいったいに何を食べて太っているの?
といろいろ疑問も湧いてしまいます。

増え続ける体重、そして減り続ける血圧、コレステロール値、まさに、現在の米国人はこの点で、アメリカン・パラドックスが起こっている状態と言えるでしょう。


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慢性陰部痛(vulvodynia)の原因は?

今日の疫学セミナーは、新しくDivision HeadになったHarlow教授の講演でした。
Harlow教授は産婦人科領域の研究を主に行っており、本日の講演タイトルは「The Epidemiology of Vulvodynia」でした。

Vulvodyniaとは聞きなれない単語です。日本語訳では外陰部痛といいます。急性と慢性とに分けられますが、急性の場合は感染症などが原因になることが多く、むしろ問題になる(治療抵抗性)のは慢性の外陰部痛です。慢性の陰部痛は心療内科の分野では、時々見かける疾患ですが、もちろん日本人での疫学研究は皆無なので、どのくらいの人がこの疾患で苦しんでいるかどうかはわかりません。今回の講演によれば米国でもこの疾患の疫学研究はこれまでほとんどなかったとのことでした。

実際、Harlow教授らがボストン郊外に住む住民を対象に、疫学研究を実施したところ、

なんと、調査に協力してくれた人の約16%が、これまでに外陰部痛(焼けるような、ナイフで刺されるような痛み)を感じたことがあり、調査の時点でも約7%の人が、現在外陰部痛を感じているとのことでした。黒人と白人とは同頻度ですが、特にヒスパニック系の人でこの症状をもつ割合が多いとのことです(約80%多い)。また、症状があっても実際に治療を受ける人は約60%で、そのうちの60%がドクターショッピング(複数の医師を転々とすること)を行っているそうです。さらに、症状がある人はない人に比べて生理用品(tampon )を最初に使用した時に痛みを感じた割合が7~8倍を多いとのことでした。

これらの結果から、外陰部痛を感じている人は結構いるが、実際に医師にかからない人も多く、かかったとしてもあまり有効な治療を受けていないことが推測されます。非常に興味深いのは、最初に生理用品を使ったときの痛みが後の陰部痛と深く関連していることです。これは、もしかしたら、そもそも痛みの感受性が高い人にこうした症状が起こりやすいとも考えられますが、どうでしょうか。

さらに、その後の研究において、陰部痛を訴える人では、小さい頃に両親からの愛情をあまり受けていなかった人や折檻などを受けた人の割合が多いことも報告されました。また、外陰部痛を訴える人の分泌液所見等の結果も訴えない人と異なっていることから、幼少期の経験や心理社会的背景が、免疫系、炎症系に影響してこのような痛みを生じさせるのではないか、と結論付けていました。

陰部痛に限らず、慢性の痛みというものは、心理社会的背景が強く影響しているのはこれまでの研究から明らかです。しかしながら、実際に陰部痛という日本ではなかなか調査が難しいテーマであっても、NIH等の国の機関がお金を出して調査を進める米国の研究に対する間口の広さには驚かされます。

いくら自分が笑いの研究をしたいと言っても、国どころか民間だって研究費を出してくれるところは少数ですからねえ…

さらに、これらの研究について知りたい場合は、以下の論文をご参照ください。

1: Harlow BL, Stewart EG.
Adult-onset vulvodynia in relation to childhood violence victimization.
Am J Epidemiol. 2005 May 1;161(9):871-80.

2: Harlow BL, Stewart EG.
A population-based assessment of chronic unexplained vulvar pain: have we
underestimated the prevalence of vulvodynia?
J Am Med Womens Assoc. 2003 Spring;58(2):82-8.

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ストレスでがん予防?

英国医師会雑誌(British Medical Journal; BMJ)の8月15日号に、ストレスと乳がん発症との関係をみた前向き研究が出ていました。
原題は「Self reported stress and risk of breast cancer: prospective cohort study」です。

この研究では、デンマークに住む住民女性6689人に対して、質問紙にて自覚的ストレスのレベルを調査し、その後18年間経過観察して、乳がんの発症との関連をみました。
自覚的ストレスは、日常のストレスを4段階(なし、軽い、中等度、高い)から選んでもらい、さらにそのストレスの頻度(ほとんだなし、月に数回、週に数回、ほぼ毎日)も選んでもらい得点化しました。
自覚的ストレスの得点によって、低ストレス(2823人)、中ストレス(3201人)、高ストレス(665人)の3群に分け、それぞれの群における乳がん発症率をみると、低ストレス群に対する、中ストレス群の乳がん発症危険度は0.8倍、高ストレス群では0.6倍であり、高ストレス群は低ストレス群に比べて40%乳がんの発症が少ないという結果でした(これらの結果は年齢、ホルモン治療、閉経の有無、子供の数、肥満度、飲酒量、身体活動量、教育歴等の交絡因子を調整した値)。

そのメカニズムとして、そもそも乳がんの発症には、女性ホルモンの関与が指摘されていますが、ストレスは、このホルモンの分泌に影響するためと推察されています。この研究では、女性ホルモン服用者において、特にストレスの乳がん発症に対する抑制作用が強くみられたことから、この仮説を支持するものと著者らは考えています。

先日、乳がん術後の患者さんに対する運動療法は、患者さんの生命予後を改善し、QOLを上昇させるという文献を読んだばかりです。少なくとも乳がんになった人については、ストレスはよくないような気がしますが…

もともとストレスとがん発症との関連については、否定的な論文も多く、ストレスががん発症と関連するという報告はほとんどありません。

日本人では、文部省の多施設共同研究において、女性でストレスを強く感じる人は、そうでない人に比べて1.64倍、大腸がんの死亡率が高くなるという報告があります。

Kojima-M, et al. Perceived psychologic stress and colorectal cancer mortality: findings from the Japan Collaborative Cohort Study. Psychosom Med. 2005 Jan-Feb;67(1):72-7.

自覚的ストレスや抑うつと虚血性心疾患や脳卒中など循環器系疾患との関連は数多く報告されているのに比べると、ストレスとがんとの関連については、まだまだ明らかでない部分が多いようです。

一方、運動は乳がん発症を減らすという疫学研究もいくつかみられます。

McTiernan A, et al. Recreational physical activity and the risk of breast cancer in postmenopausal women: the Women's Health Initiative Cohort Study. JAMA. 2003 Sep 10;290(10):1331-6.

ということは、運動は乳がんを予防する→運動は自覚的ストレスを改善させる→自覚的ストレスは乳がん発症を減らす。となると、自覚的ストレスを高い状態に保ちながら運動するのがよいのかな?

自覚的ストレスが乳がん発症を減らすという本研究の結果を信じるには、今後の研究結果をもう少しみてからの方がよいようですね。

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運動するとどれだけ医療費が節約できるか?

今日の疫学セミナーで米国CDCの研究者が発表していた内容です。

タイトルは
「米国における身体活動低下が医療費に与える影響について」

要は、運動していない人は心臓病、糖尿病、がんなどの病気になりやすいので、もし、現在運動していない人を運動するようにさせると、どれくらいの医療費が節減できるか、ということを文献的に推測しているものでした。

ちなみに、現在、米国でほぼ毎日30分以上の歩行を実行している人の割合は半分以下。
同様に週3回程度30分以上の歩行も実行していない人(通勤とか買い物を含めて)は約30%ということです。

一方、各疾患の米国の医療費に占める割合は、

糖尿病で232.3億ドル(米国の医療費の1.73%)
虚血性心疾患で595.4億ドル(同 4.45%)
脳卒中で321.6億ドル(同 2.41%)

あまり運動していない人が上記の疾患の発症に与える寄与危険度割合
(運動していない人が、運動した場合に減らせる発症者の割合)は、

糖尿病で20%
虚血性心疾患で39%
脳卒中で18%

だそうです。これらの疾患に、骨粗しょう症、乳がん、大腸がんを加えて、医療費にあてはめると、トータルで324億ドルの医療費(医療費の約2.4%)が削減できる、というお話でした。

324億ドルといえば、日本円に換算すると3兆5640億円!
結構すごい値です。

もちろん、身体活動が低い人の中には、すでに病気にかかっている人もいるわけですから、本当にこれだけの医療費が節減できるかは、確かではありません。

ただ、日本人地域住民を対象とした研究でも、1日の歩行時間が1時間以上であるものは1時間未満のものに比べて、4年間の総医療費用が15%少ないことが報告されており(歩行時間の区分がやや厳しすぎる感じもしますが)、日本においても、医療費の抑制に運動することの効果が期待できそうです。

興味のある方は下記文献もご参照下さい。

Tsuji I, et al. Impact of walking upon medical care expenditure in Japan: the Ohsaki cohot study. International Journal of Epidemioloy. 2003.

Wang G, et al. Physical activity, cardiovascular disease, and medical expenditures in U.S. adults.
Ann Behav Med. 2004.


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がん患者に運動は有効か?

最近、乳がん患者の運動療法について調べていたのですが、Journal of Clinical Oncology の6月号に、がん患者への運動療法についての系統的レビュー(Knols et al. J Clin Oncol 23:3830-3842, 2005) が載っていたので紹介します。

このレビューではがん患者への運動療法を実施した34本の無作為試験結果を、がん治療中と治療後に分けてレビューしています。したがって、比較的クオリティの高い論文のみを集めて分析したということになるでしょう。

乳がん治療中(放射線療法、ホルモン療法、化学療法等)の運動については、9本の論文中8本でよい効果が得られました。具体的にはウォーキング等の有酸素運動により体脂肪の減少、筋肉量の増加、嘔気、疲労感等の減少、心理的尺度の改善、生活の質の改善等がみられました。

また、骨髄移植後の化学療法中の運動を実施した8本の論文においてもほぼ同様の効果が得られています。

さらに、胃がん術後、前立腺がん、頸部がん等の患者に有酸素運動を実施した5本の論文においても運動の有用性が報告されており、運動能力の改善、NK細胞活性の上昇、疲労の改善等が認められました。しかしその一方で、体重、ウエスト径、筋力、疲労が改善しなかったという報告もありました。

がん治療後の運動について、最初に、乳がん治療後の運動は7本の論文が紹介され、有酸素運動、筋肉トレーニングがともに、歩行距離、身体機能、筋力、インスリン様成長因子、疲労、うつ、不安等を改善することがわかりました。

大腸がん、卵巣がん、肺がん等の患者に対する運動も同様に身体機能、体脂肪、不安、不眠等に効果がみられています。

以上のように、例えがんの治療中、治療後であっても運動はがん患者の身体的、心理的健康の維持に有効なようです。

では、有酸